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初期練習作(短編)

幼き友情

 たくさんの群集が群がっている。

セール品は安くて良いものばかりだ。

先を争うようにカゴに詰めていくお客さん達は、

皆目が血走っているように見えた。

泣き叫ぶ子どもがひとりいる。

お母さんとはぐれてしまったのかもしれない。


 私は、買い物に興味が無い。

ただお母さんと手を繋ぎたいだけだ。

必死で人ごみの中で、目当ての人物を探すと、

すぐにお母さんは見つかった。

何かワンピースのようなものを試着していた。

私がいなくなった事、気づいてない?

私の頭に血が上った。


 「ごめんね。はぐれちゃって。大丈夫だった?」

お母さんは優しい。

私はぎゅっと手を握った。

「もう少しだから、おとなしくしていてね」

私は逆襲することに決めた。

もう一度いなくなる。

ラックの下の、布がかぶせてあった所に潜り込もうとした。

ここなら誰も来れないと思う。

布から光が漏れて、中は薄暗い。

誰かと目が合う。

私と同じくらいの年の、先客がいた。

あの子も隠れているんだ。

私は彼と共同戦線を張ることにした。


 「あなたも悪戯しているの?」

聞いたが、反応がない。

向こうも困っているようだ。

しゃべれないのかな?

「あなた、いくつ?名前は?」

「デンワ……ウチニ、カエル」

節くれだった人差し指を差し出してくる。

私は一瞬で状況を把握した。

お母さんを呼んでこよう。

話はそこからだ。


 お母さんは買い物が終わって、

私を探していたようだ。

出会うと厳しく叱責された。

しかし、男の子の話をすると、

興味を抱いたようだった。

あわてて現場に駆けつける。

あの子は、どこにもいなくなっていた。


 惜しかったなあ。

私も、主人公になれると思ったのに。

まるで映画みたいにね。


 後日、その話を友だちにすると、

必ず映画のタイトルが答えとして返ってくる。

私ね、そういうことを言いたいんじゃなくて、

ただ、良い友だちになれそうだと思ったんだ。

またいつか、彼と会えたらいいなあ。

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