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番外編 溺愛タイム~チリオスタの場合2

 なるほど。

 そういう経緯でチリオスタ殿下はいらしたのですね。


 フレデリカ様はチリオスタ殿下がレオンにアドバイスをもらったのを知っているのでしょうか。


「その後、チリオスタ殿下は?」


 何と聞けば失礼にならないのかわからないので、控えめに聞いてみましょう。


「そ、それが。すぐに戻ってらして。それからは人が変わったように……」


 フレデリカは思考を振り払うように首を小さく振った。


「な、何をされたのですか!?」


 いけません、思わず聞き方が下品になってしまいました。


「なぜか、窓際に立たされました」

「ま、窓際ですか」


 あぁ、心当たりのあるようなないような。

 何かを再現しようとしましたか、チリオスタ殿下。


「後ろから左手で抱きしめられて、右手で髪を撫でられました」

「そ、そうですか。何か言葉などは?」

「み……」

「み?」


 フレデリカは真っ赤な顔をして、華奢な白い手を耳にやった。


「耳元で」

「耳元で!?」

「美しい髪だな、と」


 キャー!

 いや、むしろギャー! と叫びたい気持ちでいっぱいです。


「褒められてどんなお気持ちでしたか?」

「それはもう、恥ずかしくてどうにかなってしまうかと」


 いじらしい。とってもいじらしいです。


「しばらくしてから、殿下は私の正面に回られて」


 私はこくこくと頷く。


「両手を、繋ぎました。繋いだといいますか、私の指先を、そっと握ってくださって。そのままじっと私の顔を見てらして」


 レオンに言われたことをことごとく実行してらっしゃいますね。

 仕事の速さではリーディッヒ家にひけをとりませんよ。


「そ、それで?」

「あぁ、もうこれ以上は言えません。胸の奥から溶け出してしまいそうです」


 フレデリカはのぼせたような顔をして上を向いた。


♢♦♢



「フレデリカ、このようにそなたを見つめるのは初めてだな」

「は、はい」

「私は今まで自分の妻の顔さえろくに見てこなかったのだな」

「わ、私は不満などございま――」

「美しい」

「っ!?」


 チリオスタ殿下が指先を握る手にきゅっと力を込めた。


「今まで放っておいて言うことではないが、これからは夫婦となれるだろうか」

「恐れ多いお言葉でございます」

「なれぬか? このように触れられるのは嫌か?」


 いつも冷静で自信に満ちたチリオスタ殿下が、初めて不安そうな目をした。


「嫌ではないのです。どうすればよいのか戸惑っているだけで」

「ならば私の手を握り返してはくれぬか」


 そう言われて、私の指先の感覚が痛いほどに研ぎ澄まされる。


 私は震えながら這うように、殿下の手の中に指をもぐりこませる。

 そしてかすかに指先を曲げた。


 それが私の精一杯だった。


「調子の良いことを言うようだが、私はお前を失いたくない。もう王にはなれぬが添い遂げてくれるか」


 私をザグールの陰謀の犠牲にしようとしたことを気にしているのだろうか。

 そのようなこと、チリオスタ殿下が気に病むことではないのに。


「私は幼い頃より貴方を尊敬してまいりました。王でなくとも貴方は貴方です。勤勉で、聡明で、誰よりも国を思い、その責を全うしてらした。そして今も。お傍にいられることは、私にとって――」


 幸福。

 他に何と形容すれば良いだろう。 


 温かい気持ちが体中に広がってゆく。


「フレデリカ。こういうのは合意が必要なのだと聞いた。だが堪えられない、許せ」

「んんっ」


 触れた唇にもう驚きはしなかった。

 この気持ちは「幸福」なのだと気づいたから。



♢♦♢



「フレデリカ様、大丈夫ですか?」

「はっ、はい。すみません」


 何か回想してらっしゃいましたか?


