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第68話 ピコハン怒りの拳

白いローブの様な物を着た青年が1人そこに立っていた。

その姿は半透明で実体がそこに無いのが直ぐに見て取れる。

ピコハンはその人物の次の言葉を四つん這いのまま待つ・・・


『驚かないんだね・・・とりあえず初めての生き残りと言うことで祝福させてもらうよ』


そう言いながら拍手を小さくする青年。


「お前が・・・ここの?」

『へぇ、単なる子供じゃないみたいだね』


ピコハンの言葉に驚きを見せつつも言葉を続ける青年。

そう、ピコハンは気付いていたのだ。

ここがいつものダンジョンとは違うと言う事を。


『まぁその体じゃ何も出来ないだろうしちょっと話に付き合ってよ、君はリトーには会ったんだろ?』


その言葉に頷くピコハン、四つん這いからその場に胡坐をかいて座りなおしていた。

それを見た青年もその場に胡坐をかいて座る。


『まずは自己紹介かな?僕はホゼ、第4段階の玄武候補だった者さ。と言っても前のだけどね』

「前の?」

『そう、今から9999年前・・・今の玄武と共に第4段階になったんだが最後の最後で選ばれたのがアイツでね。僕は玄武のなり損ないなのさ』


青年は遠い目をしながら話を続ける。


『リトーの妨害をし続けてこうやって玄武候補を殺し続けて来たんだけどまさか最後の年に君みたいな強者に出会えるとはね』

「最後の年?」

『あぁ・・・リトーが永遠を成就させる為に次の玄武を選んでいるのをずっと僕は妨害してきたんだ。玄武の寿命は1万年、今年の大晦日がこの世界の終焉になるのさ』


ホゼがピコハンの目を見つめながら語り続ける。

それはこの世界が終わると言う話、この世界に暮らす全ての生き物はどうなってしまうのか・・・

ピコハンはホゼの話の続きを待つ・・・


『おっとごめんね、どうにも思い出しながら話すと記憶に見入ってしまってね。何処まで話したっけ?そうそう、君は・・・』

「ピコハン、俺はピコハンって名前だ」

『ピコハンね・・・分かった。君は不思議に思わなかったかい?ここに特に理由も無く連れて来られただろ?』

「あ、あぁ・・・」

『それね、この世界の人間の深層意識に僕が関与してそう命令を下していたんだよ。ここへ玄武候補として段階の高い者を呼び込んで殺せばリトーが次の玄武を作り上げるのを妨害できると思ってね。ここは僕の体の中、だからリトーでもこの中へ干渉する事は出来ないんだ』


その言葉にピコハンは納得をした。

自分の手や足が一向に回復する兆しが見えないのは加護がここまで届いていないからなのだ。

いまも少しでも動くと激痛がピコハンを襲う、土の加護で回復しないのを不思議に思っていたのだ。


『この世界は間違っているんだ。リトーが永遠を成就させるためだけに人間と言う種族を長い年月をかけて玄武へ進化する別の生き物へと変えていった。だからこの世界にはもう普通の人間と呼ばれた種族は存在しないんだ。だからもう終わらせるべきなんだと思ってたんだけどね・・・』

