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突然のお茶会

「まぁ、楽しそうにするレオンなんていつぶりかしら」


 整えられた木立の間からおっとりとした雰囲気の女性が顔を出した。


「母上、いらしたのですか」

「だってここは私の庭ですもの」


「お、おかあさま?!わ、私、リーディッヒ=エレノアと申します。お目にかかれて光栄にございますっ」


 私は慌てて淑女の礼をする。


「あらいいのよ、座ってらして?お茶にしましょう」


 そう言う彼女の手には、ティーポットとカップが3客。


「お、おかさあまにそんなこと!させられませんわ!」

「うふふ、こう見えて私、使用人出身ですからね。お茶を入れるのはあなたよりきっと上手よ」


 嫌味ではなく本当にそう言っているようだった。

 レオン王子が座るように視線で促したので、私は肩身の狭い思いをしながら椅子に腰掛けた。もちろん、すぐに立ち上がれるようにものすごく浅く。


「ごめんなさいね、ここには使用人もいなくて。お話するのにお茶も出さないなんて失礼だったわ」


 こぽこぽとお湯の注がれる音がする。


「使用人がいらっしゃらないのですか?」

「えぇ。だって元使用人に仕えるなんて、誰だって嫌でしょう?王宮付きの使用人なら尚更、誇りを持って働いていますからね」

「だからって、使用人をつけてもらえないのですか?レオン殿下もいるのに?」


 ひどい冷遇だ。


「というのは表向きです。母上は内々に父に頼み込んで使用人をわざと付けないようにした。公妃はもちろん、王宮に渦巻く不満や嫉妬をそれで抑え込んだ」


 レオン殿下が言った。

 なるほど、使用人だったお義母様が、自分たちと同じ地位や上の地位に立つのは面白くない。


「それに大抵のことは一人で出来ますから。おうちもとってもコンパクトですし」 


 お義母様の視線が仰いだ先にはこじんまりとした離れがあった。庭の植栽に気を取られ気づかなかったが確かに小さな家がある。


「お義母様はずっとこちらで?」

「えぇ、とても静かで気に入ってますのよ。さぁ、召し上がって」


 甘い湯気の中に、柑橘系の香りがする。

 一口飲むと、素朴で温かい味に心が一気に弛む。


「とても美味しいですわ!これは、はちみつとレモンピール?」

「そうなの、それも自家製よ。陛下も好きで、よく飲みにいらっしゃるの」


 驚いた。

 こんなところに陛下が足繁く通っているのか。


「このシロップを固めて飴にしたものもあるのよ。陛下はこれを口に含んで帰るの。ふふ、子どもみたいよね」


 お義母様は幸せそうに笑った。

 二人は心から愛し合っている。そんな感じがした。

 そう言えば謁見のときも、陛下は決してレオン殿下を邪険にはしていなかった。


 私に彼を「頼む」と言ったのだ。


「お義母様、お二人の馴れ初めを聞かせていただけませんか?」

「エ、エレノア嬢?」


 レオン殿下が慌てた顔をした。両親の恋バナなんて聞きたくないのだろう。ちょっと可愛い。


「あら、そんな昔のこと」

「だめでしょうか」

「いいわよぅ。昨日のことのように思い出せるもの」


 



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