番外編 フレデリカ1
読者様大感謝企画第2弾★
番外編フレデリカ編です〜(フレデリカって誰?!)
「レオン、入ります。サインを頂きたい書類がーー」
「エレノアか、久しいな」
「チ、チリオスタ殿下!」
私は思わず書類を落としてしまった。
そのうちの一枚がチリオスタの足元へと飛んで行った。
「ピンクトルマリンの契約書? また新しい事業を始めたのか」
「は、はい。あの、殿下がおいでだとは知らず失礼いたしました。改めます」
レオンはチリオスタにレクチャーを受けている最中だったのか、やけにげっそりしていた。
「悪いな。そうだ、我が妃がエレノアに会いたがっていた。訪ねてもらえるか」
「妃殿下が、ですか」
うーん、正直気は進みません。
というか、ウルル様の一件以来、お顔を拝見しておりません。会わす顔がないと言いますか……。
「エレノアの方が立場が上なのだ。フレデリカと気軽に呼ぶが良い」
「そんな、畏れ多いですわ」
「そうだな、私も改めねばなるまい。エレノア様、我が妃を頼めますか?」
「っ! お、おやめください殿下!」
「はっは! エレノアは次期国王の正妃となるのだぞ? そんなに腰が低くてどうする」
いえいえ、元は顧客第一主義の伯爵家ですから!
「兄上、エレノアをからかうのはそのへんにしてください」
レオンはげんなりした顔で言った。
「うん、軽口を叩くのも面白いものだな。実に愉快だよ」
面白がっているのはチリオスタ殿下、あなた一人です。
次期国王の荷から開放され、どこか性格も変わったように思います。
「それはそうとエレノア、頼まれてくれ」
「かしこまりました」
「ずっと避けていたであろう? 私も、フレデリカのことも」
「いえ、そのようなことは」
ありますとも。
極力接触がないように、細心の注意で避けておりましたとも!
「まぁいい。行け」
「失礼いたします」
私は静かに執務室を出た。
はぁ、何てタイミングで来てしまったのでしょう。控えめに言って最悪です。
私は出来るだけ遠回りをしてフレデリカ様の私室へ向かった。
コンコンコンコン。
私は大きな白い扉をノックをする。
前回来たときはノックもせずに飛び込んだ。あぁ、思い出すだけでも胃が痛い。
間もなく侍女が顔を出す。私は少し下がって淑女の礼をした。
「エレノアでございます。チリオスタ殿下に、フレデリカ様の部屋に行くようにと仰せつかり参りました」
「エレノア様、ようおいで下さいました」
侍女はうやうやしく頭を垂れた。
「エレノア様? 早く、お通しして」
中からフレデリカ様の声が聞こえる。留守でいてくれればよかったのに。
その思いもむなしく、私はフレデリカの私室に通された。
「エレノア様。本来はこちらから出向かなければならないところ、お越しいただき光栄でございます」
フレデリカは笑顔で跪いた。
「フレデリカ様、おやめください!」
私は慌ててフレデリカの前に駆け寄り身体を支える。
フレデリカを跪かせるなんて畏れ多いにも程がある。
「あの方が城内にいるかと思うと、恐ろしくて部屋から出るに出られないのです」
あの方とはウルルのことだろう。しかしいるのは地下牢だし、建物も別だ。遭遇することなど万に一つもない。
それでも命を二度も狙われたフレデリカにとっては、部屋から出られぬ程には十分なトラウマとなったのだろう。
「フレデリカ様、大丈夫ですわ。もう終わったのです」
「あぁ、エレノア様にそう言って頂くと少し安心です」
さようですか。でしたらそろそろ立つか座るかしてください。
たっぷりのウェーブがかった金色の髪も、残念なことに床についてしまっておりますよ。
「フレデリカ様、私に御用がおありでしたか?」
「えぇ。御礼を出来ておりませんでしたから。お茶にいたしませんか?」
正直気まずい。
次期国王はチリオスタからレオンに代わった。そして王太子妃殿下の立場はフレデリカから私に代わった。
しかしフレデリカの青い瞳はあまりに澄んでいて、断ることなど出来なかった。
「フレデリカ様とご一緒出来るなんて、光栄です」
最上級の営業用スマイルを貼り付けて、私は返事をした。




