最高の技とは意図して使うものではない
あいつらと連絡を取り合うために一度ログアウトする。そして宿屋(休憩所的な場所)にいく途中分かったことが一つ、このゲームはどうやらログアウトしても数分は体が残るらしい。今日死体みたいに道に転がってるプレイヤーとそのプレイヤーから装備を剥ぎ取ろうとするプレイヤーを見た。どうやら町ではセーフティが張られているからか分からないが奪取はできなかったらしくそのプレイヤーはとぼとぼと帰っていった。傍から見たらヤベえやつなのでこれからも宿屋でログアウトすることを胸に誓った。
「お、来てるな」
「ふんふん、アインツに行くから18時30分に噴水に来いと」
現在18時20分。あいつもしかしなくても計画作るセンスゼロだな?これが16時とかに送られてきたらまだわかるがこれが送られてきたのは17時40分だ。もしかしたらあいつは俺と会いたくないのかも知れん。上等だコラ、ぶちのめしてやるよ。
「つかまたログインせにゃならんのか」
おのれ珍宝。いや、あいつのPNはマイルドだからまだいいんだけど。
愚痴口言ってもしょうがないのでログイーン!
まつこと2分。
男2人が噴水に集まってきたのでなんとなく話さずに他人の振りをしてみる。
ん?こっち来た。あ、そうかこのゲームPNみえるわ。おいやめろ珍宝銀銀丸その名前で来るな。その顔だけは無駄にかっこいいアバターを近づけるんじゃねえ嘴でさすぞ。
「フィーリュさんであってますか?」
「目から腐った死体のにおいがしてるぞ?」
「見間違えですよって言葉をそんな歪曲して言えるのは君だけだと思うな!!」
「やめろよインポウキンキンバツ。そのPN恥ずかしいんだよ」
「真逆のこと言ってるのに気付いてる?」
おいまじかよ、こいつジョークも理解できないのか?
「ナチュラルに顔で煽って来るのはやめようか?」
「こんにちは、こうして面と向かって話すのは初めてだね。テラーだよ」
「こちらこそ、フィーリュです」
もうひとりの男、テラーが。あのテラーが挨拶してくる。しかもめっちゃいいイケメン声だ。そのアバターに似合ってるぜ。VRでは音声を変えられないからネカマかネナベかすぐに分かるからそういった犯罪は結構なくなってる。ちなみに俺のアバターは体はナイスガイ声帯は少年とかいう面白状態に陥ってる。
「扱いが違うことに若干の不満はぬぐえないがまあいい。今日集まれたのは俺とテラーの二人だけだった」
「まー野朗が3人増えようがあんま関係ないがな」
「あー……それ――「まーそうだねー、それじゃあツヴァーリーにいこっか」遮んな!」
なんか話しそらされたが……って
「ツヴァーリー?あそこもう行列なくなったの?」
「ああ違う違う。さすがに運営がだめだと思ったらしくていまは特定のゾーンに行けば強制戦闘になるっぽいよ」
あー、つまり並ぶ必要はなくなってことでいいな?いいって俺の脳が判断した。
「なるほど、じゃあいくか」
「おー!」
「そいやテラーって何でどことなくオカマくさいの?」
「いや、私って言い方が定着しちゃってね、それでオカマのように感じるんだと思う」
「審査官」
「グレー」
なるほどな。
「単語だけで会話しないでもらえるかなあ?」
さて、あれから俺は無事にボスと戦闘するエリアにこれた訳だが。これは怒ってもいいよな?目の前にはどう考えてもボスです。って言うエフェクトを纏った3メートル人型の巨大なモンスター推定ビッグゴブリンがいた。周りを見渡せば頼れる仲間(プレイヤースキル的な意味で)のA,Bが消えていた。まあ考えてみよう。恐らくだがこういう系のボスはパーティメンバーがいることで勝てる設定だったりする。ではなぜ俺とあいつらが一緒にいないか?パーティを組んでなかったからだよ畜生ア!!
「ギギッギ!」
「おっと」
「ギャーギャギャギャー!」
「よっと」
「ガッガギャア!」
「っとぉ」
ビッグゴブリンが斧を振りかざしてきたので回避、すると次は蹴りをかましてきたのでこれも回避、さらに殴ってきたので飛んで手の上に乗る。
時代劇っぽくやってみたはいいもののこれからどうするか?
