もういちど
リスAは、リスBと結婚し、やがて子どもを授かりました。
お母さんが『リスA』、お父さんが『リスB』、そして『息子リス』は小さな木の穴の家で生活をしていましたが、やがて息子リスが成長し大きくなってきたので、いよいよ小さな木の穴の家が狭く感じるようになってきました。
そこで、リスAは、リスBを酢漬けにして食べてしまおうと考えました。そうすれば小さな木の穴の家には息子リスと2匹だけになり、狭く感じなくなるという考えでした。
ある日、リスAは玄関で、リスBが帰ってくるのを待ち伏せしていました。
やがてリスBが仕事から帰って来ると、疲れてくたくたになっているところを襲い、酢漬けにしてしまいました。
数日後、家族写真が一枚もなかったので、リスAと息子リスは少し寂しくなってきました。
リスAは右手の人差し指を天に向け、神様に指示するような勢いで「もういちど」といいました。
時計の針は逆回りを始めました。
――リスAは玄関で、リスBが帰ってくるのを待ち伏せしていました。
あと十秒で帰ってくるのが分かっていたので、「これはもしかすると、過ぎた時間をリセットして、やり直すことのできる能力がアタイにはあるのかしら」と、リスAは急いでタイマー付きカメラを用意し、家族3匹で撮影後、手際よくリスBを襲い、酢漬けにしてしまいました。
数日後、家族写真を見るたびに逆に寂しさが増してくることに気付きました。
リスAは右手の人差し指を天に向け「もういちど」といいました。
時計の針は逆回りを始めました。
――リスAは玄関で、リスBが帰ってくるのを待ち伏せしていました。もう家族写真の撮影は行わず、リスBが仕事から帰って来ると、疲れてくたくたになっているところを襲い、酢漬けにしてしまいました。
そういえば、どんぐり貯金を引き出す暗証番号をすっかり忘れてしまっているではありませんか。今となってはリスBにも聞けなくなったので、いよいよ息子リスの将来が心配になってきました。
リスAは右手の人差し指を天に向け「もういちど」といいました。
時計の針は逆回りを始めました。
――リスAは玄関で、リスBが帰ってくるのを待ち伏せしていました。
「あと十秒でお父さんが帰ってくるよ」と息子リスが言いました。
「なぜお前が知っているの?」とリスAは少しギョッとしましたが、リスBがもう帰ってくるので問いつめている暇はありません。
そしてリスBが現れましたが、なんということでしょう、笹色の鎧を着ているではありませんか。
リスAは作戦を変更し、リスBに優しい態度で挑みました。
「あなた、お帰りなさい。先にお風呂にしますか?お疲れになったでしょう」
リスAは、お風呂場で鎧を脱いだリスBを素早く襲い、酢漬けにしてしまいました。
もう、どんぐり貯金の暗証番号を聞き出すことなんて忘れていました。それよりも、息子リスがリスBの帰るタイミングを知っていたこと、そしてリスBが私に襲われることを知って鎧を着て帰って来たことのほうが気になって仕方がなかったのです。
しかし、そのうちそんなことも気にならなくなり、息子リスの将来を心配したまま、月日は過ぎてゆきました。
――ある昼下がり、すっかり55才になった息子リスは森を散歩していました。
すると、とても魅力的な幼い森の子リスとすれ違いました。
55歳になった息子リスは、その幼い森の子リスに声をかけました。
「ヘイ、そこの幼い森の子リスちゃん、どんぐりでもコロコロしないかい?」
しかし、幼い森の子リスがあきらかに自分が声をかけられたと分かりながら無視をしたので、55歳になった息子リスは強引に幼い森の子リスの腕をつかみ、自分のほうへ抱きよせました。
「やめてよ、誰か助けて!」
幼い森の子リスがあまりに叫ぶので、55歳になった息子リスは逮捕され、それを知った母親のリスAは悲しくなり、いつかのように右手の人差し指を天に向け「もういちど」といいました。
時計の針は逆回りを始めました。
――リスAは玄関で、リスBが帰ってくるのを待ち伏せしていました。
「あと十秒でお父さんが帰ってくるよ」と息子リスが言いました。
リスAはそれも分かっていたので少しもギョッとしませんでした。
そしてリスBが現れましたが、なんということでしょう、笹色の尺取虫の姿をしているではありませんか。
