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フルメタル・ドラグーン  作者: 長物守
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第19話「旧世紀との邂逅」

・今までのあらすじ


 右腕を失うも、セシリアの命と引き換えに生きながらえた少年、カイム。

 竜騎士として戦えなくなった彼は、新たな力を得て戦場に戻った。

 その名は、屍棺機龍……竜の遺骸とメタドロンの技術を使った機動兵器だ。

 カイムたちは防戦一方から一転、メタドロンへの追撃戦をしかける。

 謎の変形型メタドロン、アダムを速やかに撃墜せよ!

 その敵の名は、アダム。

 明らかに他のメタドロンとは違う、飛行形態から変形する強敵である。瞬時に人の姿に形を変えて、恐るべき戦闘力を発揮する。

 屍棺機龍(ドラグレイヴ)は、このアダムを倒すために造られた。

 アダムより先に、この人型機動兵器を実戦配備し、数を揃える。

 (すで)に戦いは、次のステージを(にら)んで競い合う段階に達していた。

 現状では、アダムが大量に発生した場合、竜騎兵団(りゅうきへいだん)では対処できないだろう。

 あのイデヤでさえ、目の前で不意を()かれ墜落してしまったのだ。


「クッ、イデヤを! ――その手はもう、見切ってる!」


 カイムの絶叫は、背後に飛来する気配を拾っていた。

 まただ。

 また、アダムに武器を運んでくる飛翔体(ひしょうたい)が飛んできた。

 だが、カイムはそれを学習し終えている。前回既に、手の内を見せてもらった。ならば対処も可能だ。

 愛騎(あいき)ジークヒルトに握らせたパイルザンバーを構え、大きく騎体を(ひるがえ)す。

 アダムに背を向ける格好になったが、構わない。


「アディ! 頼むっ!」

『わかってるわよ! 人使いが荒いわねっ、もう!』


 すぐ背後に、アダムの凶刃(きょうじん)が迫る。

 その姿は、両手に剣を握った処刑人だ。既に天使ではなく、受肉した人間同様の殺意を感じる。

 そう、生々しいまでの敵意、鋭く尖った負の感情をカイムは感じていた。

 同時に、アディータの援護射撃がアダムを引き剥がしてくれる。

 カイムは迷わず、アダムへ武器を運ぶ死の鳥を撃墜した。

 爆発の中から抜きん出て、すぐに首を(めぐ)らせる。

 (はる)か下の方へと、イデヤの壱號騎(いちごうき)()ちてゆくのが見えた。


「イデヤッ! 今、行くっ!」


 だが、行く手をアダムが遮った。

 アディータのボウガンが放つ矢を、アダムは容易(たやす)く切り払ってゆく。両手がありえない角度で回転して、握る剣は円を描いて盾になる。

 アダムの頭部に光る双眸(そうぼう)が、妖しく真っ赤に輝いていた。

 たしかに殺気を感じる。

 まさか、()()()()()()()()()()()()()()

