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夏色DAYS  作者: 玲夢音
2/5

第二章 「好き」という気持ち

「へぇ、なかなか上手いじゃん」

私の書いたイラストを覗き込んで、堂本君が言った。

「そ、そんなことないよ」

火照る顔を必死に隠そうとしたけど、バレちゃった・・・・かな。

「もしかして・・・・疲れたか?」

「え?」

「何か・・・・顔赤いし。」

「あ、ううん。暑いだけ」

「だよなぁ、クーラーの1台くらい付けて欲しいよな」

良かった・・・・何とかごまかせたみたい。

「川添、この辺も何か描いてくれる?」

「あ、うん」

こういう何気無い会話が嬉しい。


堂本君は、本当によく話しかけてくれる。恥ずかしくて目を合わすことさえ出来ない私に、自然と接してくれる。

本当は、誰に対してもそうなんだ。堂本君はみんなに優しいから。

でも、そうは思いたくない。気づいてるけど・・・・認めたくないんだ。

認めちゃったら、堂本君が私の前からいなくなってしまいそうだったから。



「「終わったーぁ!!」」

看板係の私たち、そして書類係の菜月たちが声を上げたのが、ほぼ同時だった。

「あーでも、明日もあるんだぁ」

「いい加減雑用委員だけに任せんのやめてほしいよな」

そか、明日もあるんだ・・・・。

でも、堂本君に会えるんだから、悪くないかも。

「ねえねえ、これからみんなでお昼ご飯食べに行かない??」

菜月の提案で、時計に目をやる。時間はとっくに正午を回っていた。

「そうだな、もう12時過ぎてるし。場所は・・・・・」

「「やっぱ『まくら屋』でしょ!」」



『まくら屋』っていうのは、私たち虹ノ樹中の生徒たちに人気のお店だ。

名前が名前だけに、本当に『枕』を買いに来た人も何人かいるらしいが、ごく普通の飲食店。

一見喫茶店のようにも見えるけど、喫茶店よりもメニューが豊富で値段もお手頃。

幸か不幸か学校から少し離れたところにあるので、今のところ道草が先生たちにバレたという情報はない。


「こんにちはぁ〜」

「お、いらっしゃい」

いつもならたくさんの生徒たちで賑わっている時間帯だけど、さすがに夏休みはお客さんが少ないみたいで、今日も私たちのほかには誰もいなかった。

「マスター、もしかして、俺たち本日1組目?」

「・・・・まあな」


マスターこと桝田(ますだ)(すばる)。『マスター』の愛称は、名字の『ますだ』と店の主人という意味の英語『master』をかけているらしいけど、一体誰が考えたんだろう?

昴って何だかかっこいい名前だけれど、正体は49歳バツイチの親父。マスターは「内緒だぞ」って言ってるけど、学校では有名な話だ。


「夏休みになると、虹中の生徒はほとんど来ないからな・・・・」

「そうそう、俺たちのおかげで儲かってんだし。な?」

「悔しいけど、そういうことになるな。それより、ご注文は?」

「あたしクリームソーダ!」「あ、あたしも」「俺コーラ」

「えっと、菜月と日向がクリームソーダで、真琴がコーラな。・・・・川添は?」

「えっ、私?」

堂本君に話しかけられるたび、ドキッとする。

鼓動が速くなるのが自分でも分かる。

「ああ、何にする?」

「・・・・じゃあ、私もクリームソーダにしようかな。」

「OK。マスター、クリームソーダ3つとコーラ2つ!」

「了解!」


「美味し〜!! さすがマスター!」

菜月が追加注文したオムライスを頬張る。

「いやぁ、照れるなぁ」

「マスター気持ち(わり)ぃ」

桜井が、メガネの奥で引いてるのが分かる。

「そうだよ、しかも菜月に惚れるなんてどんな趣味してんだよ」

「ちょっと太一、どーゆう意味?!」

「まあまあ。あ、菜月ちゃんおかわりいる?」

「いいのぉ!? マスター太っ腹!!」

「よーし、今日はサービスだ! みんな、いっぱい食っていいぞ!」

「マジかよ〜、赤字なのにいいの?!」

「そんなことは気にすんな。ほら食え」


あーだこーだ言ってるけど、本当はみんなマスターが大好きなんだ。

そして、マスターも、そんな虹中の生徒たちが大好き。

この『まくら屋』は、マスターにとっても私たちにとっても、かけがえのない場所。



ここで彼に一言。一言だけでいい。


「好き」


って言えたら、どんなに幸せだろう。


この気持ちを彼に伝えられたら、どんなに幸せだろう。


堂本君。


・・・・・・・大好きです。

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