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TimeSleep

作者: 雪つむじ
掲載日:2016/02/04

カーテンの向こうがひときわ明るくなる。

朝が来た。

瞼の向こうで、天気がそう告げる。

「う……ん……」

ベッドの上で身じろぎをする。

朝は、苦手だ。

『おはようございます』

目覚まし時計の音か。

「ん……?」

いや。

話をする目覚ましを買った覚えはないな。

鼻に吸い込む空気は少し甘く。

まだはっきりしない頭が。

瞼を開けて。

天井は今日も。

見慣れない天井だった。



『おはようございます、ルームサービスのお時間です』

何度目かの、声。

「うん……おはよう……」

刺激が入った瞼は、まだ重い。

気だるい体を、順に確認。

手を握ったり。

腕を持ち上げたり。

「今日は、何月何日?」

声を出す喉は、カラカラだ。

『本日は、2月4日です』

そうか。

「よい、しょ」

ゆっくりと、体を起こす。

何もかけていなかった割には、体は温かい。

床に足を付けると、思ったよりもひやっとして。

『只今、替えの服をご用意します』

そう言ってコツコツと部屋から出ていった目覚まし時計は、どうやら自分で動けるらしかった。

「ここは、どこだろう」

腰掛けているベッドから、立ち上がる気力がまだわかない。

気力がわかないというより、筋力がまだ湧いてこない。

自分の体を支えている腕も、小刻みに震えて。

見やると。

窓の外は明るく、天気だと思っていた空はグレーで。

白い羽虫が、ちらちらと降ってきているようだ。

「ホテル?病院?」

壁は冷たく。

白く。

ベッドの傍まで続いていて。

手を伸ばして触れたそれは。

金属のような手触り。

「クリーンだな」

思わず、フフッと。

笑いがこぼれた。

『お待たせしました』

開いたドアから、着替えの入ったカゴが入ってきた。

合わせのシャツに、ゆったりとしたズボン。

下着一式。

今着ているものと、大差ない。

「脱いだものは?」

『そのカゴにお入れください』

もちろん、カゴは喋らない。

目覚まし時計の髪は長く。

すらっとしていて。

「とりあえず、見られていると恥ずかしいかな」

そう言っても、どうやら気にしないらしい。



着替えると、思ったよりも寒くなかった。

空調が効いているのだろう。

用意された靴を履いて、改めて窓際まで歩いていく。

世界は見下ろせる位置にあって。

空は思ったよりも近くて。

地面は、空と同じ色。

「ここは?」

『ここは、という定義がわかりません』

そうだな。

「水が、飲みたいな」

『ご用意いたします』

そう言うと、また出ていく。

コツコツ、コツコツ。

規則正しく、音が響く。

コンプレッサーの音も、エアポンプの音もしない。

バイタルゲージのディスプレイすらもない。

なのに。

「外は、どうしたのかな」

嵌め殺しの窓は開かない。

乾いた目で見ても、動く影が世界にはいない。

「僕だけか」

わだちの跡も。

獣道も見えない。

『お待たせしました』

ガラスのコップに入った水は、少しねばっとして。

「おいしくない」

半分も体が受け付けず。

その代わり、瞼はまたくっつきそうだ。

「次はいつ?」

『次の定義がわかりません』

ガラスのコップに聞いても無駄か。

部屋のベッドは、いつの間にか新しいものにかわっていて。

「今度はこれ?」

『ベッドメイキングは完了しております。以前よりもよくお休みいただけます』

そうか。

また、すぐに眠るのか。

「起きている時間より、眠っている時間の方が長い感じだ」

再びぼうっとし始めた頭は、きっとさっき飲んだ水のせいだろう。

『あさが来たら、お声をかけさせていただきます』

そう言った部屋は、独りでに消灯されて。

『お休みなさいませ』

やや甘い空気と共に。

瞼を。



まどろみの中で思い出す。

窓から見えた世界は、広大な冷却空間。

ふっていた羽虫は、自由落下する冷却された塊の欠片。

空も地面も。

円筒形のこの世界では同じ色。

目的地に着くまでは。

ベッドメイキングのようなイレギュラーが無い限り。

誰も、目を覚まさない。

夢は、見ない。

追い求めている、長い旅の途中だから。

たまにジャンル違い。


ありがとうございました。

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