表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フルメタル・ドラグーン  作者: 長物守
28/33

第28話「合体、神話の力」

・今までのあらすじ


 竜の死骸とメタドロンの技術が、異形の人型兵器を生み出した。

 その名は屍棺機龍…カイム少年は、その乗り手として、仲間と共に戦う。

 だが、謎の敵アダムとの交戦中に遭難、仲間とはぐれてしまう。

 一緒だったイデヤの秘密、そして暴かれる世界の真実……

 全てを裏付けるように、最後の戦いで死んだはずの声が残酷に響く!

 パイルザンバーでの斬撃、そして内部を一気に衝撃で貫く(ステーク)……だが、イヴは止まらない。屍棺機龍(ドラグレイヴ)の何倍もある巨躯は、明らかに加速していた。

 敵の質量に対して、パイルザンバーでも攻撃が(しん)まで届かないのだ。

 それを察した時には、カイムはすぐさま剣を引く。


「この気配っ! しまった、合流させてしまった!?」


 殺気が電流となって背筋を(つらぬ)く。

 神経が繋がっているので、刺すような気配が伝わってきた。

 咄嗟(とっさ)にその場を離れれば、イヴの装甲が銃弾を歌う。

 アダムが変形するや、こちらへ両腕の銃口を向けてくる。

 だが、その背後に狂乱の堕天使(ルシファー)が浮かび上がった。


『カイムッ、邪魔っ! これでっ、死ねええええええええっ!』


 アダムは即座に変形して宙へと逃げた。

 その影を、真横に()ぎ払う刃。

 前のめりに四つん()いになりながら、すぐにイデヤの壱號騎(いちごうき)は空へと戻る。

 同時にカイムも、参號騎(さんごうき)でそのあとを追った。

 残念ながら、今の兵装ではアダムはともかく、イヴを破壊することができない。ブレイズシールドも試してみたいが、(まと)が大きすぎるのだ。

 不意に声が走ったのは、そんな時だった。


『カイム……どうして私と戦うの? そんな必要、ないよね?』


 セシリアの声だ。

 イデヤの動きがかすかに鈍る。それは迷いと躊躇(ちゅうちょ)だ。助けると決めた、そのために努力すると。戦いの優先順位、達成すべき任務は皆が頭の片隅に入れている。

 だが、まだなにもできていない。

 救出を試みることすら、不可能な戦いが続いていたのだ。


「やっぱり、セシリア先輩なんですか!」

『そうよ……私は今、君たちがアダムと呼ぶメタドロンの中にいるの』

「自分で出られそうですか? 無理なら外から僕たちが!」

『外へ出る? どうして? ……ねえ、カイム。メタドロンは何故(なぜ)存在するのかしら』


 突然の問答だった。

 信じられない……セシリアは聡明(そうめい)で利発な女性だったが、理屈っぽいことや哲学めいたことは口にしない。どちらかと言えば、口より先に手足の出るところがある。

 だが、今のセシリアはまるで別人だ。

 そのことに驚いていると、(のど)を鳴らしてセシリアが笑う。


『ククッ! クッ! ……おかしいわね、カイム。君、一番よく知ってるじゃない』

「……メタドロンの目的、それは……人類を滅ぼすこと」

『そう、正解! 千年前、実際にそれを実行して……中途半端に失敗したの』


 やはり、イデヤと二人切りで遭難した夜の話……メルキオールなる人物の語ったことは本当だったのか? そして何故、セシリアがそれを知っているのか。

 だが、カイムの中で疑念は結論を得つつある。

 それは悲しく、受け止めがたい結末だ。


「セシリア先輩、僕たちはそのアダムを破壊しなければならない。そうだよね、イデヤッ!」

『殺す! 殺す! 殺し殺してやるうううううううっ!』


 死神の一撃がアダムを踊らせる。

 だが、セシリアは笑っていた。

 そして、その声が徐々に本来の彼女ではなくなってゆく。いつでも快活で闊達(かったつ)、明るく元気な女性だったのに……今は、邪悪な(たくら)みを含んだかのように声が下卑(げび)て響いた。


