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フルメタル・ドラグーン  作者: 長物守
23/33

第23話「逆襲のアダム」

・今までのあらすじ


 屍棺機龍の力を得て、再び戦いを選んだ少年、カイム。

 彼は仲間たちと共に、謎の敵メタドロンへ反撃に出る。

 だが、そのための船旅のさなか、偶発的な戦闘で苦戦。

 仲間の少女イデヤを助けるため、誰もが見知らぬ空の底へ落ちた。

 そこに待っていたのは、旧世紀と呼ばれる千年前の真実だった!

 カイムは浅い眠りの中、覚醒(かくせい)を繰り返す。

 どうにも寝付けず、寝入っても寝た気がしない。

 ()()()()()()()

 毛布が二枚しかないため、二人で一緒に寝ているのだ。下方を硬い床に敷き、もう片方を二人でかけて横になる。すぐ(はだ)の触れる距離に、年頃の女の子がいるのだ。孤児院だってそうだったが、訳が違う。

 イデヤは仲間で、同じ元竜騎士(ドラグーン)で、決して抵抗できない乙女なのだ。

 だが、ようやく睡魔が誘惑してきた、その時だった。


「カイム、起きてください」


 すぐ耳元で、(ささや)かれた。

 吐息(といき)がこそばゆい。

 だが、ようやく眠りかけていたカイムは、返事を躊躇(ためら)った。

 瞬間、鼻に小さな痛みが走る。


「痛っ! ……イデヤ? なに、もう」

「そこまで痛くはない(はず)です。本気で()んではいません」

「……普通は噛みつかないよ」

「私も寝過ごした時など、よくアモンに鼻を齧られたものです」


 アモンとは、以前竜騎士だったイデヤの相棒である。

 思い出したが、確かに待機中や移動時など、竜の(そば)で休むことがあった。そういう時、カイムのジークはグイグイと鼻を押し付けてくる。一度、それでも起きぬから、ゴロゴロと丸太のように転がされ、航竜母艦(ドラゴンキャリアー)のデッキから落ちそうになったことがあるくらいだ。

 そんなことを思い出しつつ、眠い目を(こす)ってカイムは立ち上がった。

 すぐ側では、器用に身を(よじ)って腹筋でイデヤも上体を起こした。


「カイム、敵です。聴こえませんか? 風の中に、なにかが飛んでます。この独特の対流を生み出す翼は、もしや」

「……アダム、か? ここが見つかったのか!」

「わかりません。ただ、急いで騎体(きたい)に戻ろうと思います。あれを破壊されてはいけません」

「わかった、緊急事態ってことだね。じゃあ、ゴメン!」

「ほへ? あっ!」


 毛布をどけて、イデヤを両手で抱き上げる。

 サバイバルキット一式は時間がないから置いていく。必要になったら、また取りに来ればいいのだ。すぐに全速力で、カイムは走り出した。

 行きと違って、戻るのは手早い。

 道は登りだが、着陸した場所までは迷わず行ける。

 最初こそアレコレなにかを言っていたが、イデヤはおとなしくなってしまった。


「今は僕にもはっきり聴こえる。この音、間違いない!」


 転がり込むように、開けた空間に出る。

 その瞬間、足元を逆さまになった文字が通り過ぎた。

 それはどうやら、だだっ広いこのフロアが格納庫だということを告げている。やはり、普通の船ではなかったようだ。軍艦かもしれない。

 だが、それも今はどうでもいいことだった。


「イデヤ、壱號騎(いちごうき)は?」

「飛べませんが、戦闘に問題はありません。……空中戦ができない時点で、戦力とは言えませんが」

「僕も駄目なんだ。左の翼をやられてる」


 ひょい、とイデヤを持ち替えて、肩へと小麦袋のように担ぐ。

 酷く軽い彼女は「ひあっ!」と(みょう)な声をあげた。

 そのまま、まずは片膝を突く壱號騎の操縦席へと向かう。片手でよじ登って全身を突っ張らせると、そっと座席にイデヤを押し込む。座席というよりは、まるでパーツをはめ込むような感覚だった。

 ハーネスを固定して、イデヤの両手両足を屍棺機龍(ドラグレイヴ)へ接続する。


「ところで、イデヤの壱號騎、やられてるのは右の翼みたいだ。だから、いいことを考えたんだけど……イデヤ? どうしたの、痛む? すこしハーネスを(ゆる)めようか?」


 脱出のアイディアが浮かんだ、その時だった。

 パズルの最後のピースのように、イデヤが屍棺機龍の一部になる。

 瞬間、彼女は苦悶(くもん)(つぶ)った目を見開いた。


「う、ああ……また、まただ……見える、なに、あれは……あああああああっ!」

「イデヤッ!」

「殺してやるっ! 早く! すぐに、急いで! 戦わなきゃ……倒さなきゃ、殺さなきゃ!」


 ガクン! と壱號騎が揺れた。

 まただ。

 また、イデヤが暴走を始めた。

 そして、奇妙な言葉の断片を拾った。

 心当たりがあって、受け身を取って転がりながらも、立ち上がると同時にカイムは(つぶや)く。


「見える、だって? もしかして……まさか!」


 だが、思考を(めぐ)らせている暇はなかった。

 カイムたちが落ちてきた穴から今、両手に剣を持った巨躯(きょく)が舞い降りる。

 それは、人型に変形したメタドロン、アダムだ。

 急いでカイムは、自分の参號騎(さんごうき)へと駆け上がる。

 その時にはもう、大鎌(デスサイズ)(ひるがえ)して壱號騎が走り出していた。


『うああああああああっ! 死ねっ、死ねっ! 壊れ死ねぇ! またアレを見せるのか! ああっ! あ、ああ……ああああああっ!』


 まるで泣き(なげ)くような絶叫だ。

 イデヤの壱號騎が、アダムへと(おど)りかかる。着地したアダムは、その薙ぎ払うような斬撃を両手の剣で受け止めた。刃と刃がクロスして、イデヤの一撃を(はさ)んで(はば)む。

