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番外編 フレデリカ4

「エレノア、美味しいですよ。ひとつどうです」


 レオンは可愛らしい砂糖菓子を勧めてきた。


「ありがとうございます。ですがちょっと、お腹がいっぱいで」


 フレデリカ様の部屋でもお茶をしていたので、お腹がちゃぷちゃぷになってきました。


「そうですか? エレノアの好きそうな味だと思ったのですが」

「うーん、でしたら一口だけ」


 私は一番小さな薄桃色の砂糖菓子を手に取る。


「ん! ほんとだ、美味しい! 溶けた!」

「でしょう? 気に入ると思いました」


 レオンは砂糖菓子のように甘い顔で微笑む。

 私も舌の上の甘さと相まって、ついつい顔がほころぶ。


「レオンはエレノアの好みがわかるのだな」


 あぁ。二人の世界に浸ってしまいそうでした。

 チリオスタ殿下とフレデリカ様もいらっしゃいましたね。


「フレデリカ、私はそなたの好きなものすら言えぬ。何が好みだ」

「好み、でございますか。出されたものは全てありがたく頂戴しておりますが」

「好きなものは何かと聞いている」

「ええっと、難しゅうございますね。好きなものを選ぶということは、偏りを生みかねませんので」


 フレデリカ様らしいです。

 自分の好みが何かしら作用して、どこかに影響を与えるかもしれないことを心配してらっしゃるのですね。

 私など欲の塊すぎて、将来正妃になってよいものか心配になります。


「だが私はフレデリカのことを知りたいのだ。何かないか」

「殿下のご記憶に刻んでいただくほどのことはございませんわ」


 じれったいご夫婦ですね。


「兄上、一緒に過ごすうちに少しずつわかってゆくものなのですよ」

「時間がかかるな」


 チリオスタは渋い顔をした。

 相手から聞き出せば一番効率がよいのに、とでも言いたげだ。


「良いではないですか。僕はエレノアとずっと一緒にいたい。それこそ、残りの人生の時間、全て」

「レ、レオン……」


 人前で言うことではありませんよ!

 どれだけ抑圧されているのですか!


「エレノアも同じ気持ちだと嬉しいのですが」


 あぁ、そんな熱い瞳で見つめないでください。私まで頬が熱くなります。

 そんなこと言われたら、受け入れないわけにはいきません。


「もちろんですわ」


 私は小さく答えた。

 レオンは満足そうに私の髪を撫で、そっと口づけた。


「お二人は仲がよろしいのですね」


 フレデリカがにこにこして言う。


「そのようだな。二人の婚約はいわく付きのものだったはずだが」


 確かに私たちの婚約は王宮の悪意によって決められた。

 妾の子である第3王子には、伯爵令嬢という格下の女で十分だろう、という嫌がらせだ。


「今では感謝していますよ。最愛の人と出会えたのですから」

「そうか。エレノアにとってもレオンが最愛の人だと?」

「は、はい」


 なんて羞恥プレイですかこれは。


「ふむ。では聞かせよ。いかにして二人が愛を育むにいたったのか」

「?!」


 は?

 何を言い出すんですかこの元王太子は!


「そうですね。初めは面白い女性だなと、興味を持ちました。一緒にいると毎日が慌ただしく、新しい発見があるのです」


 えぇ?!

 何意気揚々と話してらっしゃるのですか?!


「確かにエレノアは面白いな。私に歯向かってくる女などそういない」


 私そんなことしましたか?!

 物見櫓での件ですか?!


「そして彼女の仕事への真摯な態度と熱意にも尊敬の念を抱きました。僕や母も救われた」

「うん、そこは私も評価している。だが愛とはまた別だろう」

「これからがポイントなのです」

「聞こう」


 あぁ、もうやめてください。

 フレデリカ様、そのにこにこ顔は何でしょうか。


「エレノアは可愛いのです」

「続けよ」


「完璧に見えるのに、ふとした瞬間に隙きを見せたり」

「ほう」


「急に気が抜けたように甘えたり」

「甘えるのか」


「口づけをすると目がとろんとなってーー」

「ちょっと!! レオン!!」


 なりません!

 それ以上言うのはなりませんよ!!


「ほら、このように真っ赤になって、心を乱したりする姿も可愛らしいのです。あぁでも兄上には見せたくありませんね」


 レオンはそう言うと、マントを翻して私を抱きしめた。

 私はマントの中で温かい大きな胸に身を預ける。


「なるほど。して、エレノアはレオンのどこを愛している?」


 いやもう、本当にやめてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いままで私事は全部国のため、でスルーしていた兄はいわゆる自分の情緒が育っていないんでしょうね。 それはフレデリカも同じなのかも。 どっちも不憫だと思われそうですが、本人はまったくわかってい…
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