「ピカタアアアアア」
「ギャァァァァギィ!?」
考えは無駄なので行動に移そうね。つうことでゴブカスの首にピカタをお見舞い。ゴブリンの首から赤いポリゴンが血のように噴出される。
「これはノーダメクリアも余裕か?」
敵の攻撃は単調だし所見殺しっぽいギミックも無し。そんな条件から与えられたのならばいけるだろうと、そう思って口に出してしまった。
結果、現在俺は苦戦を強いられている。理由は至極簡単。
「序盤のボスで自動回復持ちとか反則だろうが!」
ただでさえ低いこちらの攻撃力なのにあいてが自動回復とか言うクソ使用を背負っているからである。サムライは確かに高STRジョブだがまったくポイントを振っていないので残念なことにこちらの攻撃は打撃にならない、向こうの攻撃は避けられるという泥仕合になっていた。
ぬかった、が、言い訳をさせて欲しい。初めのボスがリジェネ持っててもいいのか?それが最近の流行なのか?これ絶対ソロプレイで攻略不可だろ。という観点からこのくらいのボス程度なら行けると踏んだ。
まあ結果はこうだよ!大雑把な動きだから回避自体はしやすいがスタミナが切れかけてるでやんの。スタミナが切れると動きに制限がされるので余り……いや普通に好きじゃない。ズズズと斧を振り上げゴブリンが全体重をかけて俺にめがけて斧を振り下ろす。
それを右によける振りをしてバックステップでよける。そしてこのタイミングでステ振りをする。
(あげる技能はSTR、大体30つぎ込めばいけるか?つかこのゴブリン上手くなってる。戦いで成長するのは主人公だけじゃねえのかっよ!)
なぎ払いとかしてきたから宙返りをして回避、そのままSTRに振ってステに反映されたところを確認したら股抜きスライディングをして後ろに回り斬りつける。
「ヘイヘイ!どうしたノロマァ!!」
その要領で股抜きして相手が振り向いたら股抜きしてを繰り返すと、なんとゴブリンはジャンプしてきた。あの圧倒的質量に押しつぶされたらさすがに死ぬのでいったん退避。退避してるときになんとなくジャンプして斧を持ってるほうの手を斬りつける。
傍から見たらゴブリンの股で股抜きをしていたおっさんの上でゴブリンが飛んでおっさんがジャンプして回転しながら落ちてきたゴブリンの手を斬りつけるというサーカスかな?とも思える光景だろう。俺だったらサーカスだと思う。
「ガギャアアァァァ!」
性懲りもなく斧を振り下ろすゴブリン。それをバックステップで回避すと、ゴブリンの斧から手がすっぽ抜ける――
「ちゃんと握っとけやぁ!!」
斧がすっぽ抜けたのたぶん俺が斬ったからだろうけどな!
「パリィィィィィ!」
多分パリィって言う必要はないが、これがジャストタイミングだと思う瞬間、左足で体を支えつつクソでかい斧に木刀で殴りかかる。完璧なタイミングだと分かるような軽快な音と共に斧はあさっての方向へ吹っ飛んでいく。
「ギィィィィィィ!」
「おま!まじかあ!」
斧をなくしたゴブリンは俺に接近してぶん殴ってくる。さすがにまたもやパリィは腕をバグらせないと出来ないので、後ろに飛んで衝撃を逃がしつつ食らう。
「だぁ!」
めちゃくちゃ後ろに吹き飛んだが、まだぎりぎり生きていた。
HP15/160
まじでギリギリだなおい。
・ 惨苦の狩人
ビギナーズロードからツヴァーリーに行くための道に存在しているでかいゴブリン。
最初の試練ということで敵プレイヤーのビギナーズロード踏破時時点の平均レベルにレベルが調整される。レベルによって追加効果が付与されるので低いレベルで倒すことが推奨されている。
追加効果
1~10 無し
11~20 斧を持つ
21~25 巨大化
26~30 成長速度上昇(まれに自動回復もおまけで来る)