「フレデリカ様は既にチリオスタ殿下を愛してらっしゃるのでは?」


 愛をご教授ください、なんて言ってたけど、どう見ても好きですよね。

 だってこの顔ですよ。

 とろとろのカオカオのように、甘く溶けてらっしゃいます。


「こ、このような気持ちを愛と呼ぶのですか」

「おそらく」

「ぞ、存じませんでした」

「フレデリカ様のペースがございますから、ゆっくりでもよいかと」

「それが、そういうわけにもいかないのです」

「?」


 溶けたと思ったら鬼気迫る表情になって、本当に感情豊かになりましたね。


「で、殿下が。同じ気持ちなら、今日は私から口付けをするように、と」


 性急ですね!

 フレデリカ様は生まれたばかりの小鹿も同然なのですよ!


「それは何とも……難しい課題ですね」

「あのような濃厚なことが、私に出来るでしょうか」


 濃厚なのですね!?

 私まで顔が火照りますよ!


「いえ、でもせねばなりませんね。殿下は変わられたのです。私も変わらねばなりません」


 その素直で律儀で一本気のある性格、王妃にぴったりだったと思います。

 返上したいくらいです。



 

 その時、後ろから雪を踏みしめる足音が聞こえた。


「フレデリカ、エレノア。外は冷えるぞ」

「チリオスタ殿下!」


 フレデリカ様は口をぱくぱくとさせた。


「エレノア、寒くはありませんか?」

「レオン。どうしてこちらに?」


 二人揃って出てくるとは何の用だろう。


「兄上が落ち着かないようで、窓の外を見たらエレノアたちがいたので下りてきたのですよ」

「私はいつも落ち着いているぞ」

「兄上が客観的に物事を見れぬなど珍しい。さぁエレノア、中に」


 レオンは私の手を取った。


「あぁ、温かいな」

「人前ですよ」


 フレデリカ様の話を聞いたあとなので、何だか変な気分になってしまいます。


「フレデリカ、私たちも入るぞ」

「は、はい」


 チリオスタはフレデリカの返事を聞くと、軽々とその身体を抱き抱えた。


「殿下!?」

「転んで怪我でもされてはかなわんからな」

「こ、転びません」

「私がこうしたいのだ。じっとしておけ」

「で、ですが。レオン殿下とエレノア様の前ですわ」

「だから何だ」


 何なんでしょう。

 いえ、思いっきりお邪魔ですね。


「殿下、お願いがあるのですが」

「何だ、申せ」

「今夜も寝所に来ていただけますか。私、殿下にお伝えせねばいけないことが」


 おぉ、フレデリカ様、積極的です。


「ならばこれから行こう。レオン、今日は休みにする」

「大歓迎ですよ」


 レオンは心底嬉しそうだった。


「これからと言ったが、部屋まで遠いな。フレデリカ、ここで聞こう」

「こ、ここで、でございますか」


 お姫様抱っこをされたまま、フレデリカは消え入りそうな声で言った。


「冷える、早く申せ」

「はい。あの、私、殿下を愛しております」

「そうか」

「あの……はい」

「ならばもう一つすることがあるだろう」


 おぉっと!?

 もしや二人のキスシーンが見られるのですか?


「は、はい!」


 フレデリカ様は従順な人だ。

 チリオスタ殿下の首に腕を回し、首を少し傾けて口付けをした。


「フレデリカ」

「も、申し訳ございません。不慣れで……その」

「何と愛おしいのだ」


 そう言うとチリオスタは人目も憚らずにフレデリカに熱い口付けをした。


「レオン、行きましょうか」

「そうですね。全く、兄上には負けられないな」

「!?」

「エレノア、今日は長いですから」

「な、なんでしょう」

「たっぷり、ね」


 レオンはいたずらに笑った。

以上、フレデリカ様の様子をお伝えいたしました!


お楽しみいただけましたか?私はかなり楽しんで書いておりました。

番外編の気軽さと言ったら……筆が乗っていつもより字数も多くなりました。


お付き合いいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] フレデリカ様おめでとー!!! チリオスタ様早っ!さすが元王様、思考即実行!貴人は照れないって言うけど本当ですね。 フレデリカ様に萌え萌えする気持ちとてもよくわかります…可愛い…!!
[一言] 何でもそつなくこなして来ただろうチリオスタの不器用な面 周りはほんわか見守ってるんだろうな
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