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嬉し恥ずかし共同作業

「あの、非常に書きづらいのですが。この体勢は必要ですか?」


 私はレオンの膝に乗せられていた。


「エレノアが仕事を増やしたのですよ。文句を言わないでください」

「でも婚約式の招待状は私が全て書いたではありませんか」

「それとこれとは別です」


 私とレオンは王都で販売するブックレットにサインを書いていた。

 王都限定ご夫妻の直筆サイン入り!を売り文句にする予定なのだが、レオンが駄々をこねたのだ。






「膝にすわってください。そうすれば書ける気がする」

「何を言っているのです。かえって書きにくいではありませんか」

「そうしなければ書く気が起きませんのでどの道書けませんよ」


 それは脅しですか。


「私、婚約式の招待状を全て書きましたのよ!残り全部!」

「昨日戻ったばかりなのに一体いつ?」


 私はコロンからの帰路、馬車の中でひたすら眠っていた。夜は宿屋や王家の別荘などで計3泊することになったのだが、その間一睡もせずに招待状を書くためである。

 こうして4日目にリーディッヒ家についた時には招待状を全て書き終えていた。

 そもそもレオンと招待状を書いていたのを中断してコロンに向かったので、どうしても招待状の発送を遅らせるわけにはいかなかった。


「コロンのパン屋の奥様覚えておいでですか?」

「あぁもちろん」

「あの方に言われましたの。私の仕事はもうコロンにはないと」


 そこではっとしたのだ。

 急ぎ招待状を書き上げ、王宮についたらスムーズにサイン作業を出来るように整えねば!と。


 そして今に至る。






「やはり恥ずかしいですし、何より効率的ではありません」


 それにものすごく気になるのです!ふと私を見つめては嬉しそうに微笑む貴方が!



「照れてくれているのですか?嬉しいですね」


 なぜそんなにポジティブなのですか!


「貴方、ほんとにレオンですか?」


 怪訝な目を向ける。


「エレノアと出会って変われたのですよ。それにこれまでずっと抑圧されて生きてきたんだ。反動だと思ってください」


 レオンはククッと笑った。少年のような笑顔が眩しくもあり、末恐ろしくもある。


「抑圧していたのは私ではありませんし、反動を一身に受ける身にもなってほしいのですが」

「一度切ってしまった堰が止められないように、僕の気持ちももう止められぬのです。もうバレているのだから遠慮は不要でしょう」

「開き直らないでくださいませ」

「ほら。手が止まっていますよ?手を添えて差し上げましょうか?」


 レオンが自分の羽ペンを置く。


「け、結構ですわ!!」


 私は仕方なくレオンの膝に乗ったまま羽ペンを動かす。


「あぁ、可愛いエレノア。耳まで赤いじゃないか」

「そ、そういうことを言わないでくださいませ!」


 すごく調子が狂います。この前までは私がレオンを振り回していたというのに。


「そうだ。サインの目処がついたら旅行に行きませんか」

「旅行?」

「新婚夫婦の初旅行が任務と兼用ではいけないでしょう」


 言われてみればコロン遠征が私達の初旅行となった。 


「少し興味がありますわ」


 馬車から見えた町並みも目新しくてウキウキしたし、セキドやコロンの人たちとの交流も楽しかった。


「ではさっさと終わらせてしまいましょう」


 レオンはにっこり笑うと左手で私を抱いたまま右手で羽ペンを走らせた。

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