 ようやく操縦席で参號騎と繋がったカイムも、急いで剣と盾を構えた。

 だが、次の瞬間……カイムは突然のことで、固まった。

 ありえない、それは絶対に聴こえない(はず)の、声。

 最後に聴いた時と同じ、澄んで張りのある声だった。


「そんな、まさか……いや、でも! 今、確かにっ!」


 イデヤも聴こえたようで、武器を引いて一歩下がる。

 そして、再度その声がゆっくりとカイムに呼びかけてくる。


『もう、やめましょう? ね、カイム。そっちのキミも』

「嘘だ……()()()()()()?」


 そう、少女の声だ。

 年上で、姉貴面(あねきづら)して世話をやいてくる女性だった。

 それは、間違いなくセシリア・アーベントの声。

 間違えない、間違いようもないくらいに鼓膜(こまく)に染み付いている。どんな小さな声でも、カイムはセシリアの声に言葉と意思とを拾うだろう。

 今、アダムからセシリアが語りかけていた。


『私たちが戦うことに意味はないわ、カイム。お願い、話を聞いて。その呪われた兵器から、降りて』

「……ど、どうして。でも、確かにアダムからは人の気配を……ほんの(わず)かに、感じていた。それって、もしかして」

『そうよ、私が乗ってるの。だから、キミとは戦いたくないわ。ホントだぞ?』


 どこかノリが軽くて、強い意志を秘めた声だ。

 イデヤも混乱しているのか、いつもの鋭い動きが鳴りを(ひそ)めている。

 飛べない二騎の屍棺機龍は、その歩みさえも止められてしまったのだった。


『キミたちももう、気付いているんでしょう? そんなものに乗っていると、どうなるか』

「えっ? セシリア先輩、それって……いや、でも! セシリア先輩なら、姿を見せてくださいよ! 僕、ずっとお礼が言いたくて。あの時、僕を助けてくれて!」


 無防備にも、カイムは操縦席のハッチを解き放った。

 だが、剣を構えたままアダムは動かない。

 そして、絶叫が振ってきたのはそんな時だった。


『見つけたわっ! って、アダムも一緒!? ならっ、好都合ね!』


 アディータの声だ。

 同時に、無数の弾丸が雨と注ぐ。

 アダムは最小限の動きで、ゆらゆらと揺れるように攻撃を避けた。そして、空からズシャリと弐號騎(にごうき)が降りてくる。その手が、握っていたボウガンを投げ捨てた。

 同時に、腰の後部にマウントされた新しい武器を引っ張り出す。


『カイム、イデヤ! 無事ね! ……二人切りだからって、おかしいことになってないでしょうね』

「い、いやっ! なな、なんにもないって、それよりアダムは――」

『あとでキッチリ! ねっちり! たっぷり! 説明してもらうんだから! ン、でえええっ! コイツの出番ねっ!』


 弐號騎が両手で、中折式(なかおれしき)の巨大な大砲を展開した。

 それは、戦闘艦(コルベット)などに搭載するもので、今の人類がかろうじて作れる火器の一つだ。重火器の(たぐい)は極めて少なく、旧世紀の発掘品は全く修復できない。そして、マスケット銃が徐々に普及しつつある中、艦船の大砲は優先的に開発が急がれていた。

 (ふね)からの砲撃は、メタドロンには基本的に当たらない。

 だが、屍棺機龍の反応速度で狙いをつければ……?


()らってぇ、寝てろおおおおっ!』

「待って、アディ! 駄目だ、セシリア先輩がっ!」


 轟音が響いた。

 同時に、床を(つか)む弐號騎の両脚が大きく後ずさる。

 火を噴く巨大な大砲は、流線型の砲弾を撃ち出した。丸い砲弾を放物線状に打ち出す、古いタイプの砲ではない。竜騎士だったカイムには、流れる空気の動きと音とで、砲弾の速さと形をはっきり感じ取っていた。

 そして、アダムは直撃を受けてゆらりと揺れる。

 その時にはもう、カイムはハッチを閉じて弐號騎に駆け寄っていた。


『ちょっとなによ、邪魔! カイム、なにやってんのよ!』

「あれにセシリア先輩が乗ってる! アディ、君のお姉さんじゃないか!」

『はぁ? 寝ぼけてんの? ……お姉ちゃんは、死んだの。アタシを残して、死んじゃったの!』

「そのセシリア先輩が、生きてたんだよ! もっとだから、言葉を」


 だが、アダムはひしゃげた胸の辺りを気にするように、そっと手で触れ空を見上げた。そのまま宙に浮くと、目の前で飛行形態へ変形、飛び去ってしまう。

 呆然(ぼうぜん)とするカイムは、自分たちが助かったことすら忘れてしまうのだった。

この小説は、遥かな未来で地球の少年と火星の少女が巡り会い、太陽系の星々の運命が巡り回る『オービタルエリス』の提供でお送りします。


オービタルエリス:jukaito著

https://ncode.syosetu.com/n6181df/

宇宙の神話が動き出す……超本格派SF、少年少女が手にする力の意味とは!?




・次回予告


 どうにかカイムは、イデヤと無事に母艦に帰投する。

 だが、張り詰めた緊張が解けたのか、イデヤは倒れた。

 彼女に代わってカイムは、総司令アッシュへと報告する。

 そして、断片的な真実がいよいよ姿を見せ始めた!?


 次回、第24話「帰還、報告、そしてまた」


 ――汝、人を象る龍となれ!

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