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フルメタル・ドラグーン  作者: 長物守
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第04話「ファースト・ストライク」

・今までのあらすじ


 左腕も、尊敬する先輩騎士も……地位も栄誉も全てを等しく失った少年、カイム。だが、目の前に現れた謎の少女イデヤは、再び戦場へと彼をいざなう! そのための力、それは屍棺機龍。人の姿をした、巨大な龍だ。そして、かつての天才竜騎士は立ち上がる……亡くした者の守りたかった全てを守るため!

 カイムの肌が興奮に泡立(あわだ)つ。

 命以外の全てが死んだ、そう思える現実が(ぬぐ)い去られていった。

 眼の前に今、巨大な竜騎士(ドラグーン)……屍棺機龍(ドラグレイヴ)がうずくまっていた。

 そして、その胸が開くや、一人の少女が現れたのだ。


「ちょっと、イデヤ! アンタ、なにしてんのよ。さっさと壱號騎(いちごうき)に戻りなさいよ」


 まるで下着姿のような、(きわ)どい露出のスーツを着た少女。

 つい、カイムは先程のイデヤの手触りを思い出してしまう。身を乗り出してこちらを見下ろしている少女は、イデヤとは対象的に自己主張の激しいスタイルだった。

 そして、その顔……髪型こそ違うが、その顔立ちに驚きの声がついて出た。


「セシリア先輩っ!? ……ど、どうして先輩が」

「あん? ……そう、アンタがカイム・セレマンね」


 そう、そこには死んだ(はず)のセシリアの顔があった。

 年上のセシリアよりは、若干幼く見えるその顔は、眉根(まゆね)を寄せて不快感を表情に(にじ)ませる。落ち着いて見れば、酷似(こくじ)してはいるものの違う人間だ。


 そして、その奇妙ないでたちにもカイムは気付く。

 少女は、()()()()()()()()()()()()()()()

 その両足が、奇妙な機器を通して屍棺機龍に(つな)がっているのである。


「ま、いいわ。それより、イデヤ! 敵が来たわ! やるんでしょ?」

「当然です」

「なら、コイツ借りてもいい? ほらっ、アンタ! こっち来なさいよ」


 ツインテールの金髪を揺らして、少女が手を伸べてきた。

 突然のことで、説明を求めてカイムはイデヤを振り返る。

 無表情を凍らせたまま、彼女は淡々(たんたん)と説明してくれた。


「彼女は、アディータ・アーベント。私たちの仲間です」

「アーベント、だって? じゃ、じゃあ」

「セシリア・アーベントの妹ということになりますね。では、私は自分の騎体(きたい)に戻ります。貴方(あなた)を本部へ連れて行く予定でしたが……敵襲とあらば、出撃せねばなりませんので」

「出撃って……まさか、これで? えっと、屍棺機龍で!?」

「ええ」


 周囲では、避難する市民たちの何割かが脚を止めていた。

 あまりにも異様な屍棺機龍に、驚きの目を向けている。

 だが、一番(おどろ)いているのはカイムだ。


 あの日、突然終わってしまったセシリアとの日常が、初めて思い出された。毎日仲良く竜の世話をして、なにかとセシリアに世話を焼かれる日々だった。戦いが続く中で、その合間の平和を共に過ごした。

