来訪者
私とレオンが玄関ホールに続く階段を下りていくと、マドリン公爵夫妻の姿が見えた。
レオンはぐっと脇を締め、エスコートされている私を密着させる。
「こんにちは、今日は何の用で?」
レオンが声をかけると私たちを見たマドリン公爵夫妻は一瞬顔をしかめた。そしてすぐに作り笑いを浮かべる。
「やぁ、レオン殿下。昨日は話の途中でしたのでな」
「昨日の件はお断りしたはずだが?」
「まぁそう言わずに」
何の話でしょうか?
昨日夕刻まで戻らなかったのは、マドリン公爵と話をしていたからなのですね。
私は夫婦とリースの前まで来ると、レオンの腕をほどいて淑女の礼をする。
「ご無沙汰しております。リーディッヒ公爵家のエレノアでございます。あの、よろしければ昼食をご一緒にいかがでしょうか。お話もあるようですし、ゆっくりと」
私がそう言うと、あからさまに喜んだ顔をする公爵。
「なんとご理解のある!是非そうしましょう!」
リースは始終俯いていた。
「リース様、お身体はいかがですか?昨日はお辛かったようですが」
リースに声を掛けるも、返事は母親がした。
「まぁリースを気にかけてくださるなんて!これから上手くやっていけそうで安心ですわ!」
???
「と、とりあえず、サロンへご案内いたしますわね。食事の用意が整うまでしばらくお待ちくださいませ」
その声と同時に使用人たちが忙しく動き始めた。
マドリン公爵夫妻はサロンの調度品をやたら褒めていた。
やれ高級品だの立派だの、惚れ惚れした顔であたりを眺めていた。
マドリン公爵家は以前リーディッヒと取引があったが、数年前から羽振りが悪くなっていたはず。王族の所有する一級品が珍しいのかもしれない。
「さすが王家は何から何まで最高級品ですな。我が家には手も足も出ませんよ」
うーん、ここで話相手をしていても商談相手にはならなさそう。
「リース様、よろしければ温室をご案内いたしますわ」
公爵夫妻はレオンに任せてリースと話をしよう。私の目的はこっちなのだ。
「まぁいってらっしゃい、リース。仲良くね?」
リースは軽く会釈をすると、私についてきた。
温室の扉を閉めるとリースはおもむろに口を開いた。
「エレノア様、この度のご無礼お許しください」
「リース様?!一体どうされたのです」
「両親は、レオン様と私の婚約を求めにやってきたのです」
「え???」
レオンと誰だって??
「私は病弱な身体ゆえ、両親には様々な負担をかけてまいりました。逆らうことが出来ないのです。どうかこんな私をお許しください」
「か、顔を上げてくださいませ!ええっと、レオンとリース様が婚約、ですか?」
「申し訳ございません」
リースの表情は苦悶に満ちていた。




