謝罪
レオンは自室に入ると扉を閉めた。私は扉とレオンに挟まれ身動きが取れなくなった。
「エレノア、触れることを許してくれるだろうか。そんな資格、僕にはもうないだろうか」
レオンの指先はかすかに震えていた。
さっきのレオンとは似ても似つかない、子犬のような、縋り付くような目をしていた。
その姿に胸が焦がれて熱いものが込み上がってくる。
「それは私の方です。私はレオンのお心を疑いました。レオンのお心には、もう私などいないと思ったのです。私はまだ、レオンに愛される資格がありますか?」
「何を馬鹿な! 傷つけて本当にすまなかった」
レオンはその腕で私を抱きしめた。熱い吐息が耳にかかる。
だめだ、もうこらえきれない。ずっと待っていたレオンがここにいる。
「レオン、会いたかったです。寂しかったです」
思わず涙が溢れる。
「僕もだ! 会えぬ日々も、目の前にいるのに触れられぬ日々も、どれだけ辛かったか!」
レオンの手に力がこもる。
「私、後悔したのです。あの日、レオンと喧嘩したまま別れてしまったことを」
「僕が悪かったのだ。つまらぬ嫉妬をし、一方的に気持ちを押し付けた。仕事をして生き生きしているエレノアを眩しいと思っていたはずなのに」
「いいえ、私が傲慢だったのです。レオンの気持ちに甘え、きちんと貴方を見ていなかった。ごめんなさい」
私は少し体を離してレオンの顔を真正面から見つめた。
「私はきっと、これからもレオンを振り回してしまいます。けれどずっと隣にいてほしいのです。もう他の人が隣にいるレオンなんて見たくない」
「エレノア、もちろんだ。僕はエレノアだけを愛すると誓おう。これからもずっと」
温かい気持ちが胸を満たしていく。
「愛しています、レオン」
「エレノア!」
そしてまた私たちの間に距離はなくなった。どちらからともなく何度も唇を重ねた。
しばらくしてレオンが跪いた。そして私の手を取り神妙に言った。
「エレノア、僕は国王になるらしい」
「はい」
「妻として、エレノアの意思で、僕の側にいてくれるか? 契約でも命令でもない、エレノアの気持ちが聞きたい」
「私はレオンが何者であってもずっとお側におります。愛しています、レオン」
私がそう言うと、レオンは優しく微笑んだ。
「その言葉が聞きたかった。あの二人に返事をしに行こう」
「はい」
もう迷わない。もう震えない。
だって私の隣には、同じ気持ちを持った最愛の人がいるから。
「失礼します。お待たせをいたしました」
陛下とチリオスタは先程と同じ場所で座っていた。
レオンと私は二人の前に跪く。
「グルフレン国王陛下よりの命、謹んでお受けいたします」
「何事も二人で乗り越えよ」
「はい」
「レオン、大きくなったものだな」
陛下は声を詰らせながら言った。チリオスタは目を細めてぼんやり「ありがとう」と言った。




