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第四章⑦ メリルの回答

「ごちそうさま」


 食堂で警備隊員たちに混じって朝食を待っていたキルトは、用意ができるや否や、ろくに咀嚼(そしゃく)もしないまま朝食をかき込み、いち早く平らげて席を立った。


「キーくん、どこいくの?」


 今ではすっかり回復し、隣の席で同じく朝食を取っていたメリルが、スプーンを口にくわえたまま、後ろ手でキルトの服の裾を掴んで止めた。


「別に、どこだっていいだろ」


 レイラから伝言を聞いたことは、キルトは皆には伏せていた。

 派手に指名手配までして、警備隊総出で雷華を探している今である。明かせば、皆は問答無用で雷華を捕まえようとするだろう。

 だが、それはまずいのだ。


 なぜなら、雷華は犯人ではない。誓ってもいい。絶対にだ。

 誰かが、姿を現さない雷華を犯人に仕立て上げようとしているのだ。

 逆にそうなったから、雷華が出て来れなくなって伝言という手段を使っているのかもしれない。


 冤罪(えんざい)を受けている雷華は、最低でも手がかりを知っている。

 でなければ、クラリスやシアがまさに襲われるというタイミングで、イルムガルドやキルトに伝えて守らせる、などということはできない。


 二度目の伝言による日時の指定は今日。

 雷華に会えば、謎はすべて解けるはずだった。


「……あのくの一を探すつもりなの?」


 鋭いというか、お見通しというか、メリルはまるでキルトの心を読み取ったように言った。心なしか声のトーンが落ちているのは機嫌が悪いからだ。


「キーくん、命狙われてるんだよ? ボクたちだって襲われた。証拠の手裏剣だって出てる。みんなに任せておけばいいじゃない! いつもならこういうことは面倒臭いってやだがるのに、どうしてなの?」


 雷華の話題となると、メリルはずっとこの調子だった。それがかえって、キルトの不信感を募らせる。


「ボクのときはろくに看病もしないですぐにどっか行っちゃったのに、シアさんが死に掛けた途端、やる気出しちゃってさ……」

「なんでそこでシアが出てくるんだよ。何度も言ったろ。俺は俺の好きにやる。今日で終わりにするんだ。行かせろよ」

「キーくん、それって……」


 キルトは少し冷たいかと思ったが、まだ服の裾を掴んでいるメリルの手をできるだけやさしく払いのけた。


「はぁ……強情なんだ?」

「わかってるなら、あきらめろよ」


 しょんぼりしたメリルを置いて、食堂のドアに手をかける。

 その時、だった。


「……そっか。でも、ダメだよ」


 食堂の喧騒がピタリと止み、突然空気が張り詰めた。


 言葉を発したのはメリルだ。

 だが、それは今まで聞いたこともないような怖い声で、妙に寒気がした。


 思わず振り向くと、メリルが立ち上がって、(うつむ)いていた。


「行っちゃダメだよ。ううん、行かせない」


 細められたメリルの赤い瞳が、うっすらと光っているように見えた。


「キーくんは何もしなくたっていいの。全部、ボクたちに任せてよ。大丈夫、すぐ終わりするんだから」


 メリルの豹変ぶりに気を取られていると、突然背後でガチャリとドアが開いた。


「……失礼」


 ハッとして振り向くと、入ってきたルーファスが、キルトの目の前でいきなり、一本だけ突き立てた指をくるりと回す。


「うお?」


 魔術をかけられた、と認識するより速く、キルトの視界がぐらりと揺れる。いきなり体に力が入らなくなり、意識が眠りに落ちていく。


「はぁ……、嬢、あまり先走らない……さいと……度もお願いしているじゃ……すか……え? ちょっと眠ってもらった……す。フォ……ですよ、……ロー。そんなに睨まないでください。怖いで……」


 完全に眠りに落ちる直前、キルトは途切れ途切れの声を聞いた気がした。

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