 それはわからない。

 確かめる術がないし、鹵獲(ろかく)を考えるほど余裕がある状況ではなかった。


「クソッ、どいてくれ! でなきゃ、道をこじ開ける!」


 剣と剣とが、激しくぶつかる。

 暗雲垂れ込める空の中、無数のメタドロンに囲まれた戦場。

 だが、不思議と周囲のエクスシア級などは攻撃をしかけてこない。この距離では、アダムにも当たってしまうからだろう。ならば、決して離れぬことだ。

 そうは思っても、鍔迫(つばぜ)り合う中でカイムは()れてゆく。

 撃墜されたイデヤは、もう見えなくなっていた。


「そこを、どけっ! そろそろ見飽きてるっ! お前のその、太刀筋(たちすじ)っ!」


 先日と違って、今日のアダムは二刀流だ。

 だが、多彩に見えて攻撃にはパターンがあるようにも思える。そして、それは多くはない。こちらを狙って繰り出される全てが、単調とさえ言えるほどに正確過ぎるのだ。

 確実に操縦席を狙ってくる。

 胸部に守りを集中させることで、かなり攻撃の(まと)を絞らせることができた。

 そして、左右の連撃をかいくぐるように、カイムは必殺の突きを見舞う。

 鋭い刺突(しとつ)が空を切った。

 空振りだったが、構わずスイッチ。

 合金製の(ステーク)炸薬(さくやく)で打ち出された。


「お前の知らない武器だ! ……今、やっぱり! そっちにも、人が乗っているのか?  確かに、(おどろ)く気配があった!」


 そう、アダムは一瞬だけ静止した。

 パイルザンバーが空振った瞬間、刀身から空薬莢(からやっきょう)が飛び出したのだ。

 おおよそ合理に欠いた、空振りの二連発。

 だが、カイムの狙い通りだった。

 宙に弧を(えが)く空薬莢へと、アダムの視線が移動したのだ。

 その隙に、(けり)りを入れて肉薄の距離を離れる。

 反動で翼を(たた)んで、真っ直ぐ真下へとカイムは飛んだ。

 否、落下した。


『ちょっとカイム! アンタ、高度が!』

「イデヤを拾わなきゃ! 大丈夫、まだ間に合う!」


 あっという間に、戦いの空が遠のいた。

 戦線離脱には心配もあったが、母艦バハムートを守るだけならアディータ一人でも大丈夫だろう。彼女は優れた狙撃手(スナイパー)であり、剣を取っても一流の乗り手だ。竜騎兵団に参加したこともなく、竜騎士(ドラグーン)でもなかったのが不思議なくらいだ。


「って、両足が義足じゃ、試験ではねられちゃうか」


 弾丸のように速く、(はや)く、()ぶように落ちる。

 自由落下で真っ逆さまに、参號騎は空の底へと向かった。

 誰もまだ、その果てを見たものはいない。

 大地が砕かれ、星が(ほど)かれてより千年……散らばった欠片である浮島(うきじま)以外に、(おか)を見たものはいないのだ。そして、星々の輝く天空の彼方がそうであるように、高度を極限まで下げた先になにがあるのか……それは、この世界の禁忌(きんき)とされている。

 何人もの冒険家が、竜や飛翔船(クラフトシップ)で挑んでいった。

 だが、誰一人として帰ってこなかったのだ。


「いたっ! あそこに……イデヤ、起きて! 騎体を立て直して! まだ間に合う、飛んで!」


 視界の隅に、イデヤの壱號騎が見えた。

 ぶらりと垂れ下がった両手に、力がない。翼も羽撃(はばた)きを止めている。ただただ落ちてゆく壱号機に向かって、カイムは翼をしならせた。

 だが、頭上から殺気が銃弾となって襲い来る。

 先ほどとは違って、武器を持ち替えたアダムが降下してきていた。


「クッ! 銃か! メタドロンには、あのサイズの火器を作る技術がまだ!」


 だが、今はイデヤを優先する。

 危うい回避運動を繰り返しつつ、カイムは壱號騎を補足(ほそく)、両足の鉤爪(かぎづめ)でしっかりと掴む。正に、獲物(えもの)を仕留めた竜のようだ。同時に、両手は剣と盾を構えて的に向く。

 瞬時にカイムは、パイルザンバーと対となる盾の存在を思い出していた。


「ブレイズシールドってのだ、さっさと行っちゃえよ!」


 屍棺機龍の全身を、すっぽり覆うほどの巨大なカイトシールド。

 それは、パイルザンバーと対になる装備、ブレイズシールドだ。

 その内側に、カイムは説明書で見た通りにパイルザンバーを突き刺す。丁度(さや)のようになっていて、ガチりとぴったり収まった。

 ブレイズシールドの竜のレリーフが、瞳を光らせ口を開く。

 迷わずカイムは、パイルザンバーを撃発(げきはつ)させた。

 同時に、竜のレリーフから地獄の業火が迸った。竜は口から火炎を吐き出し、他にも凍気や稲妻(いなずま)など様々なブレスを放つ。その機構をそのまま、このブレイズシールドは機械的に再現してあるのだ。

