お天気コントロールドラゴン
第2回なろうラジオ大賞への投稿作品。その3作目です。
これまで書いてきたものとはちょっと…いやだいぶ違うので、生温かい目でご覧ください。
雲を操るその竜は太古の昔から下界を見守り、時に雨を、時に日差しを人々に与えてきた。
「あ、また農民が干ばつに悩んでる。よいしょ、よいしょ…これでよし」
「やったぞ恵みの雨だ!ありがとう!」
雲を動かし雨を降らせて乾いた土地を潤すと、農民たちは喜んで手を振る。
「あっ、またあのサラリーマンは暗い顔をしてる。僕にはこれくらいしか出来ないけれど…よいしょ、よいしょ…」
「いつもありがとう。心が洗われるようだよ」
雲を退けて日差しを降り注がせ、疲れた様子のサラリーマンの足元に綺麗な花を咲かせる。するとその表情には明るさが戻った。
「ん?またあの忍者か。何回邪魔をしても聖女暗殺を諦めないんだから!よいしょ、よいしょ…」
「曲者だ!であえであえー!」
「ひぃ!また失敗だぁ!」
「神の竜よ、いつも感謝しております」
コソコソしているところを雲に穴を開け月明かりのスポットライトで照らし、気づいた護衛に追われた忍者は一目散に逃げた。
「ついでに依頼を出した大魔王にもお仕置きをしなくちゃ。よいしょ、よいしょ…」
「ギャアッ!」
「あ、大魔王に直撃しちゃった…。でもこれで懲りたよね?」
竜は魔王城の上に真っ黒な雷雲を集めると、城のあちこちに雷を降らせた。その後しばらく大魔王は大人しくしていたらしい。
「おっと、今度は名探偵と文学少女か。ようやく互いの気持ちに気づいたのに雨が降ってるんじゃ勿体ないね。よいしょ、よいしょ…」
竜は雨を止ませると夕日が差し込むようにした。すると夕暮れのオレンジに照らされた二人の上に虹が架かる。
「ふふふ…二人ともお幸せに」
幸せそうな二人が手を繋いでニッコリするのを見た竜は再び仕事に戻る。
「今日もお疲れさん。仕事はどうじゃ?」
「あ、神様もお疲れさま。今日も色々なことがあったよ」
「そうかそうか。ほれ、お土産の牡牛座の牛から貰ってきた牛乳じゃ」
「いや、牡牛なら乳は出ないでしょ…。なんで宇宙規模の見栄を張るんですか。いつもの農場の牛乳でしょう?」
「バレたか」
二人は雲の上に座って牛乳を飲む。
「ああ美味しかった。これでこの後も頑張れそうだよ」
「なぁ竜よ…」
「ん?」
「…いや、なんでもない」
神様はたった一人で世界を見守る竜に何と言って良いかわからず口をつぐむ。
「…今度はコーヒー牛乳を買ってくるかのぅ」
「あれもすっごく美味しいよね!楽しみだなぁ。さて、じゃあ仕事に戻るね」
こうして優しき竜は今日も世界を見守る。
いつもは自分にとってドラゴンと言えば敵役なのですが、たまにはこういうのも悪くないなと思って書いてみました。
しかし文字制限ってやっぱり難しいですね…。
でも割と書きたいことは書けたので、概ね満足です。