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フルメタル・ドラグーン  作者: 長物守
14/33

第14話「その敵の名は、アダム」

・今までのあらすじ


 謎の新兵器、屍棺機龍に乗り、再びカイムは戦場へと戻ってきた。

 だが、竜の躯とメタドロンの技術で作られた人型兵器は、仲間からも恐れられる。

 それでも戦うと決めたカイムに、迷いはない。

 そんな中、明らかに異質なメタドロンが襲い来る。

 そしてカイムは、屍棺機龍が人の姿をしている訳を知るのだった!

 目の前の光景に、カイムは我を疑った。

 そこには、屍棺機龍(ドラグレイヴ)と同じ大きさの人型が浮かんでいる。先ほどの新型メタドロンが、瞬時に変形したのだ。翼が背に回って、格納されていた手足が伸びた。それはまるで、太古の聖典に登場する天使そのものだ。

 その威容に、思わず魅入(みい)られてしまう。

 美しくもおぞましい、金属でできた聖像(イコン)が動き出す。


『なにやってんのよ、カイムッ! 避けて!』


 アディータの声が耳に刺さった。

 咄嗟(とっさ)にカイムは、操縦桿を引き絞る。

 右腕を通じて神経接続された参號騎(さんごうき)がダイブする。その軌跡を追うように、敵も加速を始めた。人型になったことで、そのスピードは落ちている。だが、逆に戦闘力は段違いに跳ね上がっていると感じた。

 その証拠に、謎のメタドロンは両腕を突き出してくる。

 たちまち、手の甲から鋼の(つぶて)が浴びせられた。


「グッ! 避けきれないっ!」


 大きく回避したつもりが、何発かもらってしまった。

 あっという間に、コクピットの中に警報音が満ちる。

 赤いランプに照らされながら、瞬時にカイムはダメージを読み取った。

 損傷は軽微だが、装甲が中途半端なために直撃をもらってしまった。

 戦闘に支障はないが、長引けばパワーダウンの恐れがある。

 筋肉制御用の潤滑液(じゅんかつえき)が、血液のように吹き出す感触が右腕に伝わってきた。


『カイム、動いて! アタシが背後からやるっ!』

「わかった!」


 数の上では有利だが、アディータも動揺を隠せない。

 そして、周囲のエクスシア級は新型を守るように殺到してきた。

 あっという間に、乱戦になる。

 アディータの矢が次々と敵を(ほふ)るが、物量の差はいかんともしがたい。

 そんな中で、カイムは謎の人型メタドロンを追う。

 後方の母艦バハムートから通信が入ったのは、そんな時だった。


『カイム君っ、下がって! まだ君ではアダムには勝てないわ!』

「リュミアさんっ! ……アダム? この人型メタドロンが!?」

『ええ! こっちでも参號騎を通してモニターしてるわ。そいつの相手はイデヤに任せて!』

「わかりました! ……クッ、下がるぞ、ジークヒルト!」


 だが、敵がやすやすと逃してくれる道理もない。

 四方を敵意に囲まれたまま、徐々にカイムは空の自由を奪われてゆく。(せば)まる機動限界の中、次々と飛ぶ場所が塗り潰されていった。

 そんな中を、剣で道を切り開き、攻撃を盾で防ぐ。

 アダムと呼ばれた人型メタドロンは、執拗に参號騎を狙ってきた。


「振り切れない……だったら!」


 意を決して、カイムは翼を(ひるがえ)す。

 このままでは、(なぶ)り殺しだ。ならば、自ら攻めに転じて勝機を見出すしかない。

 参號騎はその場で振り向き、翼を開いて風を捕まえる。

 急反転、急制動。

 そのまま突っ込んでくるアダムへと、真っ直ぐ突っ込む。

 掠った銃弾の痛みが、思わず顔を歪ませた。


『カイム、ちょっとアンタッ!』

「アディ、撃って! こいつの動きを今から止めるっ!」

『アンタに当たるわ!』

「当たらない! アディの腕に、僕の命を預けたっ! 信じてるから、当たらない!」


 肉薄の距離で、刺突(しとつ)を繰り出す。

 耳をつんざく金属音と共に、相手の腕へ剣が突き立った。胴を狙った一撃だったが、相手は防御のために左腕を差し出してきたのだ。

 だが、それも計算の内だ。

 カイムには、奇妙な予感があった。

 そしてそれは、確信に変わる。


「お前たちには、受ける痛みがないんだな……そして、()()姿()()()()()()()()()()()()()()! だから、そうやって腕一本差し出せる! 差し出すしかない! なら!」


 そのまま剣を払って、相手のガードを無理矢理こじ開ける。

 空いたスペースへと、カイムは左腕を振りかぶった。

 マウントされたシールドを、全力で相手へと叩きつける。竜騎士(ドラグーン)が戦場で使うものと同様に、盾の先端には格闘専用のスパイクが装備されていた。

 互いにが砕け合う感触の中、初めてアダムがぐらりと体勢を崩した。

 ひしゃげた盾をパージするや、そのまま左手でカイムは相手に組み付く。

 そして、背の翼を強く意識して飛翔を念じた。


「ジークヒルトッ! こいつを(むれ)から引き剥がせっ! ――今だ、アディ!」

『わかってるわよ!』


 あっという間に、乱れ飛ぶメタドロンの中から、カイムはアダムと共に抜け出る。

 その先には、弓に矢を(つが)えたアディータの弐號騎(にごうき)が待ち受けていた。

 放たれた矢が、二本、三本とアダムに突き立つ。

 だが、アダムはすぐに冷静さを取り戻した。

 刺し貫かれた左腕を、自ら切り離したのだ。


「こいつっ、トカゲの尻尾切りを!」


 カイムが叫んだ時にはもう、相手は参號騎を振り払った。

 離脱と同時に、残った右腕から銃弾が浴びせられる。

 装甲もなく盾を捨てた今、全力でカイムは避けるしかなかった。

 だが、奮戦の努力に(むく)いる声が響く。


『カイム、離れてください! そいつの相手は私がします! ――ハアアアアアッ!』


 絶叫が空気を支配した。

 そして、視界を影が通り過ぎる。

 それは、漆黒の機体に鮮血の赤を散りばめた、イデヤの壱號騎(いちごうき)だ。カラーリングも相まって、正にその姿は悪魔か死神か……手にした巨大な大鎌(デスサイズ)が振るわれる。