「リトーが永遠を成就させるのはいけないことなのか?」

『どうなんだろう・・・でも君も第3段階まで上がっていると言う事は君を思う身近な誰かをダンジョンに食われたんだろ?』


ピコハンの脳裏に一切記憶に無い姉、名前すらも思い出せない妹、そして唯一ピコハンが愛したルージュが思い浮かんだ。


『この永遠にリトーの為だけに続く世界を終わらせる為に僕は諦めるわけにはいかないんだよ。だから・・・ごめん』


そう言ってホゼは立ち上がる。

それと共に部屋の角度が再び変わり座っていたピコハンは転げるように下へと落ちる。

だが少し休んだからなのか足だけで見事に着地をしてホゼを見上げる。


『僕はリトーの永遠を終わらせる為に後1年頑張る・・・だからピコハン、君は死んでくれ!』


そう言ってホゼの体が霧の様に消えた。

それと共に天井の穴から再び大量のスライムが部屋へ流れ込んでくる。

だがピコハンは慌てる事無くそれを見ながら考えた言葉を口にした。


「他の玄武候補をここへ連れて来て殺し続けてきた?」


そう、ホゼのその言葉に引っかかりを覚えたピコハンの脳裏に少年の顔が思い浮かぶ。

自分と同じように人捨てに遭いダンジョンで出会った少年と少女。

カーラがダンジョンに取り込まれて存在の記憶を失い第1段階の玄武候補となったクルスである。

もしかしたら既に・・・そう考えてもおかしくなかった。

彼にはシリアと言う彼に好意を抱いていた異性が居た。

彼女もダンジョンに取り込まれたとすればそれで第2段階・・・

そう考えればかなりの確率でここへ連れて来られていたであろう。

勿論そうじゃないかもしれない、だが今までの話を投合するとその可能性は非常に高いのだ。


「ふざけるなよ・・・」


白骨化した拳を強く握り締めるピコハン、その目の前ではスライムがどんどん集まり巨大化してピコハンを包み込もうとその体を広げていた。

そして、スライムがピコハンを包み込もうとしたその時にピコハンは握りこんだ拳を全力でスライムに叩き込む!


「ふざけるなー!!!!」


そのパンチはスライムの表面どころかその周囲を一気に吹き飛ばしその中に在ったスライムの核を粉々に打ち砕いた!

先程まで一切傷つけられなかったスライム、そのスライムを先程倒した時にスライムと爆風で焼死したクリオネの存在の力が一気にピコハンの体に流れ込んでいたのだ。

それにより今までとは段違いの強さを手に入れたピコハン、それはその一撃が表していた。

スライム自体も今まで様々な玄武候補を進化を続けていた固体だった為に倒した時の存在の力は凄まじかったのだ。

そして、それは今倒したスライムからもピコハンへ流れ込む。

全身に力が漲る感覚を受けながらもピコハンはその怒りに包まれていた。


「いいだろう、俺を殺す気で居るんだろ?だったら俺もお前を殺す気で行ってやるよ!」


そう言ってピコハンは歩を進める。

手足の痛みは怒りで麻痺しピコハンは正面に在った通路へと足を進める。

ホゼの体が消える時にその通路の方へ流れるように消えていったのをピコハンは見ていたのだ。

そして、その道を進んで直ぐにそこに辿り着いた。


『ば・・・馬鹿な・・・その体でどうやって・・・』

「スライムか?倒してきた」


そこに居たのはミイラの様に茶色に染まった殆ど骨だけにしか見えない人間の上体であった。

壁から生えるようにそうしているそれこそがホゼでありこのダンジョンの核である。


『や、止めろ!僕はリトーを止める為に今死ぬわけには・・・』

「どっちにしてもお前は終わりだよ」


そう言ってピコハンは拳に力を込める。

ミイラから半透明のホゼが現れてピコハンを必死に説得しようとするがピコハンは首を横へ振った。

そして、その拳がミイラに叩き込まれると共にその体は粉砕し生えていた壁へヒビが広がっていく・・・


「安心して逝け、俺がきっとリトーをなんとかする」


そうして来た道を歩き始めるピコハン。

徐々にだが歩行と共に足の怪我が治り始めたのを見てホゼが死んでリトーや加護を妨害していた力が消えた事を確認したピコハンは先程の大広間に戻ってきた。

そこには光で出来たあの扉がピコハンを待っていた。

その扉へピコハンは近付き中へ踏み込んだ。

すると・・・


「ぎゃーあははははははは!!!スゲェ!すげぇよ!その手スゲェよ!白骨化しているのにパンチ打ったよ!!」


真っ白の人影が腹を抱えてそこで大爆笑をしているのであった。

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