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第74話 鬼族の正体

「僕はね、この世界の管理者とも言える存在なのさ。そして、君達はこの世界・・・玄武の候補になりえなかった失敗作なのさ」


リトーが語る話を驚きつつも聞き続ける酒呑童子。

それは彼の本能がリトーから逃げろと警告を発し続けていたからである。

本来なら話している途中でリトーに襲い掛かっている筈なのは本人が一番良く分かっていた。

父を倒し鬼族の頂点にまでこの数年で上り詰めた酒呑童子は同属が襲われている事実を認識しつつも行動を起こせずにいたのだ。


「その昔、世界が滅んだ時に生き残った人間を回収してね。この玄武の候補として新たな生命体に進化させる過程で幾つもの失敗作が生まれた。殆どは処分できたんだけど一部逃げ切ったのが居てね、まさかこんな所で数を増やして生き続けているとは思わなかったよ」


この鬼の住む世界は玄武の中でもリトーが認知できない位置に在った。

そこへ偶然流れ着いた人間を捉えて女を苗床にその数を増やしていたのだ。

人間はもし逃げ切っても元の世界へ戻れば15年の時間が経過している。

その為、人間にもリトーにもこの場所がはっきりと認知されていなかったのだ。

それがピコハンが出入り口とされていた場所を破壊し、そこにダンジョンへの出入り口が偶然出来てしまった。

そして、そこを出入りしていた酒呑童子によりリトーはここを突き止めたのだった。


「おしゃべりが長くなっちゃったね、それじゃ僕はもう行くからさようなら」


そう言ってリトーはその姿を霧の様に消した。

それと共に酒呑童子は自身の体が動くようになった事に気が付いた。

それと同時に目の前に立ちはだかる巨大な獣の腕が振り下ろされた。

しかし、その腕が離れた場所の地面に落ちる音が響くと共に獣も同じように横倒しになる。


「ふ・・・ふざけるんじゃねぇおおおお!!!!」


雄叫びを上げて酒呑童子は自分達の集落の方へ駆けて行く!

戦闘狂とも言える彼が見た事も無い獣との戦いを楽しまず一直線に向かった理由、それは・・・


「そ・・・そんな・・・」


そこには死体が在った。

村に居た全ての鬼を殺し尽くしたのであろう。

家と思われる物は全て焼き払われ同族と思われる者は全て頭部を完全に破壊されて横たわっていた。

その場に崩れ落ちる酒呑童子の前には小さな体。

その腕に刻まれた傷から酒呑童子には分かったのだろう、それが自分の息子だったのだと。

そんな酒呑童子の近くへ近寄ってくるのは地を這う巨大なトカゲ、いやドラゴンであった。

同族の鬼達が必死に抵抗を続けたのであろう、体には様々な傷が残されているそのドラゴンはまだ獲物が残っていた事を嬉しそうにしていた。

リトーによってダンジョンから連れて来られたドラゴンはダンジョン内ではいつ死んでもおかしくない存在であった。

それが不思議な白い檻に入れられたと思ったらここへ連れて来られたのだ。

そして、リトーの圧倒的強者の気配に逃げるように鬼の集落に解放されたドラゴンにとってそこは楽園であった。

餌がたらふく食える、獲物をたらふく狩れる、それも一方的にだ。


「貴様か・・・」


酒呑童子の言葉は通じない、だがドラゴンは目の前の餌が死ぬ前に喚くのを楽しむ為に直ぐに攻撃を仕掛けなかった。

それがドラゴンの一番の敗因であった。


「きさまかぁああああああ!!!!!」


リトーすらも今の酒呑童子の力を見誤っていた。

あのピコハンすらも一方的に蹂躙するほどの戦闘能力を持つ酒呑童子が怒りに我を忘れて襲い掛かかる。


「GUGYAAAAAA!!!」


ドラゴンの雄叫びが響くが直ぐにそれは鳴き声に変化する。

後ろ足を一瞬で捥ぎ取られたのだ。

腰が地面に落ちる不思議な感覚に続けてドラゴンは痛みを認識する。

目の前に居た筈の餌が一瞬で居なくなったと思ったら自分の後ろ足がなくなったのだからそれは仕方ないだろう。


「まだだ!まだ殺さない!!!」


次は翼であった。

背に乗られたと思ったら2つの翼は根元から引き千切られたのだ。

そして、そのまま尾が引き千切られる!


「GAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

「うるせぇええええ!!!!!!」


叫ぶドラゴンに怒鳴るように酒呑童子は引き千切った尾をその口の中へ叩き込んだ!

起死回生とは言わないが反撃する最後の手段として炎のブレスを持つドラゴンはその時初めて気が付いた。

自分がダンジョン内でも決して手を出さないクラスの生き物と同レベルの者に自分は逆らったのだと。

直ぐに前足のみで方向転換をして逃げようとするドラゴン。

だがそれは既に遅すぎた。

逃走防止の為に最初に後ろ足を破壊されていたのだ。

それで必死にこの場から逃げ出そうとするドラゴンの鼻の上に酒呑童子は飛び乗った。


「何処に行く気だよ?お前がやった事のお礼をしっかりさせてもらうぞ」


それがドラゴンが聞いた最後の言葉であった。

右目を破壊しながらその中へ飛び込んだ酒呑童子はそのまま脳内へ入る、そこを破壊して左目から飛び出す!

そして、完全に血に沈むドラゴンを無視して酒呑童子はダンジョンの方へ歩を進める・・・

全てはリトーにこの怒りをぶつける事だけを考えて酒呑童子は再びダンジョンへ突入したのであった。


そこからは完全に手探りである。

ピコハンが王都へ向かい永久の古墳に入って居る間も酒呑童子はダンジョン内をひたすら突き進んだ。

そして、ピコハンが玄武候補第4段階になりダンジョンに入ると共に酒呑童子の居る場所も一瞬で変化した。

数日間迷い続けていたダンジョンが突然一本道となったのだ。


「どいつもこいつも!俺の邪魔をするやつは殺す!」


次々と襲い掛かる魔物や獣を軽々と惨殺しピコハンとは違うルートで酒呑童子はリトーの元へ向かう。

鏡の中の自分が襲ってくる部屋、電気が部屋中を一定の間隔で駆け巡る部屋、何度破壊しても別の生き物となって生き返る氷の魔獣達の部屋・・・

様々な部屋を突破し酒呑童子はピコハンよりも早くリトーの元へ辿り着いたのであった。


「見つけたぞごるぁあああ!!!!」


スタジアムの様な部屋に響くその声に退屈そうな表情を見せたリトー。

その表情に以前と違い輪郭がハッキリ見えている事にすら気が付かない酒呑童子は我を忘れて襲い掛かる!

だが・・・


「まさかここまで生きて辿り着くとはね・・・それでも君には様は全く無いんだ。でもそうだな・・・彼が来るまで暇だから遊んであげるよ」


そう言って駆け寄る酒呑童子に向かって手を翳すと白い結界の檻が出現し酒呑童子を閉じ込めた!

リトーもピコハンとの戦いで学んだのだろう、結界は地面の下まで突き破って固定されて酒呑童子が体当たりしてもビクともしなかった。


「てめぇ!!きたねぇぞ!!!ごるぁあああああ!!!」

「まぁそう言わずにこういうのはどうかな?」


結界を殴ろうが蹴ろうがビクともしない、だがそれでも酒呑童子は結界を破ろうと攻撃を続ける。

ズズズ・・・ズズズ・・・

その音は小かったがハッキリと酒呑童子の耳にも届いた。

怒りつつもチラリと視線を向けるとなんと結界が徐々に狭まって来ていたのだ。


「ほらほら!早く脱出しないとぺしゃんこだよ!ははははは」

「てめぇ!!!ふざけんな!!!殺す!!お前は絶対殺す!!!!!」

「はぁ、その状況でどうやって僕を殺す気なのか分からないけどまぁ頑張ってね」


迫る結界に焦りながらも酒呑童子は両手から噴出す血を気にもせずに結界を殴り続けていた!


「まっ暇つぶしにはなったから・・・暇つぶしに潰すってか・・・ははははははは!!!」

「わらうなぁあああああ!!!!」

「まっここまで来れたって事で褒めといて上げるから失敗作はいい加減処分されてね」


そう言って結界が迫りすぎて酒呑童子を小さく囲う形になった時に扉が開く音が聞こえた。


「おっと、もう来ちゃったのか。それじゃ暇つぶしもここまでだな」


視線を向けるとそこにはあのピコハンが居たのであった。

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