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両想い

「レオン。リリアンのデザイナーが衣裳の採寸に見えられました」

「あぁもうそんな時間ですか」


 レオンは山積みになった本や資料の間から顔を覗かせて返事をした。

 レオンはチリオスタを宰相に任命し、最近は家庭教師代わりに国のことを教えてもらっている。これがまたスパルタなのだが、レオンは必死に食いついている。


「少し休んではいかがですか」

「そういうエレノアも働き詰めだろう?」

「私は好きでやっているのだから良いのです」


 私は西都に建てる学校の責任者になった。


「講師は集まりそうですか?」

「そうですね。とりあえず職業訓練の講師の一人に、カラットを当てようと思っています」

「なに、カラット?」


 カラットは宝飾品の加工技術において我が国でトップレベル。

 もともと金属加工を産業にしていたザグールとは相性が良さそうだ。


「怪我は治ったのですが、すっかり『師匠』が板についたようなのです」


 私はくすくすと笑う。


「ならば早急に国籍取得の手続きをしよう。グルフレン王立学校の講師になるのだから、無国籍ではまずいだろう?」

「ご配慮感謝いたします」

「カラットのためではありませんよ。国のためです」

「ふふ、承知しておりますわ、次期国王陛下」

「からかうのはやめてください」


 レオンは恥ずかしそうに頬をかいた。


「レオン、そろそろ採寸を。私の私室に待たせてありますから」


 さすがにレオンの執務室に一般人をいれるわけにはいかないし、先程まで私の採寸をしていた都合もあってデザイナーは私室で待機させていた。


「そうですね」


 レオンは椅子から立ち上がり、真っ直ぐ私に向かって歩いてきた。


「?」

「その前に少しだけ、エレノアを補給しても?」

「えっ?! あの、えっと」


 まだ午前中ですよ!


「あぁ、癒やされます」


 レオンの腕が私を包み込む。


「もう、レオン」

「エレノア、鼓動が速いですね」

「そ、それは突然、レオンが」

「僕に抱かれて胸を高鳴らせているのですか?」

「うぅ。そんな風に言わないでくださいませ」

「せっかく両想いになれたのです、もう遠慮はしませんよ。エレノアは僕が好き?」


 レオンが優しく微笑む。


「す、好き、です」


 あぁ、恥ずかしくて溶けてしまいそう。


「まいったな。そんなに可愛い顔をされると離れがたくなってしまう」

「ぞ、存じません」


 もう、レオンなんて知りません!


「エレノア、こっちを見てください。照れている顔も可愛いが、ほら」

「んんっ」


 レオンは私の頬に手を添えると強引に口づけた。

 甘くとろけそうなキスに、力が抜けていく。


「こうするとね、とろんとした顔になるのです。あぁ、たまらないな」

「お、おやめください」

「なぜ? これを期待して胸を高鳴らせていたのでは?」

「そ、そういうわけでは」

「ふぅん? ではもっと何か別のことをしてほしい?」


 レオンは嬉しそうに言った。

 きっと私の顔は真っ赤なんだろう。


「もう、まだお昼にもなっていないのですよ。いい加減になさいませ」


 出来るだけ深く息を吸って言った。

 落ち着け心臓。レオンのペースに飲まれてはいけません。


「わかりました」


 ほっ。よかった。


「ではまた夜に。これで一日頑張れそうだ」

「!!!」


 レオンは足取り軽く執務室を出て行った。



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