『私たちは千年前、人類剿滅(おうめつ)のために地球を破壊した。だって、そうでしょう? 世界中の争いをなくせと命令されていたんですもの。元を叩かなきゃ……フフフッ!』

「なんてことを……! やっぱりお前はセシリア先輩じゃない!」

『どうかしら。君は助けられたけど、そこの娘……イデヤは私を助けてくれなかったわ』

「あの戦闘のさなか、僕は幸運だった! イデヤを責める筋じゃないっ!」


 そのイデヤだが、もはや言葉にならない雄叫びを張り上げている。

 だが、殺意を向けられながらも、セシリアの声は落ち着いていた。


『そうそう、イデヤ。大変でしょう? 神経接続係数の最も高い、最初のモルモット……見えるでしょう? あの時の景色が。わかるわよね? 星断戦(プラネット・ゼロ)のあと、人類がなにを選択したか』

『う、うう、うあああああああああっ! 黙れ、黙れえええええええっ!』


 それはもう、カイムも知っている。

 脱出船団がどうとか言っていたし、実際に巨大過ぎる船を見た。恐らく、生き残った人類は安全な場所へと旅立ったのだ。

 だが、それでは辻褄(つじつま)があわない。

 何故なら、カイムたち人間は今も、この空の片隅(かたすみ)に生きているからだ。

 だが、カイムの胸の内を見透かすようにセシリアの声が笑う。

 (すで)にもう、セシリアと思うのをやめたカイムに悪意が向けられる。


『カイム、君はもう見てる(はず)だぞ? 未来ある者は逃げ、先の短いものは……フフッ!』

「あ……浮島(うきじま)と、同じ……そうか! じゃあ、残った人間がいたんだ。それが、僕たちの父祖(ふそ)、先祖なのか!」

『それでは半分しかマルをあげられないわね。ほら、目の前に沢山いるじゃない? 限られた船を(ゆず)って残った、旧世紀の愚かな人類が』


 そう言って、アダムが一瞬消えた。

 今までに見せたことがないスピードで、カイムも驚きに目を見張る。

 そして、悲鳴が響いた。

 近くで戦っていた竜騎士(ドラグーン)が、鮮血を吹き出し圧縮されていた。そして、無残にも肉塊となって竜から引き剥がされる。しかし、アダムの凶行はそれで終わらなかった。

 激昂(げきこう)()(すさ)ぶ竜の、必殺のブレスを容易(たやす)く回避する。

 そのまま、恐るべきスピードで竜の首根っこを鷲掴(わしづか)みに吊し上げた。


『ほら……まだわからないかな? 君のそのガラクタ、たしか……屍棺機龍。君たち程度の文明で何故、神経接続制御なんてできるのかな。こうは考えたこと、ない?』


 ――()()()()()()()()()

 確かにセシリアはそう言った。

 我が耳を疑ったが、言われた言葉の節々が真実を裏付けている。

 いまだ満足に銃も作れない、旧世紀の遺物を復元できない。

 そんな人類が、こうして人型の巨大な兵器を生み出した。

 考えてみれば不自然だった。


『竜と人の遺伝子は、全く同じだっていうのは……まだ知らないよね? そう、この星に……地球の残骸に残った者たちは、自らを遺伝子操作で竜へと変えた。竜とは、ナノマシンや重力制御を可能にした、人間の成れの果てよ』

「じゃ、じゃあ、僕たちは。僕は、親を知らない! でも、誰かと誰かに産んでもらった! みんなそうだろ!」

『地球は崩壊して、大気も地磁気も消え失せた。それを竜たちが生きられる環境に整えて、人間を解き放ったの。そう――』


 アダムの瞳が真っ赤に光る。

 その双眸(そうぼう)の輝きに呼応するように、イヴが真下から浮かび上がってきた。その双胴(そうどう)の巨大な躯体(くたい)が、複雑な変形で人型になってゆく。人が収まる形に中央を(くぼ)ませながら、突然目の前に巨神が現れたのだ。

