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第75話 リトーとの最後の戦いが幕を開ける!

「それにしてもここまで無事に辿り着けるとは思わなかったよ」

「俺を玄武候補と呼んで玄武にしたいにしては殺す気満々なルートだったな」

「君の命は別に要らないんだよ、君と言う玄武候補の第4段階まで成長した者の肉体が必要なのさ」


その言葉にピコハンは警戒を1段階上げる。

デッドオアアライブ、生死問わずどころか死んで構わないならいつ殺しに掛かられるか分からないのだ。


「それで、一応聞くけど自ら次の玄武になろうって気はあるかい?」

「そんなわけないだろ、それより・・・」


ピコハンは口に出そうとした言葉が頭の中でグルグルと巡るのを感じて抵抗をしていた。

そう、それはリトーのせいではなくこのダンジョンで玄武候補を進化させる為に喰われた者は人々の記憶から消えると言う事が関係していた。

意識のコントロール、ある意味洗脳とも言えるそれによりピコハンはアリーの事を思い出せなくなっていた。

ダンジョンに突入した時には確かに急いでアリーを助ける気持ちで居た筈なのが現在は名前すら思い出せなくなっている事からその効果は恐るべき物であろう。


「ははっ、思い出せないみたいだね。でも気にしなくてもいいよ。この世界、玄武の中では今までもこれからも繰り返し起こってきた事だから。」

「この混乱も玄武のせい?」

「自覚しているだけ君は凄いよ、本来ならおかしくなっている事にさえ気が付かない筈だからね」


そう、この洗脳に近い思考の誘導こそがこの世界で日々行なわれていた人捨てにも関連していた。

そうでなければ自分の子を口減らしを理由にダンジョンに捨てる家庭がそんなに多いはずが無いのだ。


「お・・・い・・・おまえと・・・一緒に居た女は・・・」


酒呑童子が動けない血塗れの体で口にしてピコハンへ伝える。

その言葉を聞いてピコハンは思い出す。


「アリー・・・そうだ!アリーだ!」

「はぁ・・・あの失敗作、要らない事ばっかりしてくれるもんだよ。折角このまま洗脳しようと思ってたのに」

「お、お前!?」


その言葉にピコハンも気付く、知らない内にリトーの言葉に誘導されかけていたのだ。

すっかり意識を覚醒させたピコハンに向かってリトーは小さく浮かべていた笑みを強く強調した表情を見せる!


「なら、殺して次の玄武になってもらうとしようか!」


言葉と共にリトーから殺気が溢れ出しピコハンは息を呑む。

そして、リトーが右腕をピコハンへ向ける。

自然体で動かされたその腕の動きには相手に対する攻撃意思すらも含まれて居ない。

そして、それこそがリトーの単純にして最高の勝利パターンであった。


「大人しく死ね!」


向けられた手に殺意が宿ると相手は白い結界内に閉じ込められなぶり殺しにされる。

それがリトーの戦法であった。

しかも前回の教訓を生かして酒呑童子を閉じ込めた時と同じ地面の下まで結界で閉じ込めて動かせない様にもしていた。

破壊できない結界に囚われれば待つのは一方的な惨殺であった。

そう、閉じ込められれば・・・


「へっ?」


それはリトーの口から漏れた一言であった。

リトーは自分が地面に向かって落下している事に気が付いた。

そして、グチャっと後ろの壁に何かが当たって潰れる音が響く。

一瞬、まさに一瞬であった。

結界に閉じ込められようとしたピコハンはあの一瞬でリトーへ向けて飛び出しそのまま腹部にタックルを仕掛けたのだ。

しかし、その勢いは凄まじく離れた場所で見ていた酒呑童子の目にも見えない程の早さであった。

そのタックルでリトーの下腹部は千切れて吹き飛び後ろの壁にぶち当たってミンチになっていたのだ。


「うっ!?」


両手で上半身のみの体を地面に付いて着地したリトーであったが直ぐに後ろに気配を感じて振り返ろうと首を回す。

そこには大きく振り被ったピコハンが立っていた!

そして、空気を引き裂きながら目にも留まらない速度でリトーの頭部目掛けて拳が振り下ろされる!


「まっ・・・」


リトーが何かを口にしようとした次の瞬間、ピコハンの拳がリトーの頭部を粉砕し胸の当たりまでピコハンの腕はめり込んでいた。

周囲に飛び散るどす黒い血が肉塊と化したリトーから流れ出る血と交わっていく・・・

数々の死線を潜り抜けてきたピコハン、一切容赦のない攻撃こそがリトーの結界を封じる手段だと考えて行動したのであった。


「勝った・・・」


ピコハンの言葉は酒呑童子にも届いたのか小さく舌打ちをする音がその部屋に伝わった。

生物で在ればこそ出血の量もそうだが脳が破壊されて生きている筈がない。

そう考えたピコハンは気を抜いた、いや、抜いてしまった。


「ぐぁっ?!」


ピコハンの背中に突き刺さる一本の槍。

刺さる瞬間、殺気を感じ取ったピコハンは振り向こうと動き心臓を貫かれるのを間一髪回避していたのだ。

そんなピコハンはそいつを見て驚きに包まれる。

そこには・・・


「驚いたよ、まさかこの短期間でここまで強くなっているとはね」


上半身裸となった酒呑童子がピコハンの背中へ射した結界で作った槍を手放し一歩後ろへ下がる。


「な・・・なんで・・・」


ピコハンが口にした言葉に対しリトーは物凄く嬉しそうな顔をして・・・


「残念だったね、はるか昔に玉手箱と呼ばれる箱から出た煙を吸ってね・・・今の僕は不老不死と言うやつなのさ」


残っていたリトーの肉塊は直ぐにダンジョンに解けるように取り込まれる。

ピコハンは背中に刺さっていた結界で作られた槍をなんとか引き抜く。


「ぐぁあああ・・・・」


傷自体はそれ程深くなかったのか出血もそれほど酷くなくピコハンはリトーの方へ向き直る。

その表情は先程とは打って変わって深刻そうであった。

それはそうだろう、リトーの言う事が真実であれば殺しても死なない、つまり無敵と言う事である。


「さぁ、今度こそ楽しんでね」

「ぐっ」


ピコハンが飛び出す前にリトーはピコハンを結界で覆いそこへ閉じ込める事に成功する。

そして、檻の隙間目掛けて一斉に結界で作られた槍や矢の様な物が一斉に飛び込んできた!


「ぐ、ぐぁああああああああ!!!」


檻の中からピコハンの叫び声が響き渡るのであった。

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