四十話『大きな人助け』
その時、玄関の扉が開き、お鶴さんが部屋に入ってきた。夏季休暇直前に一度ここで会ったきりだったので、僕は随分と久しく感じる。
お鶴さんは僕たちを見ると、「おー」とまさにその言葉のまま、口をОの字に開いた。
「珍しい。こんなにたくさん。……しかも、ジャンヌじゃん。おひさ―」
ジャンヌさんは「お久しぶりでございます」と頭を下げる。お鶴さんは冷蔵庫を開けるも、中に何も入っていないのを見て、「しまった」と額に手を当てる。
「最近来てなかったから、牛乳ないんだった」
僕が「買ってきましょうか?」と腰を上げるも、お鶴さんは「いいよ」とソファーへと座った。そしてお鶴さんはもう一度ジャンヌさんを見ると、「あれ?」と首を傾げる。
「ジャンヌ、珍しく正装じゃん。ってか、なんでみんなここに集まっているわけ?」
「大学前にあるインドカレー屋に潜入した、その結果の報告だ」
田畑さんの説明に、お鶴さんは「ああ」と納得した様子で頷く。
「あれね。で、どうなったの?」
「不法滞在、不法就労の状態にあった店員二人を通報し、彼らを斡旋した佐々木という男の情報を手に入れた。無論、あの情報もな」
「ちょっと待って。ってことは、あの計画が進んでいるってこと?」
田畑さんは「うむ」と頷く。
「今のところは、順調にな。早ければ近いうちに、招集をかけるかもしれぬ。ただ、事が大きいだけに、数が集まらなければ実行は出来ぬからな。それに何より、その時がこなければ、私たちは動けない」
お鶴さんは「そっかー」と身体を大きく伸ばす。
「多分、あたしは最後の大きな人助けになるもんね。やる気が出るよ」
あの計画。事が大きい。最後の人助け。
全く話が読めない僕は、「あの」と小さく手を上げる。
「……一体、何の話でしょうか?」
田畑さんはじっと僕を見返す。
「言っていなかったか?」
「多分、聞いていないです」
大洞さんが「わたしもです」と手を上げる。田畑さんは、「そうか」と小さく息を吐くと、お鶴さんへと視線を向けた。お鶴さんは、肩を竦める。
「教えてもいいんじゃないの。もう、立派なメンバーなんだから」
田畑さんは「そうだな」と頷くと、空咳をし、そして改まった態度で僕たちに身体を向けた。僕と大洞さんの背筋が、自然と伸びる。
「今、私たちはある大きな人助けを実行しようとしている」
「大きな人助け、ですか?」
僕はそのただならぬ田畑さんの雰囲気に、唾を飲み込んだ。
田畑さんは小さく頷くと、ゆっくりとそのおちょぼ口を開く。
「……私たちは近いうちに、ある窃盗団を捕まえることになるだろう」