 そして、その中心にアダムが吸い込まれる。

 アダムとイヴは、完全に合体してしまった。

 カイムたちが見上げる程に巨大な、鋼鉄の戦神が降臨した瞬間だった。


『私たちが遺伝子調整した、優良種とでも言うべき人間……本来あるべき穏やかで優しい人類を、竜は奪った! 私たちが駆逐した汚い人類じゃない、完璧に造られた人類だったのに!』

「なん……だと……」

『フフ、だからやり直しなの。竜に奪われた人類は、再び闘争本能を先鋭化させた失敗作と成り果てたわ。だから、また最初からやり直しなの!』


 その瞬間だった。

 光条が一筋走って、アダムとイヴの総体に命中した。

 だが、眩い光が弾けるだけで、霧散してしまう。

 そして、絶叫が響いた。


『それ以上、お姉ちゃんの声で喋るなっての! なに、効かないじゃん……これはもういらない! カイム、立て直して! イデヤも!』


 アディータの弐號騎(にごうき)だ。

 先程奪った長銃(ライフル)を捨てるや、彼女は両手で構えたボウガンを連射する。

 実体弾である矢が何本も、巨大な禍神(マガツガミ)の装甲に突き立つ。

 だが、貫通しないどころか、装甲さえ抜くことができない。

 そして、既に声はセシリアの全てを脱ぎ捨てていた。


『無駄よ、無駄っ! この強攻形態……そうね、アダムとイヴなら、ええ……このエデンは、お前たち程度の文明では破壊できない!』


 アダムとイヴ、交わり混じりて覇を歌う。

 その姿をセシリアは、エデンと言った。

 確か、旧世紀の聖典に出てくる楽園の名だ。アダムもイヴも、最初はその楽園に暮らしていたが、悪魔の王にそそのかされて罪を知り、故に追放されたのだ。

 正に、原初の男女が一つになることで生まれた、無垢なる破壊の申し子。

 エデンはゆっくりと周囲を睥睨し、アダムのままだった頭部が兜で覆われてゆく。


「……駄目、なのか? いや……まだ勝機はある!」

『無駄! 無意味! 二度目の人類剿滅は、以前より容易く達成できよう。次は竜もいない世界に、真に有料なる人類を――ッ!?』


 問答無用で銃爪が引かれた。

 見れば、背負った中折式の88mm(メリル)砲を展開して、アディータが撃ったのだ。

 やはり、以前と同様で貫通させることはできない。

 だが、僅かにエデンの装甲がひしゃげて陥没した。


『うっさいわね! お姉ちゃんは死んだ! 今、アタシの中で死んだの! ……なら、戦えるでしょ。ねえ、カイムッ! イデヤも!』


 その声に応えるように、漆黒の騎体がゆらりと舞い上がる。各所に配した赤がまるで、鮮血のようだ。大鎌を構えたイデヤの壱號騎は既に、絶叫を張り上げる狂戦士そのものとなってエデンに(おど)りかかるのだった。

この小説は、機械の鼓動を秘めて今、鋼鉄の怪獣が目を覚ます!『甲王牙 ーKO-GAー』の提供でお送りします。


甲王牙 ーKO-GAー:王叡知舞奈須著

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882739477

その異形、静穏を願う守護者也




・次回予告


 世界の真実よりも、過去の過ちよりも……今!

 この今を戦うために、少年は命を燃やす!

 その先にあるのは、勝利か、それとも……!?

 最終決戦、果たして人類に未来はあるのか!


 次回、第29話「楽園にそびえし絶望の城」


 ――汝、人を象る龍となれ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