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四者会談2

「レオン。エレノアをそう怖がらせるでない」

「いえ、そんなつもりはーー。いや、そうだな。すまないエレノア。全て僕の不甲斐なさのせいだ」


 陛下の言葉にレオンは哀しげな目で私を見た。私はなぜか胸がいっぱいになった。ようやく見られたレオンの顔、それがこんなにも哀しいなんて。


「さて、これからの西都についてだが、皆の意見を聞きたい」


 国王陛下はその太い指を組んだ。


「チリオスタはどう考える」

「レオンの言うように領民たちがグルフレンに対して良くない感情を持っているのなら、それを根絶やしにせねばなりません。特に戦力を持った少年兵は厄介です。国家転覆罪で死ぬまで牢に入れるのが妥当かと」

「領地の運営はどうする」

「元々たいした生産性のない土地です。放っておいても良いでしょう。金が必要ならば金属加工を牢の中でやらせれば良いだけです」

「なるほどな」

「土地を有効利用するのなら、大規模な軍事演習場を作っても良いかもしれませんね。以上が私の考えです」


 チリオスタの意見は真っ当だ。国に楯突くものを徹底的に取り締まり、囚人に金を生み出させ、土地は広さを生かした軍事演習場にする。

 過不足のない的確なプラン。

 さすがこの国の第一王子だ。


「レオン、お前はどう思う」

「僕は領民全てを牢に入れるなど出来ない。首謀者の領主と、実行者の娘だけで十分だ」

「情がうつったか?」

「そうかもしれません。彼らはグルフレンを憎みながらも生きていた。そこでの生活があった。その生活を奪うことは出来ません。憎しみが見える形で牙を向いたとき、それはその時に対処すべきでしょう」

「少年兵についてはどう考える」

「彼らもまた被害者です。一方的な価値観を押し付けられ、善悪も自分で判断出来ぬまま銃を持たされた」

「ではどうする。お前の話は美しいが、どうやって国を守る」

「それは……まだ」


 レオンは口をつぐんだ。


「エレノアはどうだ」

「私、ですか?」

「あぁ、意見を聞かせてくれ」



「今の西都に、特に少年兵と呼ばれる者たちに必要なのは教育です」

「ふむ、続けよ」

「そもそも今の大人たちで、グルフレンに憎しみを持っている者たちは誰でしょうか。そう、先の戦争で少年兵たちだった者たちです。彼らもまた、憎むことだけを教えられ育った。そして今同じことが繰り返され、憎しみが連鎖しようとしています」


 不幸が不幸を生み続けるのだ。


「西都には国営の学校を建てます。客観的な歴史、善悪や倫理、そして卒業後の進路が広がるよう、学習と職業訓練も行います」

「西都はザグール時代から貧しい土地だからな、金属加工以外に道が拓けるのは良いことだ」

「そして希望者には、大人も同様に学ぶ権利を与えます」


 そこで陛下は少し渋い顔をした。


「人は集まるのか?」

「集まらないでしょう。集めたければ、それ相応の対価を与えるのです」

「対価? 金か?」

「お金だと、また良くないものに使われるかもしれません」

「では何を与えるつもりなのだ」


「衣食住、全てですわ」


「何?」

「学生専用の服を貸与し、食事も豪華ではないですが、飢えをしのげバランスの良いものを三食提供します。そして学生の間は、学生専用の宿舎に住むことが出来ます」

「それは人が集まりそうだな」

「そして雇用も生み出します。調理や配膳はもちろん、宿舎の管理維持など。現地の人間を雇い、学校に来ない人にも財が行き渡るようにします」


 そして一番の狙いはーー。


「教師との交流や物資の運搬を通じて、グルフレンの人間はそう悪い人たちではないと肌で感じてもらうのです。元は違う国の人間ですが、それでも自分たちは同じ人間だとわかってもらうのです」

「面白いな」

「元ザグールの民は、肥大化したグルフレンの妄想に取り憑かれているように思います。身近に接し、人となりを知れば、自ずと妄執から解放されるはずです」


 私が説明するのを頷きながら聞く陛下の横で、チリオスタは首を捻った。


「貴女らしくないな。この案には一つ、致命的な欠点がある。金がかかりすぎることだ。そして必ずしもペイされるとは限らない」


「仰る通りです。ですが既に西都はグルフレン領。領民を大切にせずして王族を名乗れますか? それにこれが成功すれば、学研都市として新しいモデルとなりますわ」

「エレノアの言うとおり、民が健全に生きられることは国にとって何よりも大切なことだ」


 陛下はそう言うと、深く息を吸い込んだ。そして力強い声で言った。


「レオン、ならびにエレノアの案を採用しよう」


 よかった。

 行ったことはないけれど、軍事演習場なんかより、人が生き生き学べる学校の方がずっと素敵だ。

 そして何より、レオンがお世話になって、守ろうとした人たちを、辛い目に合わせなくて済む。


「チリオスタ、異論はないか?」

「はい陛下」


 チリオスタはなぜか清々しい顔をしていた。


「本当に良いのだな」

「前に言った通りです。いつからか、むしろそれを望んでいたのかもしれない」


 何のことだろう。


「わかった」


 ?


「グルフレン国王の名において、レオンを次期国王に任命する」


 ?!


?!

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