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番外編 溺愛タイム~チリオスタの場合1

「クロエ。朝からひとつ悪いのだけれど、お使いを頼めるかしら」

「はい。何をいたしましょう」


 私は髪を梳いてくれているクロエを鏡越しに見る。


「フレデリカ様にお会いする約束をとってきてくれる?」

「承知いたしました」

「それから、ご様子がわかればそれも報告してちょうだい」

「はい」






 クロエの報告は端的だった。


「狼狽しておいででした」

「あぁ、心中お察しいたしますわ」

「一刻もすれば準備が整うそうですので、お部屋をご訪問されるのが良いかと」

「わかりました。ありがとう」


 




「フレデリカ様。エレノアです」


 私はフレデリカの部屋をノックする。

 すると待ちかねたように扉が開かれた。


「エレノア様!」

「フレデリカ様。お散歩にでも参りませんか?」


 あぁ、お可哀そうなフレデリカ様。

 目の下にはクマができ、髪の艶もいつもよりないような。


「お、お散歩ですね。はい」

「もし外がお嫌なら、お部屋でも構いませんが」


 でもこういう話は面と向かってはしにくいだろうし、体を動かしながらの方がいくらか気もまぎれるだろう。


「いえ、外に出るのはもう平気なのです。最近はチリオスタ殿下もよく連れ出してくださって……」


 そこまで言って、フレデリカは両手で顔を覆う。


「?」

「で、殿下がっ。あぁっ」


 うーん、これは重症ですね。

 名前を発しただけで赤面ですか。


 私は軽く手を挙げフレデリカの侍女を呼ぶ。


「フレデリカ様に暖かいお召し物を。雪見にでも参りましょう」


 フレデリカはされるままに真っ白なロングコートを着せられる。

 そうして私たちは新雪の積もる庭へと繰り出した。




 夜明け前から降った雪は庭を白く染めるには十分だった。

 サク、サクと心地の良い音と感触を楽しみつつ庭を回る。


「昨夜は星が綺麗だったのですが、フレデリカ様はいかがお過ごしでしたか?」


 フレデリカの足がぴたりと止まる。

 直球すぎたでしょうか。


「さ、昨夜は。あの。殿下が、いらして」


 知ってますけどね。


「まぁ、愛されておいでですね」

「あ、愛、でございますか」

「フレデリカ様のお幸せそうなお顔を拝見するに、そうではないかと」


 フレデリカは雪を溶かしてしまうんじゃないかと思うほど熱を発していた。ように見えた。


「私、戸惑っているのです。このように心が動くなど、今までなくて」


 えぇそうでしょう、そうでしょう。

 何事にも動じないようにと心掛けていらっしゃったのですから。


「愛を知ると、何気ない毎日が途端に鮮やかになりますものね。心が動くのは当然ですわ」

「エ、エレノア様!」


 フレデリカはぎゅっと私の指先を握った。


「恥を忍んでお願い申し上げます。どうぞ私に愛をご教授くださいませ」


 そんな上目遣いで見つめられるとキュンキュンしてしまいます。


「チリオスタ殿下と何かあったのですか?」


 まぁ何があったかはだいたい予想がつきますけどね。






★☆★


 昨夜はそれまでとても静かな夜だった。

 静けさはチリオスタ殿下の声とともに破られた。


「フレデリカ、私だ。入るぞ」

「殿下、今日もいらしてくれたのですか。そう毎日でなくとも――」


 殿下はそのまま真っ直ぐに進んできたかと思うと、突然私の唇を奪った。


 はっと息を飲んだ侍女たちがパタパタと姿を消す。


「ん? フレデリカ、何だその顔は」


 どういう顔をしているのでしょう。

 思考も身体も動かなくなって、確かめようもありません。


 殿下は一体今何を……?


「おい、返事をせよ」


 あぁ、何か言わなくては。でも何を?

 その前に何が起こったの?


 とても柔らかいものが、確か唇に。唇に……?

 なぜ?


「嫌だったのか。だが二度目だろう。婚約式の時は普通だったではないか」


 婚約式は儀礼でしたし。

 でも今のは? 何のために?

 奪うように、こらえきれなかったように重ねた唇は一体何の意味が。


「ふむ。少し待て。すぐ戻る」


 そう言って夫であるチリオスタ殿下は行ってしまった。


一話では書ききれませんでした……。

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