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四者会談3


 レオンを次期国王に任命?

 一体何がどうなっているのか。


「レオン、驚かないのだな」


 チリオスタは可笑しそうに言った。

 何がそんなに愉快だというのだろう。私は少し憤っていた。


「兄上の秘密主義には慣れました。ですが説明していただきたい。これは僕一人の問題ではありませんから」


 レオンは本当に強くなった。

 陛下やチリオスタを前にして堂々と言い切るその姿は、初めて会った時の不貞腐れた顔とはまるで別人だった。


「私はコロン公国での一件で疑問を持ったのだ。お前は私に出来なかったことをやり遂げた上、コロンのミスリル兵器やグロリアスの陰謀を暴いた。果たして王に相応しいのはどちらだろう、と」

「あれはエレノアの功績によるものです」

「お前たち夫婦の功績であろう」


 確かに私一人ではコロンを訪れることも叶わなかったし、レオン一人でも解決出来なかった。


「私は幼い頃より王になるためだけに生きてきた。そのために気の遠くなる程の努力をした。しかし私が上手くなったのは、権力の使い方だけだったのではないかと」

「それも立派な王たる資質ではないですか! 権力を間違った方向に使う愚かな者は腐るほどいる。しかし兄上は違う!」


 確かにチリオスタの采配には迷いがない。

 政治は一つ判断を間違えれば取り返しがつかないこともある。それを迷いなく迅速に行うなど並大抵の精神力ではないし、判断の根拠となる膨大な知識が必要だ。

 それをチリオスタはこの若さで身につけている。


「私にも判断がつかなかったのだ。だから何も知らぬお前を西都に放り込んだ。ここで死ぬならそこまでの人間だった、これまで通り私が権力を行使しようと」

「ですが僕は帰りました」

「そうだ。それもウルルという謀反の証拠を土産に帰ってきた。そしてエレノアが全てを暴いた」


「殿下、それはたまたまですわ」


 私は思わず口を挟む。

 そもそも物見櫓でチリオスタと話をしていなければ、レオンに危機が迫っていると気付けなければ、私は今頃リーディッヒの屋敷に帰っていた。


「私はここに来る前に陛下に申し上げたのだ。西都の将来について、採用したいと思う案を述べた者に王位を譲ってほしいと。そして陛下はお前たちを選んだ」


「ですが兄上、今回の件はエレノアの言うとおり偶然が重なったまでのこと。兄上だってウルルが反逆者だと気付いていたのでしょう? 遅かれ早かれ兄上にだって解決は可能だったはずです」

「あぁそうだろうな。たがそれには我が妃の命かお前の命を代償にする必要があっただろう」

「っ!」


 そうだ。この人はそういう人だ。

 確証があるまで動かない。ウルルが決定的に王族殺しを犯すまで、きっと眺めていただけだろう。


「エレノアが言ったのだ。レオンの方がよっぽど勇敢で優しいと。お前の方が向いているよ」

「エレノアがそんなことを? しかし兄上、それとこれとはーー」


「往生際が悪いなレオン、これは陛下が決めたこと。それに私は前にお前に依頼したぞ? 私に代わる王太子を、次期国王を見つけてきてくれと」

「あ、あれは! 冗談ではなかったのですか!」

「私が国に関することで冗談を言うとでも?」


 チリオスタの目がレオンを黙らせる。

 そして今度はその目を私に向けた。


「エレノア」

「はい」

「物見櫓での約束を覚えているか?」

「はい。殿下から情報をいただく代わりに商談をすると。その商談に必ずイエスと答えるとお約束いたしました」


「よい、では申そう。レオンが次期国王となり、エレノアはその正妃となる。二人でこの国を導くのだ。報酬はこの国の全てを」


 なんて無茶な商談だろうか。


「さぁ返事をせよ」


 チリオスタは笑みを浮かべて言う。

 返事をしなくてはならない。でも唇が震える。


 バンッ!

 レオンが激しい音を立て、テーブルに手をつく。


「兄上、エレノアと話をさせてください。返事はその後です」

「何、もう決まったこと。こんなものはただの茶番だ。そう熱くなるな」

「僕たちにとってはそうではない!」


「レオン、行きなさい。私はここで待ってお前たちの返事を聞こう。チリオスタもいい加減にしないか」


 陛下が重々しく言った。チリオスタは大きく肩で息をした。


「失礼する。エレノア、行きますよ」


 レオンは私の腕を掴むと足早に廊下を歩いた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 合理的過ぎてトップに向かないタイプか 国の利益の最大化という観点ではそうそう判断を間違える事は無いけど多くの人がついてこれない
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