番外編 フレデリカ5
「で? エレノアはどうなのだ」
チリオスタ殿下、諦める気ありませんね。
しかしチリオスタ殿下もフレデリカ様も、顔色一つ変えずに聞いているなんて本当に王族とは恐ろしい人たちです。
あ、レオンは嬉しそうに期待いっぱいの顔でした。王族間ギャップありすぎませんか。
「わ、私は。レオンへの気持ちを自覚したのはつい最近でして。ですが初めて会った時から、良い印象がありました。その積み重ねといいますか」
あぁもう恥ずかしさでどうにかなってしまいそうです。何が悲しくて本人、義兄、義姉の前でこのようなこと話さねばならぬのですか!
「詳しく述べよ」
「ええっと、初めて会った時、とてもお優しい方だなと思いました。他人を思いやれる方だと」
「あの時、エレノアに婚約を辞退されていたらと思うとぞっとしますよ」
「そんなこといたしません」
まぁあの時はお金儲けのことしか考えておりませんでしたが。
「最初は頼りない方だと思ったのですが、一緒にいて落ち着くし、何よりこんな私を尊重して認めてくださることに感謝しておりました」
あと何だろう。
「レオンに女性として意識されるのも嫌ではありませんでしたし、私のために困難に立ち向かってくださる姿も素敵でした」
「いつから好きだったのか、話がよく見えぬな」
「いつからレオンのことを好きだったかはわかりません。でもずっと、一緒にいることが心地よくて、当たり前で、それが恋だと言われれば恋だったのかもしれません。
レオンを失うかもしれないと思って初めて想いを自覚しましたが……。けれどずっと前から好きだったのかもしれません」
そう言うと、チリオスタはしばらく黙った。
「なるほど、では私はフレデリカのことを、ずっと前から愛しているのかもしれないのか」
???
知りませんよ。
「フレデリカ」
「はい、殿下」
「フレデリカを我が妃にと選んだのは私だ」
「畏れ多いことにございます」
「その慎ましさと、王族として立場をわきまえたそなたが丁度良いと思った。でしゃばらず、欲を持たず、妃という立場を黙って耐えるだけの力があると」
随分な告白ですね。
私からしたら「都合の良い女だったから選んだ」としか聞こえないのですが。
「そのように評価していただき、畏れ多いながらも光栄でございます」
でもフレデリカ様はきちんと王族らしく対応なさるのですね。頭が下がります。
「それは愛だったのだろうか」
「無理に御心に定義付けをする必要はございません。私は十分過ぎるほどのお言葉を頂戴いたしました」
「だが私はそなたを知りたいのだ。これまで国のことばかり見て、一番身近な妻という存在を見ていなかった。それは私に欠け、レオンが持っていたもの」
身近な人への愛情。
チリオスタ殿下は自分にそれが欠けていると知った。そして今、愛を知りたいのだろう。
「それがお役目だったのです。私は不満などございません」
「だがこれからは不満に思っていい。不満だけではない。何か言いたいことがあれば遠慮なく言え」
あぁ。それで毎晩フレデリカ様に聞いていたのですね。
何か言いたいことはないか、と。
「では、ひとつよろしいでしょうか」
「何だ」
「今日は外に出られて、お話を聞けて、本当に嬉しゅうございました」
「それだけか」
「はい。それでも、とても心が晴れやかなのです」
「そうか。ではまた来よう」
フレデリカ様も自分のお心を見つけられたのだろうか。
似た者同士の二人、時間はかかるけど、きっと歩み寄っていけるに違いない。
「ではレオン、そろそろ執務に戻るぞ」
「あ、兄上? この流れでそれはないのでは。僕はエレノアとーー」
「お前の集中力が切れたから気分転換に来たのだ。もう十分目的は果たした」
チリオスタ殿下はやはり頭がいい。
レオンの気分転換、フレデリカ様を部屋から出すこと、フレデリカ様との仲を深めること。
一度に3つもやってのけた。
チリオスタ殿下に勝とうとして勝てるものではない。
「レオン、観念していってらっしゃいませ」
「エレノアまで」
「お帰りをお待ちしておりますわ。チリオスタ殿下、たまには早く帰してくださいませね?」
殿下、私に借りがあるでしょう。そう目で訴えた。
「あぁ、そうしよう」
高い空の下、チリオスタは笑った。
フレデリカ編は以上でおしまいです★
次回はいよいよ正妃オリヴィア編。
オリヴィア視点も入れつつ、シリアス展開になる予定です。更新お待ち下さい!