 デタラメな機動でイデヤは、アダムの攻撃を全て避けていた。

 そして、大振りな一撃を横薙ぎに解き放つ。


『くっ、浅い! ならあ! これでぇ、死ねえええええええええっ!』


 普段の寡黙(かもく)で物静かなイメージが、木っ端微塵に粉砕される。

 荒ぶる戦鬼と化したイデヤは、怒りと憎しみに声を(とが)らせていた。

 絶叫、咆吼(ほうこう)(なげ)きにも似た声が空気を沸騰(ふっとう)させる。


「イデヤさん……凄い、あんな動きを」

『勝負あったって感じね。あーあ、やだやだ……操縦桿握ると人が変わるタイプよね、イデヤって』

「なんだか……泣いてる、みたいですね」

『ん? そう?』


 上手く言葉では説明ができない。

 だが、まるで泣きじゃくる幼子のようだ。

 イデヤの壱號騎は、どんどんアダムを追い詰めていった。

 だが、アダムも反撃に転じてくる。

 それを察知した、母艦のリュミアが叫ぶ。


『みんなっ、気をつけて! なにか飛んでくるわ! ……速いっ!』


 何かが高速で、カイムの側をすり抜けた。

 それは、メタドロンというには小型だが、雲を引いて飛ぶ。自らを燃やして火を吹き、その推力で飛ぶ飛翔体だった。

 咄嗟にイデヤも、アダムへの攻撃の手を(ゆる)める。

 僅かに下がった、その間隙にアダムは上昇した。その、のっぺりとした顔に奇妙な光が紋章を浮かび上がらせる。そのままアダムは、飛翔体に相対速度を合わせた。次の瞬間、爆発の焔と煙が周囲を満たす。


『自爆した!? そうは見えない、けど、そこに……いるんだよねえ! ならっ、そこを動くなああああああああっ!』


 壱號騎は両手で大鎌を振りかぶる。

 そのままイデヤは、視界ゼロの黒煙に飛び込んだ。

 そして、激しい剣戟(けんげき)の音と共に飛び出している。

 アダムは片手で、激しく壱号機と斬り結んでいた。

 そう、()()()()()()()()()()()()()

 リュミアの声に、カイムも戦慄を感じて息を飲む。


『さっきの……武器を運んできたっていうの? やはりアダム、危険だわ』

「リュミアさんっ、あのアダムっての」

『説明は後で! カイム君は戻って……よく、その騎体で無事で』

「でも、イデヤが」


 その時だった。

 もはや(けだもの)と化したイデヤの声が、気迫を叫んで痛撃を放つ。


『死いいいいねえええええっ! 殺す、殺す! 殺し殺すっ! ――チィ! 逃がすかあ!』


 残る右手の剣でイデヤを(さば)きつつ、アダムが急降下しながら変形した。

 元の飛行タイプに、瞬時に姿が変わる。

 だが、突き出た右腕だけがそのままで、銃弾をばらまきながらイデヤを狙ってきた。

 イデヤもまた、大鎌を回転させて全ての射撃を叩き落とす。

 悲痛なまでの絶叫は、まるで慟哭(どうこく)だ。

 殺意の(かたまり)となって刃を振るう、悲しい堕天使(ルシファー)の姿がそこにはあった。


『クソッ、逃げるなあ! 逃さない! 皆殺しにいしてやるっ!』

『もういいわ、メタドロンが退いてゆく。イデヤ! もういいの!』

『うるさいっ! 逃さない……絶対に許さない! 殺す殺す殺す、ブッ殺すッ!』


 思わずカイムは、参號騎で壱號騎に寄り添った。

 全身を震わせる姿は、まさしく怒り(たけ)る竜そのものである。その手にそっと手を重ねて、並んで飛ぶ。長い角を持つ壱号機の頭部が、こちらを振り返った。

 そして、徐々にその全身から発する殺気が静かになってゆく。


『……撤収、します。カイムも、戻りましょう』

「う、うん。あの……大丈夫?」

『平気です。戦いは終わりました……倒すだけ倒したので、今日はまあ、良しとしなければいけませんね』


 まただ。

 また、イデヤは狂戦士の如く怒りの権化(ごんげ)になり、その直後に脱力感も(あらわ)な声を弱々しく零す。

 カイムはイデヤのことが、ますますわからなくなってくるのだった。

この小説は、明日の未来を掴むため……竜を滅する竜となれ!『鋼殻牙龍ドラグリヲ』の提供でお送りします。


鋼殻牙龍ドラグリヲ

https://ncode.syosetu.com/n4057be/

機械の龍と異能のケダモノが、未来を賭して殺しあう。




・次回予告


 人型に変形するメタドロン、アダム。

 その存在こそが、ドラグマンサーズに屍棺機龍を作らせた理由だった。

 無事に帰還したカイムを、メイムたちが暖かく迎えてくれる。

 そして、知る……メタドロンもまた、進化していると。

 果たしてメタドロンとは、なにか?


 次回、第15話「未知と神秘への船出」


 ――汝、人を象る龍となれ!

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