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夏色DAYS  作者: 玲夢音
3/5

第三章 “恋”って何?

―――帰り道。

何となく並んで歩く5人の影が、私たちの前を歩く。

「あー美味しかった♪」

「お前食いすぎなんだよ」

「何よ!・・・・って、桜井が突っ込むのって何か珍しー」

(わり)ぃかよ」

「別に悪くないけどさ、太一に洗脳されたんじゃないの?」

「そんなんじゃねーし」「洗脳って、どーゆー意味だよ!?」

桜井と堂本君の声が重なる。菜月が可笑しそうに笑った。


菜月は本当に男子と仲がいい。堂本君はいとこだからかもしれないけど、桜井みたいなほかの男子とまで、かなり親しくしている。これといって恋愛感情は感じられないから、ただ単に『友達』ってだけなのだと思う。

それでもやっぱり、そんな菜月が羨ましかった。


昔から、男子と付き合うのは苦手だった。

小学生のときから、男子としゃべる機会はほとんどなかった。隣に座っていても、遠足のグループが同じでも、必要最低限のことしか話さなかった。

そんな自分が嫌だと思ったことは、正直一度もなかった。たぶんそれは、周りにいる女子たちも同じだったからだと思う。

―――そう、菜月を除いて。

中学生になり、菜月と同じ雑用委員になってからは、男子と話す機会も増えた。と言っても、よく話すのは桜井と堂本君くらいだけど。

それでも、私にとっては大きな変化なのだと思う。



「明波ー、ねえ、明波?」

「・・・・・え?」

「どうしたの? ぼーっとして。あっもしかして、太一のこと考えてたの?」

「ちっ違うよ」

「隠さなくてもいいよぉ。明波が太一のこと好きだって、もう知ってるんだから。」

菜月には何でもバレてしまう。『好きなんでしょ? ねぇ』なんて問い詰められて、仕方なく白状しただけだ。誰にも言わないでよって言ったのに、次の日には同じ雑用委員の灯に漏らしていた。それから2人は、自称『恋のキューピッド』。

「また誰かにバラしてないでしょうね」

「んなわけないじゃん。灯で最後だよっ」

「・・・・・ならいいけど」

「でもさー、何であんなやつに惚れるわけ? あいつ良いとこなんか一つもないじゃん。」

良いところ・・・・・堂本君の良いところ? そんなこと、考えたこともなかった。ただ、好きってだけ。『かっこいい』って思ってから、それからずっと好き。


何で私は・・・・・堂本君を好きになったんだろう。


「ハハハッ」

「何言ってんだよ」

数メートル前を歩く、堂本君の楽しそうな声が聞こえる。

「へぇ、さっきは言い合ってたくせに、仲良くやってるじゃん」

言い合いのきっかけを作ったのはあんたじゃないの。

「男って、単純だよねー。悩みないって顔してんじゃん。羨ましいな」

菜月の蹴った石ころが、電柱に当たって跳ね返った。

「ねえ、思い切ってコクれば?」

「は? 本気で言ってんの」

冗談言ってどうすんのよ、と言いながら、携帯のストラップをくるくると回す菜月。菜月の携帯は、マスコットやら何やらがいっぱいついていて、一目見ただけではそれと分からない。


『コクれば?』菜月は簡単にそう言うけれど、今の私にそんな勇気はない。

「なっ菜月は、好きな人いないの?」

「いるわけないじゃん。うちの学校、イイ男いないもーん」

「ふーん・・・・・」

会話が途切れる。おしゃべり好きの菜月といて、会話が途切れることは滅多にないのだけれど。

「明波、変わったね」

突然、菜月に言われて驚く。私が・・・・変わった?

「太一のこと好きになってから。何か、変わった」

「どんな風に?」

「何ていうか・・・・・うまく言えないけど、とにかく変わった」

「何それ」

「でも、いいことだと思うよ。恋すると、人は変われるって言うし」


“恋”という実感が、未だにない。堂本君が好きということは自分でもよく分かっているけれど、それが恋なのかどうなのか、よく分からない。

ドラマや映画でみる“恋”とは、ちょっぴり違うように感じるのだ。


―――恋って、何なのかな。

   これをほんとに、恋って言っていいのかな。

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