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藍原真澄 #前編

藍原真澄は冷めた人間だ。


それは自他共に認める事実である。


真澄は周囲に対して関心がなかった。誰がどこで何をしていようがどうでもよかったし、誰かが真澄のことを何か言っていても興味もなかった。


なら自分が大事なのかと言われるとそうでもない。真澄は自分自身のこともどこか達観して見ている節があった。


だが、冷めているからといって全く情がないわけでもなく、家族や友人をそれなりに大事に思っていた。それが彼らに伝わっていたのかは分からないが、決して真澄を見捨てなかった。




そんな真澄がその無関心さを改善しようと思い立ったのは、社会人になってからだった。




「……?」


ひっそりと眉を寄せ、ゴミ箱を見つめる。


ここが真澄が一人暮らししているマンションの部屋でよかったと思う。でなければ、女がゴミ箱の前に立ち尽くしじっと見つめているという奇怪な姿を見て、あらぬ噂を立てる者がいないとも限らない。



真澄は首を傾げた。

おかしいな、と。



昨夜、真澄は穴が空いて使い物にならなくなってしまった靴下をゴミ箱に放り込んだ。

それは確かな記憶だ。


しかし、それがない。

どう見ても何度見ても、捨てたはずの靴下がない。


靴下を捨てたのは夢だったのかと思い箪笥を確認するが、該当するものはない。



再び首を傾げた。

おかしいな、と。



不意に思い出したのは、半年ほど前のこと。


その日、新しい歯ブラシに換えたのだが、排水溝などの汚れを取る為に使おうと取っておいた、ずっと使っていた歯ブラシが仕事から帰ってくると忽然と姿を消していたのだ。


間違えて捨ててしまったのかと納得させたが、思えばその日から、真澄のありとあらゆる私物が不定期に無くなるようになった。


無頓着な真澄は昔からよく物を無くしていたのでどこかに置いてきたか、片付けた場所を忘れてしまったんだろうと思っていた。


しかし、仕事で使用するボールペンや口紅が無くなったときは流石に渋面をつくった。



おかしいな、と。



よくよく思い返すと、生理中に使用したナプキンや下着などが黒いポリ袋ごと無くなることも多々あった。


そこでようやく気づく。



ーー誰かが部屋に侵入しているのでは。



そう考えたものの、真澄は警察に行こうとか誰かに相談しようとは思わなかった。


相手は真澄の使用済みの物を取っていく変態だ。尋常じゃないレベルの変質者。

下手に刺激して更なる行動を起こされてはたまらない。




「お疲れ様でした」


いつも通り仕事を終えて徒歩でマンションを目指す。徒歩10分の距離にあるそこを目指して、いつも通る道を歩く。




ーーーだが。



ちらりと、目が動く。




(尾行だ…)



真澄が歩いているのは、それなりに人通りのある道路だ。車も結構な数が行き交っているし、決してひと気のないところではない。


だからこそ、真澄を尾行しているのが誰なのか分からない。


ここで立ち止まり振り返れば不自然だろう。



そう思ったとき、尾行するそれとは別の視線を感じた。しかも、複数。


ひっそりと眉を寄せた。


実はこの状況は今日が初めてではない。

半年前に始まった私物紛失事件と時を同じくしてその視線を感じ、尾行されている。


今まで気にしなかったのは真澄が無関心であったからに他ならない。気にはしても、すぐに忘れていたのだ。



だが今回はそうもいかない。誰かが部屋に侵入していることに気づいてから、少なからず真澄は真澄なりに警戒していた。


そして犯人が複数人であることが分かり、動揺した。単独とばかり思っていた。


しかし真澄には心当たりがない。あるとすれば、真澄のこの無関心さが気に入らない人たちによる嫌がらせだが、何度も言うように真澄は周囲に興味がないので他人の顔など覚えていない。


困ったな、と思いはしたものの、嫌がらせならこのまま無反応でいればすぐに飽きてやめるだろうと考え、真澄は緩く息をついた。





ーーそれを見つけたのは偶然だった。



仕事のない休日に、散らかった部屋を掃除しようと掃除機を引っ張り出して、隅から隅まで綺麗にした。掃除機をかけた後は雑巾で床を磨く。


そして、ベッドの下に潜り込んで床を拭いていたとき、それを見つけた。



家具の配置上、ベッドに遮られる形になって使用していないコンセント。


使っていないはずのそれに見覚えのないプラグが刺さっていた。



なんだこれ、とは思わなかった。

直感でピンときた。盗聴器だと。



これはいよいよまずい状況だと思い、真澄は他に盗聴器のような物がないか部屋中を捜索した。


見つけられたのはそのプラグの盗聴器と、猫のぬいぐるみの左目に埋め込まれたカメラレンズのようなものだけ。

後者を見つけたのは奇跡に近い。


盗撮用のカメラだろうか、と興味深くぬいぐるみを観察したが、はたと気づく。



真澄のこの姿を見られているのでは、と。



これが本当にカメラレンズなら、真澄が盗聴器の類を探す様子も全て筒抜けなのでは、と。








真澄が硬直するのと玄関の扉が開いたのは、ほぼ同時だった。







すみません、初っ端から一話完結しませんでした。

藍原真澄は無関心タイプですが、自分で設定しておきながら書きづらいです。普通の子にすればよかったと只今後悔しております。

読者様の想像とかなり違う内容、あるいは、つまらない内容になるかもしれませんがご了承ください。

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