失態
ピチチチチ。ピチチチチ。
小鳥の鳴き声がする。
日差しが春の柔らかいものから、初夏のものへと変わってきているのがわかる。
「まぶしい……」
「おはようございますお嬢様」
クロエの声を聞いてはっと我に返る。
「私寝てた?!」
血の気が引いてゆく。
昨夜私室のベッドでクロエに足を揉まれていたことまでは覚えている。
そのまま寝てしまったなんて。
「レ、レオン! 入ります!」
よりにもよって私室のベッドで寝てしまうなんて!
これではまるでレオンと仲直りする気はないと言っているようなものではないか。
私は慌てて隣りにある夫婦の寝室のドアを開けた。
「あれ? いない」
「殿下は昨夜遅くに戻られたのですが」
「何か言っていた?!」
「お嬢様の顔を見て、『僕はエレノアを愛しているだけなのにな』と仰られ、口付けをされると出て行きました」
「!!!!!」
全く記憶にございませんが!
「それで、レオンはどこへ?」
「先王様の時代に統合された西都へ向かわれるとのことで、夜の間に出立の準備をされ、夜明け前に出られたとのことです」
「そんな……」
私たち仲直りどころか、あれから一言も口をきいていないのに。
せめて「お気をつけて」「お待ちしております」くらい言わなくてはいけなかったのに。
「チリオスタ殿下からの命だそうです。詳しくはわかりませんが、西方の情報収集をして、ひと月程で戻られると」
「ひと月も」
あぁ、なんで私は寝てしまったのでしょう。
私は空っぽのベッドを見つめる。
「お嬢様。本日は国王陛下とマーガレット妃殿下にご挨拶をせねばなりません。お召し替えを」
あぁ、どんな顔で義父と義母に面会しろというのだろうか。
昨日息子さんをひどく怒鳴ってしまいました、とか?
挙げ句、先に寝落ちして、喧嘩別れのような状態になっています、とか?
「はぁ、気が重い」
「無事の帰還をご報告されれば良いのです。レオン殿下もいらっしゃらないことですし、簡単にで構わないかと」
「そ、そうよね」
私は促されるまま準備をし、重い足で義父母の元へ向かった。