 彼女の死もろとも、心の奥底に沈めていた想いが溢れ出す。


「あっ、あの、アディータさん。僕は――ッグ!?」


 不意に、屍棺機龍の腕がグン! と動いた。

 そして、あの日のようにカイムを鷲掴(わしづか)みにする。

 そのままカイムは、アディータが収まる胸の中の小部屋へと押し込まれた。本当に狭くて、真ん中に固定されているアディータに密着してしまう。


「じゃ、イデヤ。またあとで」

「あ、ちょっと待っ――イデヤさん、これはどういう」

「アディータは貴方に話があるようです、カイム。後ほど本部でお会いしましょう」


 それだけ言うと、イデヤは地を蹴った。

 常人ならざる速さで、義足を鳴らして走り去ってしまう。

 そして、微動と共に立ち上がる屍棺機龍は、目の前のハッチを閉じてしまった。アディータと二人きり、カイムは屍棺機龍の中に密封されてしまったようだ。

 一瞬の暗闇が襲い、やがて前面がぼんやりと光り出す。


「あれ、外が見える……透けてる、訳じゃない。これは」

「ちょっと! どこ触ってんのよ。もっと(すみ)によりなさい」

「え、いや、狭くて……グガッ!」


 思いっきり肘鉄(ひじてつ)脇腹(わきばら)に喰らった。

 そして、ゆっくりと視界が広がってゆく。この屍棺機龍が、背の翼を羽撃(はばた)かせて飛び上がったのだ。奇妙な浮遊感は、竜に乗っている時とは全く異なる。

 アディータは、自分が固定された座席で左右のレバーを握っていた。

 改めて見ると、やはり椅子から生えてるような姿勢である。


「揺れるわよ、しっかり掴まってて」

「さっきは触るなって」

「アタシに触るなって意味! もうっ、どうしてお姉ちゃんはこんなのが」


 屍棺機龍はあっという間に、風になる。

 今までいた首都、リヴァリース皇国(こうこく)の中心部である浮島が小さくなり、そして点となって消えた。先程まで晴れていた空は、徐々に(くも)り始めている。

 尾をゆるゆると引いて、屍棺機龍は速度を上げた。

 とりあえず、狭い操縦席の隅でカイムは身体を踏ん張る。

 そう、操縦席……ここは屍棺機龍の心臓部なのだ。


「チッ、雲が出てきたわね。敵はどこ? 近衛(このえ)の連中が向かった先……いたっ!」


 目の前のハッチは、内側が透けて見えるようだ。そして、気付く……これは屍棺機龍の見ている景色なのだ。なんらかの技術で、屍棺機龍の()に移るものをここへ投影しているらしい。

 その視界に、敵の姿が映る。

 人類の天敵、メタドロンの大群だ。


 改めてカイムは驚く。こんなにもまとまった数のメタドロンが、この首都へ……本来はありえない。幾重(いくえ)にも張り巡らされた防空圏(ぼうくうけん)があり、周囲の島々には軍事拠点として整備された要塞島(ようさいとう)もあるのだ。


「どうして、こんな数のメタドロンが」

「エクスシア級と、少しだけどスローンズ級がいるわね。見てなさい……お姉ちゃんの(かたき)っ! 殲滅(せんめつ)してあげるっ!」


 アディータの美貌(びぼう)が、怒りの炎で燃え上がる。

 イデヤと違って、激情がすぐ顔に出る(たち)のようで、それを隠そうともしない。この場にカイムが一緒であることすら、彼女は忘れているかのように見えた。

 そして、アディータはレバーに並ぶボタンを左右の手と指で(かな)でてゆく。

 この人型の兵器を、レバーとボタンの操作だけで動かしているのか?

 だが、すぐに戦闘空域へと突入すれば、考える余裕すらなくなった。


「うわっ、とと……本当に揺れる!」

「黙ってて!」


 竜の背でも、こうは揺れない。

 密封されて風と気流に守られていても、屍棺機龍の乗り心地は率直に言って最悪だ。アディータは容赦なく愛騎(あいき)を振り回し、世界は何度も上下左右を入れ替え続けた。

 目まぐるしい動きで、屍棺機龍はメタドロンの攻撃を避け続ける。


「そんなヘナチョコ弾っ、アタシの弐號騎(にごうき)に当たるもんですかっ! ま、当たってもそんな口径じゃ装甲は抜けないけど」

「エクスシア級の放つ弾丸を、避けてる? そんなことが」

雑魚(ざこ)は近衛や他の竜騎士にくれてやるわ……そこっ!」


 一気に加速する屍棺機龍が、周囲にまとわりつくエクスシア級を振り切る。

 メタドロンには何種類かの個体が存在し、太古の聖典にある天使の名が割り振られている。エクスシア級はいわば、最も数が多い雑兵(ぞうひょう)のようなものだ。高速で移動する小型のメタドロンで、鋼の(つぶて)を連続で撃ち出してくる。完全武装の竜騎士とて、たやすく(はち)の巣になってしまう威力だ。