リスAはその姿が苦手でなりませんでしたので、早急にやっつけてしまおうと襲いかかりました。
しかしその瞬間、尺取虫の姿をしたリスBは、「バック」と低い声でつぶやき、素早くバックして消えてしまいました。
恐怖でいっぱいになったリスAは、右手の人差し指を天に向け「もういちど」といいました。
時計の針は逆回りを始めました。
――リスAは玄関で、リスBが帰ってくるのを待ち伏せしていました。
「あと十秒でお父さんが帰ってくるよ」と息子リスが言いました。
リスAはギョッとしている暇などありませんでした。バグって尺取虫になったリスBが現れると「バック」と低い声で呟かれる前に素早く襲わなければならないからです。それよりも、お前のお父さんはなぜ尺取虫の姿をしているのだと聞きたいくらいでした。
リスBはやはり尺取虫の姿をしていました。
今度は素早く襲い、やはり酢漬けにしました。とても食べる気がしないので、お隣のとても優しい老夫婦に差し上げてやりました。
もう、何があっても尺取虫の姿をしたリスBには会いたくないので、リスAは右手の人差し指を天に向け「もういちど」ということは永久にしないと決心しました……ところが。
――ある昼下がり、すっかり55才になった息子リスは森を散歩していました。
すると、とても魅力的な幼い森の子リスとすれ違いました。55歳になった息子リスは、その幼い森の子リスに声をかけました。
「ヘイ、そこの幼い森の子リスちゃん、どんぐりでもコロコロしないかい?」
しかし、幼い森の子リスがあきらかに自分が声をかけられたと分かりながら無視をしたので、55歳になった息子リスは強引に幼い森の子リスの腕をつかみ、自分のほうへ抱きよせました。
「やめてよ、誰か助けて!」
幼い森の子リスが叫び散らかす前に黙らせないといけないことを思い出した母親のリスAは、その現場へ駆けつけ、幼い森の子リスを安心させるため、55歳になった息子リスをしかりつけました。
「なんだよ、あんたに叱られる筋合いはないぜ母さん、あんたが僕のかけがえのない父さんを酢漬けにしちまったから、どんぐり貯金もあてに出来ず、ファミコンのようなゲームも買ってもらえず、僕の人生はわやじゃねえか!」
55歳になった息子リスにそういわれてしまったリスAは悲しくなりました。
そしてリスAは、右手の人差し指を震わせながら、とうとう天に向けました。
「会わせてやるよ、父さんに。バグって母さんの苦手な尺取虫の姿になった、てめえの父さんにねぇ!」
その瞬間、「お父さんを酢漬けにされたこの息子リスさんはなんてかわいそうなのでしょう」と、55歳になった息子リスに同情した幼い森の子リスは、「謝りなさい」と一喝し、リスAの右手の人差し指を食いちぎり、食べてしまいました。
「ギャー、ごめ」
リスAは悲鳴をあげました。
しかし、ごめんなさいを聞きそびれた幼い森の子リスはリスAを指さし、いいました。
「もういちど」
「ギャー、ごめ」
リスAは悲鳴をあげました。
しかし、ごめんなさいを聞きそびれた幼い森の子リスはリスAを指さし、いいました。
「もういちど」
「ギャー、ごめ」
リスAは悲鳴をあげました。
しかし、ごめんなさいを聞きそびれた幼い森の子リスはリスAを指さし、いいました。
「もういちど」
「ギャー、ごめ」
リスAは悲鳴をあげました。
しかし、ごめんなさいを聞きそびれた幼い森の子リスはリスAを指さし、いいました。
「もういちど」
「ギャー、ごめ」
リスAは悲鳴をあげました。
しかし、ごめんなさいを聞きそびれた幼い森の子リスはリスAを指さし、いいました。
「もういちど」
「ギャー、ごめ」
右手の人差し指を、幼い森の子リスに食べられたリスAは悲鳴をあげました。
幼い森の子リスは右手の人差し指を天に向け「もういちど」と言っているのでした。まだ背が低いので、はるかに背の高いリスAを指さすと自然とそうなるのでした。
やがて幼い森の子リスは、「もういちど」と言い過ぎて喉がかれてしまい、リスAから、「ごめん」という言葉を聞くことをあきらめました。
――同情した幼い森の子リスは、その55歳になった息子リスと結婚してあげることにしました。
――そして小さな木の穴に新居をかまえ、やがて子どもが出来……。