 アダムはあっという間に、(ほのお)に包まれ遠ざかった。

 だが、手にした銃を乱射してくる。


「グッ、何発かもらった!? 背中、翼か!」


 ガクガクと参號騎が揺れる。

 無敵の装甲を持つ屍棺機龍にも、比較的防御力の弱い箇所がある。それが、背に生える翼だ。ここは、竜の翼がそのまま使われている。

 無数のプロペラと帆で動く飛翔船と違って、竜は翼で風を(つか)む。

 巨大な翼だが、それでも本来の力学的には、竜本体の質量に比べるといささか揚力が足りない(はず)だが……竜の翼は、それ自体がまるで重力を(はじ)くかのように機能するのだ。

 竜とは、なにか。

 何故(なぜ)、人に寄り添い共に生きてくれるのか。

 今の人間社会を支える、不思議な力の(かたまり)……それが竜なのだった。


「くっ、落ちる……力が足りない!」


 どうやら参號機は、片方の翼をやられたようだ。

 だが、どうにかもう片方あれば、飛べる筈だ。

 もし、壱號騎を保持していなければだが。

 そして、カイムにはイデヤを見捨てるという選択肢はなかった。


「ジークヒルト! 頼む、もう少し……あと少しだけ、飛んでくれ!」


 だが、どんどんカイムは落下してゆく。

 そして、徐々に空の風景が変わっていった。

 遠雷(えんらい)の音が響く中で、徐々に暗くなってゆく。

 まるで、かつてあった海の底、深海へと落ちてゆくようだ。

 闇夜に吸い込まれるような感覚。

 空気は冷たく凍って、徐々に視界が狭くなっていった。


「ここで、終わるのか……? ごめん、メイム……僕は……いや、駄目だ!」


 周囲に改めて目を凝らす。

 見れば、今まで飛んだことがない空は濁っていた。

 瓦礫(がれき)や岩盤が、次から次へと眼の前を通り過ぎてゆく。

 これは、かつて旧世紀と呼ばれた時代のものだろうか?

 浮島とは呼べぬ程の大きさの岩石が漂う、ここはまるで空の墓場だ。その中をゆっくりと、カイムは落ちてゆく。


「せめて、どこかに着陸できれば……ん? あ、あれは」


 不意に、眼下に奇妙な影が浮かび上がった。

 (わず)かに騎体を動かし、そこへの落下コースを整える。

 みるみる迫る、それは巨大な構造物だ。ちょっとした浮島くらいはあるかもしれず、朽ちた金属でできている。飛翔船にしては大きすぎるし、マストもプロペラも見当たらない。

 そして、明らかに何かしらの攻撃を受けた痕跡が見える。

 謎の構造体は、焦げて汚れて、大穴が空いていた。

 その巨大な穴へと、ゆっくりとカイムは吸い込まれていった。

この小説は、現代日本でドラゴンに家族を奪われた少年がダンジョンに潜り復習を果たす物語『東京ドラゴンスレイヤー』の提供でお送りします。


東京ドラゴンスレイヤー:パクリ田 盗作著

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888763311

我が名は園田! 園田善治! 我は竜を狩る虎の牙なりっ!!




・次回予告


 謎の構造物に漂着した、カイムとイデヤ。

 そして明らかになる、イデヤの戦う姿。

 とりあえずのサバイバルを始めた二人の前に、真実が忍び寄る。

 それは、かつて星が大地を並べていた時代の記憶だった!


 次回、第20話「忘却された方舟」


 ――汝、人を象る龍となれ!

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