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解決方法は

「謝りませんからね」


 レオンはそう言うと恥ずかしそうに視線をそらした。

 私は驚きなのか困惑なのか、よくわからない感情がぐちゃぐちゃになって言葉が出なかった。


「エレノア?」


 目からぽろぽろと涙が零れた。一体この涙は何なのだろう。自分の心が制御出来ない。


「そ、そんなに嫌でしたか?」


 レオンの焦ったような声が聞こえる。嫌だったのだろうか。違うような気もするけど、それももうよくわからない。

 私はぼやけた視界で私室へ繋がるドアへと歩く。


「エレノア、話を」


 レオンに手を捕まれぐらりと身体が揺れる。それでもドアに向かって弱々しく侍女の名を呼んだ。するとすぐに扉が開いた。


「レオン殿下、お嬢様はお預かりいたしますわ。お化粧直しが必要のようです。すぐにお返しいたしますので」


 クロエは早口でそう言うと、私の手を取りさっと部屋へ引き入れた。

 優秀な侍女はレオンに一礼すると扉を閉めた。






 私は私室の椅子に座り、レオンが用意してくれた重厚なデスクに身を突っ伏した。

 クロエは黙ってお茶の用意を始める。何も言わなくても私の心地良いように采配してくれるクロエ。それに安堵してまた泣けてくる。


「失敗してしまったわ。もうどうしたらいいのかしら」


 私は鼻をすすりながら言った。

 喜んでもらえると自信満々に渡した報酬明細は気に入ってもらえず、添い寝の提案を受ければ即座に辞退され、挙げ句あんなことに。


「失敗なさった時はいつもどうしておいででしたか?」


 クロエはお茶が注がれたティーカップを置いた。カモミールの香りが心を落ちつける。


「失敗の分析、現状把握、改訂案の提案」


 私は力なく言った。


「失敗の分析はお済みですか?」


 今度は冷えたタオルを目に当ててくれる。目が腫れないようにだろう。


「お金はいらないみたい、ビジネスライクなのも気に入らなかったみたい」

「つまりお嬢様との関係性を、ビジネスなものにしたくないということですね」

「うぅ、そのようです」


「では続いて現状把握です。レオン殿下はどのような関係をお望みなのでしょう」


 クロエはタオルを温かいものに取り替える。まぶたがじんわりとして気持ちが良い。


「それは……聞かなければわからないわ」

「一緒に寝て、キスをするような関係でしょうね」

「ク、クロエ!!!」


「僭越ながら申し上げますが、お二人はご夫婦になられるのです。さらに王家に嫁ぐということは、いずれ子をつくるということ」

「子?!」

「お嬢様。王族との婚約を受けたのでしょう?腹を括ったのでしょう?何を泣くことがございます。レオン殿下のしたことに非はありませんよ」

「で、でも!びっくりしたのよ!私はビジネスパートナーだと思っていたんだから!」

「そこに食い違いが有るようですね。此の度のトラブルの発端はお互いの認識の違いです。お嬢様、こういったときはどうするのです?」

「意見交換、意見のすり合わせ、同一ビジョンの作成、あたりかしら」


 はぁー。

 問題解決のためにはレオンと顔を見て話さなければいけない。あぁ、気が重い。


「お嬢様が聡明な方でよかったです」

「こんなに気の進まない商談は初めてよ」

「まだ商談などとおっしゃっているのですか?」

「え?」


 クロエがタオルを外す。


「客観的に申し上げますと、これは痴話喧嘩。夫婦喧嘩にございます」

「!!」

「お嬢様がこういったことに相当にぶいというのは存じていたつもりですが」

「に、にぶ?!」

「しっかりお相手の気持ちを聞いてらっしゃいませ。そしてお嬢様の思っていることをお伝えください」


 クロエはメイク道具を取り出すと、良い香りのおしろいを頬にのせていく。


「簡単に言うのね」

「時間を無駄にするのはお嫌いでしょう?二の足を踏んで何か変わりますか?」

「そうね、変わらないわ。善は急げね」

「左様でございます」


 クロエは手早く私のメイクを直した。


 私はしっかり前を向き、寝室へと続く扉の前に立った。

 評価ボイントいただきました!ついに100超え!夢のようです!

 いや、夢なのか?夢なのかもしれない……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初にビジネスパートナーとして契約したのに更改も無しに別の関係迫るレオンが一方的に悪いよね、コレ
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