愛されたいけれど、愛され方が分かりません。
「シェイラ、君は私たちの可愛い天使だ…」
「本当に。このまま優しい子に育ってね
愛しているわ、可愛い娘ー」
薔薇の花園の庭園で、優しい眼差しの男性に抱っこされ、髪の長い綺麗な女性に髪を撫でられる。そして2人で幼い私の頬にキスをしてくれた。
恥ずかしがっていると、2人はまた頭を撫で笑ってくれた。
そんな幸せな家族の光景。
もどりたいー…
そう思って
大声で泣きたい衝動に駆られたー
お願い目覚めないでー・・・
ジリリリリ、というベルの音で目を覚ます。
感傷に浸る時間もなく、目覚ましを止めて飛び起きた。今日も朝が来た。忙しい1日の始まりだ。
軽く顔を拭いて、榛色の髪を櫛でとかす。
くすんだ赤みの黄色はこの国では一般的な色だ。
櫛を通した髪を三つ編みにして縛る。
腰まである髪は結ばないと、日常生活では邪魔になってしまう。
「似てるかしら…?」
やや垂れ気味だが、小さくはない瞳は髪と同じ色だ。高くも低くもない鼻。頬は気温が寒いせいかピンクに染まっている。
夢の中の2人は、幼い頃に亡くなった父と母だと思う。幼い頃だったので自信はないが、鏡を覗き込めば何処と無く夢の中の2人と自分が似ている気がした。
そしてそれは一人ぼっちの私にとっては、とても嬉しいことだった。
「…今日はサリーの婚約者様が来る予定だったわよね…」
サリーは、私の同い年の従姉妹にあたる。
両親を亡くした私は、母の姉の夫妻に引き取られた。
服は、片手で数える程しかないが、お客様が来るとなると服を選ぶのが大変だ。何にしろどの服も何年も着ているせいで、お客様の前に出れるような服ではない。
その中から一枚を手に取る。
本来なら真っ白のワンピースは、何年も着ているので所々に汚れがあるが、私の持っている服の中ではまだ綺麗な方だった。
袖を通し、身支度を整えたら元々物置部屋だった、私の部屋から台所に向かう。
「おはよう、シェイラ」
「おはようございます、ジェームズさん。
サリーの朝食は出来ていますか?」
この屋敷で料理長をしているジェームズさんは、50代の優しいおじ様だ。ニカッと笑って挨拶してくれ、私にパンやスープの乗ったトレーを渡してくれた。
「それにしてもよ
いつも思うが、メイドに運ばせればいいのにな
サリーお嬢様はー…」
シェイラだって、お嬢様なのになぁ。とジェームズさんは、私を心配そうに見てため息を吐いた。
「私は、引き取られた身だから…
置いてもらってるだけで感謝しなくちゃ」
お礼を言って、スープが冷める前にマリーの部屋に朝食を持っていく。
同い年の従姉妹のマリーは、ある時からメイドの代わりに私に食事を持って来ることを要求した。
「シェイラです。朝ごはん持ってきました」
コンコンとノックをしても返事はない。
何時もの事なので、そのまま部屋の中に入ると、ベットで寝ている従姉妹の姿が見えた。
食事をテーブルの上にセットしてからカーテンを開けた。
「・・・んー・・・眩しい!!!」
布団から顔を出し、不機嫌そうに私を見たと思えば、すぐに意地悪そうな笑顔で笑った。
「ヤダー・・・今日も本当に貴女、汚い格好してるわねぇ・・・」
あぁ、嫌だこと。本当にもう召使いになればいいのに。
そう言いながら、テーブルに着き食事を始める。
ピンクの髪を揺らしながら、罵倒を続ける従姉妹はいつも愛らしい顔をしているのに勿体無いと思ってしまう。
「今日、婚約者のジェームズ様がいらっしゃるのよ」
パンくずを零しながら、サリーは続ける。
「格好良いし、伯爵でお金持ちだし、言うことないわよね!」
オーッホッホ!と高笑いをしながら話すサリー。




