最終話
「神の名において、グルフレン=レオンならびにリーディッヒ=エレノアの婚約をここに認める」
私たちは神官の前で婚約式を執り行った。
民衆たちの熱気はすごいものだった。ついこの間まで顔すら知られていなかったレオンが、今や民衆を熱狂させる程のカリスマになっている。
やはりブックレットの効果は凄まじいものがあった。
続く王太子任命式では、国王陛下がレオンの王太子就任を宣言した。
私はその姿を義母マーガレットとならんで見ていたが、あまりの凛々しさに涙腺が緩んだ。マーガレット妃は感極まってすすり泣いていたけど。
「お疲れさまですレオン」
私たちは一連の儀式を終え、午後の謁見にうつるために衣装直しをする。
「肩がこりました」
「とても素敵でしたわ」
「それを言うならエレノアもです。今日は一段と美しい」
「ふふ、ありがとうございます」
「疲れてはいませんか?」
「いいえ、ここからが本番ですからね」
「?」
私たちが謁見の間にスタンバイすると、すぐに最初の来賓が呼ばれた。
「この度はおめでとうございます」
「ありがとうございます。その後いかがですか?」
レオンは公国コロンの公王に向かって言った。
「7割の畑が復旧し、先日何とかカオカオの植え付けにこぎつけたところだ。国民も飢えることなく日々復旧に尽力してくれている」
「それはよかったですわ」
「次の春には少しだがカオカオをお持ちしよう」
「楽しみにお待ちしておりますね」
コロンを始め、諸外国との面会をこなす。
そしていよいよグルフレン貴族との謁見。
「マドリン公爵、公爵夫人。リース様のご結婚おめでとうございます」
「全てエレノア様のおかげでございます。伴侶を得て心強くなったのか、体調も随分よくなりました」
「それはよかったですね」
「お礼のしようもございません」
「いえいえ、そんなことございませんわ。お礼のしようならいくらでも」
私はにっこり微笑む。
「?」
怪訝な顔をする公爵夫婦。
「私、今西都に学校を作る準備を始めているんですの」
「西都と言えば、あの西の端の貧しい?」
「えぇ。そこで是非、ご寄付をいただけないかと」
マドリン公爵家の懐事情はだいたい把握している。
金がかかったリースは嫁ぎ、出費の大幅減。そしてシンリックの別荘を売って手にした、たっぷりの現金。
「エレノア様のお願いならば断ることは出来ません」
「まぁ、さすが公爵家ですわ。貧しい者にも施しを与える、その崇高な精神に感謝いたします」
マドリン家に多額の寄付を確約させた。
それを皮切りに、次々と寄付を集める。
「マドリン公爵家とは懇意にさせていただいておりますの。先程も、学校建設のために多額の寄付を頂戴いたしました」
「わ、我が家からも是非! 寄付させていただく!」
「よろしいんですの?」
「もちろんでございます! 是非我が家も懇意に」
「もちろんこのご恩は忘れませんわ。で、おいくらほど?」
公爵と名のつく家は気前よく金を出した。
将来の国王陛下とその妃に媚を売りたいと思うのが貴族の性なのだろう。
「まぁ、子爵家でそれほどの金額を? さすが伯爵を賜るのも時間の問題と噂される程の名家だけありますわね」
「そ、そのようなお噂が! まさかエレノア様の耳にまで届いていらっしゃるなんて!」
「えぇ。これからも期待しておりますわよ」
「ありがたき幸せ!」
子爵クラスの貴族たちも、自分こそが頭一つ飛び出そうと寄付を申し出る。
「あら、リース様ではございませんか! そちらは?」
「タットル子爵家の三男、サフレットでございます。お会いできて光栄でございます」
「まぁ、貴方がリース様のご結婚相手ですのね」
リースとサフレットは穏やかで似合いのカップルだった。
「私は三男で多額の寄付は出来ませんが、何か出来ることがございましたら何なりと」
「サフレット様はお医者様とお伺いしておりますが」
「はい」
「では週に一度、医学や薬学の講師として教壇に立ってくださらないかしら?」
「私でよろしいのですか?」
「えぇ、もちろん」
物腰が柔らかくて、何よりリースが隣で頬を染める人物。きっと人柄も良いのだろう。働いてもらうにはぴったりだ。
「リース様の看病と、通常のお仕事に支障が出ない範囲で結構ですわ。西都は貧しく公衆衛生の意識もまだ低いのです。領民が健康でいられるだけの知識をお授けください」
「なるほど。予防医療や応急処置、有用な植物とその煎じ方などでしょうか」
「えぇ! お願いできますか?」
「帰ったら早速教材作りに取り掛かりましょう」
こうして講師も確保できた。
「驚きですね。謁見を寄付金集めと人材募集に使うなど前代未聞だ」
最後の謁見が終わると、レオンは可笑しそうに笑った。
「チリオスタ殿下に言われたことがずっと引っかかっていたのです。学校経営にはお金が掛かりすぎると。課題を出されたらクリアしたくなるのが人間でございましょう」
「はは、逞しいな。それで、いくら集まった」
「豪華な校舎とキレイな寄宿舎が建てられ、5年分の運転資金も賄えるくらい、と申し上げておきます」
「それはすごいな」
「世の中やはりお金ですわね」
「今日は婚約式ですよ? そこは愛情と言ってもらわなくては」
レオンは私の腰をぐっと引き寄せた。
「愛情で学校は建ちませんわよ?」
「それもそうか」
「でもお金だけではこんなに心が満たされることもなかった」
「それは愛の告白と受け取っても?」
「愛しています、レオン」
「もう、貴方はずるいな」
レオンは頬を染め、私を力いっぱい抱きしめた。
最後までお読みいただきありがとうございました!
これで二人の物語は一旦完結とさせていただきます。
閑話や他のキャラ視点の過去など構想は色々あるのですが、新連載も考えているのでまずはそちらを頑張ろうかと思っております。
もし「このキャラが好き!追加エピソード読みたい!」「後日談のイチャイチャ読みたい」等リクエストいただければ書くかも?!感想いただけると嬉しいです!!
また合わせて温かい評価もいただけると涙流します!よろしくおねがいいたします!
それではまた!次回作で会いましょう★