 なにより、エクスシア級は翼自体が刃になっている。直接体当たりで攻撃してくることも多いいし、時にはそのまま自爆することさえあるのだ。


「スローンズ級、もらったわ!」


 屍棺機龍が弓を構えて、腰の矢筒(やづつ)へ手を伸ばす。

 複雑な動きで矢を(つが)えて、(たくま)しい腕が(げん)を引き(しぼ)った。

 一体どうやって、この傀儡(くぐつ)にも等しい巨躯(きょく)を操っているのか。まるで、小さい頃に見た人形劇だ。無数の糸で細やかな動きを見せた、操り人形(マリオネット)のそれに似ている。

 だが、兵器である屍棺機龍が発する禍々(まがまが)しさは、この操縦席でも十分にわかった。

 そして、空気を(うな)らせ矢が放たれる。

 矢自体が、竜騎士の手にする(やり)より何倍も長くて太い。


「当たった! 二の矢を!」


 ガン! と、金属を穿(うが)(つらぬ)く音がここまで響いた。

 一回り大きく翼の長いスローンズ級は、空を飛ぶブーメランのような三角形だ。回転して推力を生み出す尾羽(おばね)も、大きいものが複数ついている。

 その中心に、アディータの放った矢が突き立った。

 瞬間、スローンズ級が身を(ひるがえ)す。


「逃げます、アディータさんっ! スローンズ級は爆弾を腹に抱えてる、それをばらまかれたら」

「耳元で叫ばないで! 絶対に逃さないから。よく見てなさい、カイム! ……そうよ、見てて。目を(そら)したら許さないから」

「えっ?」

「お姉ちゃんは死んで、アンタだけが戻ってきた! だから、見なさい……お姉ちゃんに見せられなかった、このアタシの活躍をっ!」


 (たけ)るアディータが、瞳の輝きをギラつかせる。

 降下してゆくスローンズ級から、無数の火線が舞い上がった。背中に並んだ無数の(とげ)から、鋭い射撃が幾重(いくえ)にも弾幕を張る。

 その内側へとかいくぐって飛ぶと、アディータは続けて矢を放った。

 二発、三発と長大な矢が敵をえぐる。

 興奮に顔を上気させ、アディータは攻撃と回避を完璧にこなしていた。

 だが、カイムの背筋を悪寒(おかん)が走る。

 戦場で何度も感じてきた、それは殺気だ。


「アディータさん、後ろですっ! 背後に!」

「知ってるわよ! ……え? 後ろ? ――キャアアアッ!」


 ひときわ激しく、操縦席が揺れた。

 なにかが背後から屍棺機龍に接触したのだ。

 赤いランプが光を走らせ、警報音が耳に突き刺さる。そして、カイムは見た。一瞬だけ暗転した視界が回復すると……そこには、(ひたい)から血を流すアディータがいた。

 意識を失っているらしく、屍棺機龍が急激に失速、そのまま落下を始める。

 咄嗟(とっさ)にカイムは身を乗り出して、アディータにのしかかるように手を伸ばすのだった。

この小説は、現代日本でドラゴンに家族を奪われた少年がダンジョンに潜り復習を果たす物語『東京ドラゴンスレイヤー』の提供でお送りします。


東京ドラゴンスレイヤー:パクリ田 盗作著

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888763311

我が名は園田! 園田善治! 我は竜を狩る虎の牙なりっ!!




・次回予告


 突然の首都空襲…それは、この千年で初めての衝撃。

 だが、カイムもまた目の前の少女にまだ驚きが隠せない。

 アディータ、彼女はやはりセシリアの血縁者なのか?

 そして、彼女を縛るように胸に収める、屍棺機龍とは?

 全ての答えは今、戦場の空に!


 次回、第05話「絶吼の狂戦士」


 ――汝、人を象る龍となれ!

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