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99 ルーチェさんの謎

 ――翌日、俺とデヴィッド兄さんは図書館迷宮第五層の閲覧室にいた。

 切り裂き魔(リッパー)事件については進展がなかったので、兄さんは本来の業務である司書としての仕事を少し進めておく気になったようだ。

 ……というのは建前で、本当は、


「――それでは、おふたりは連続殺人事件の捜査に当たっているのですか」


 言うまでもなく、ルーチェさんに会いに来たのに決まっている。

 相変わらずの野暮ったい亜麻色の三つ編みと大きな丸眼鏡だが、元が整っているし、何よりほんわかした雰囲気がにじみ出ている。ルーチェさんと話していて癒やされるのは何もデヴィッド兄さんだけではない。

 今のセリフも、こちらへの興味と感心とが自然と伝わってくる口調だった。


 捜査の内実について漏らすわけにはいかないので、俺と兄さんは話をいろいろに組み替えてルーチェさんに話している。

 そもそも話すなというつっこみはあるかもしれないが、ルーチェさんはなかなかの聞き上手なので、兄さんとしても考えが整理されるようで助かるらしい。

 ……もちろん、下心もあることは間違いないが。


「つまり、その貴族の方が、何かを知っていそう、ということですか」


 イルフリード王子のことはとある貴族ということでルーチェさんには説明していた。


「ですけど、いちばん気になるのは、どうやって切り裂き魔(リッパー)は、行き来できないはずの旧市街と新市街の両方で、一夜のうちに事件を起こすことができたのか、ということですね」

「ええ、そうです」


 兄さんが我が意を得たりと頷いた。

 ちなみに、図書館にいる間はデヴィッド兄さんも眼鏡をかけている。捜査中はかけていなかったのだが、観察眼は俺よりずっと鋭かった。そういうのは単純な視力の問題ではないようだ。もっとも、兄さんもこの世界にしては目が悪いというだけであって、前世でいったら0.6くらいの視力はあると思う。


「その貴族の方が知っていらっしゃることは、必ずしも事件とは関係がないのかもしれませんね。仮に被害者の方と知り合いだったとしても、それで湖が渡れるようになるわけではないのですから」


 たしかにそれはそうだ。王子の動揺が意外だったせいで印象に残ってしまったが、事件全体の中ではマイナーな問題にすぎない可能性もある。あの場でしゃべらなかった以上は相応の理由があるはずで、相手が王子である以上は、よほどの大義名分がない限りは追求することも難しいだろう。


「たしかにルーチェさんの言う通りです。ただ、彼はそのぅ……竜騎士団の関係者なのです。彼の抱える秘密が事件に関係がなかったとしても、彼が事件の重要な鍵を握るひとりであることも事実なのですよ」

「竜騎士団……ですか。それは、どのような?」


 ルーチェさんの世間知らずが炸裂し、俺とデヴィッド兄さんは目を剥いた。

 この王都に住んでいて竜騎士団を知らないなんて……。

 兄さんが気を取り直して説明する。


「文字通り、騎竜――数世代に渡って交配し飼い慣らしたワイバーン種の魔物を駆る騎士団ですよ。その設立は、たしかイルガンド3世の時代だったかな。今から4代前のことですね」

「そうなのですか……世間知らずでお恥ずかしいです」


 ルーチェさんはそう言うと、片手の人差し指を頬に当ててかわいらしく小首を傾げる。


「なるほど、騎竜さんに乗れば、両市街を往復できるということなのですね。だから、竜騎士団に関係のある貴族の方が重要だと」

「今のところ、両市街を往復するもっとも常識的な手段は騎竜ですからね」

「魔法ではどうでしょうか?」

「……僕の知る限りでは、湖を往復できるほどの間、身体を浮かせることのできる魔法はありませんね。エド、どうだい?」

「俺ならいくつか思いつくけど、相当なMPが必要だね」

「まず思いつくのが難しい上に、エド並みのMPが必要か。そんな化け物がそうそういるわけもないね。宮廷魔術師クラスでも無理だろう」


 化け物で悪かったな。


 とにかく、騎竜を持つ竜騎士団ならば、新旧両市街を往復することができる。

 そして、イルフリード王子は竜騎士団の団長だ。


「それなら、竜騎士団の方々をひとりひとり調べていけばいいのではないでしょうか? いえ、デヴィッドさんならもうお考えだと思いますけど」


 ルーチェさんの言う通り、容疑者が竜騎士しかありえない以上、その線で調べていけばよさそうだ。

 厩舎から騎竜を持ち出すのは難しいという話だったが、それはあくまで表向きの話だと考えることもできる。内部の人間になら騎竜を持ち出す方法があってもおかしくはない。それこそ、騎竜に乗って新市街の酒場にくり出すための抜け道……なんてものがあるかもしれなかった。

 ただ、竜騎士団長は要職だし、しかも今はこの国の第一王子がその地位にある。

 竜騎士たちを追求するのなら、それ相応の状況証拠を手に入れてからでなければならないだろう。


 しかし、意外なことに、兄さんは首を振った。


「ところが、実はそれだけではないんです。もうひとつ、噂になっている存在がいます」

「噂? 切り裂き魔(リッパー)以外の噂なんて聞かないけど?」


 ルーチェさんに向かって言った兄さんに、俺が聞く。


切り裂き魔(リッパー)が出てくる前までは、たまに耳にしていたはずだけどね。仮面騎士のことだよ。夜、困っている人のもとに空から現れて、悪人を成敗して去っていくという噂の、正義の味方さ」


 ――仮面騎士。そういえばそんな話があった。


 いわく、新市街の夜に閃く一筋の月光がある。悪に虐げられた人々の声に応じて射し込むその月光の名は、《月騎の仮面マスク・オブ・ムーンライト》。

 もし君がモノカンヌス新市街でスリや置き引きや恐喝や強盗に出遭うことがあったら、大きな声でその名を呼ばうがいい。

 力弱き善良な市民の叫びに、必ずやその者が応じるであろう。

 ()の者の名は、《月騎の仮面マスク・オブ・ムーンライト》。

 月神ルラヌスの使者にして、悪人どもに天罰を下す者なり。


 ……とまあ、こんなような文章が書かれたビラが、新市街のあちこちに貼り出されるという騒動が、数ヶ月くらい前にあったのだ。

 その後切り裂き魔(リッパー)事件が起きたせいですっかり忘れてしまっていた。


 でも、


「あれって本当の話だったの? てっきり絵入り新聞の仕組んだデマだとばかり」

「絵入り新聞に、まったく情報のないところから奇抜なネタをでっち上げるほどの独創性はないさ。元となる存在はちゃんと確認されている。新市街でスリやかっぱらいを捕まえたことが十数回、強盗を叩きのめしたことが3回、あわや殺されるというところに駆けつけて犯人を捕らえたことが1回、痴漢の現場を押さえて犯人の身柄を巡査騎士に引き渡したこともある。

 ただ、毎度成功しているわけじゃない。殺人現場を発見して巡査騎士に通報しただけのこともあるし、集団スリにまんまと逃げられたこともある。それでも、十分な働きをしていると言えるだろう。少なくとも平均的な巡査騎士の何倍もの働きをしていることはたしかだ」

「正義の味方さんですねっ!」


 ルーチェさんが手を叩いてそう言った。


「そう考えると大したものだね。でも、不思議だな。いくら新市街には治安が悪い地域もあるとはいえ、そう毎回犯罪の現場に駆けつけられるものなの?」

「それについてはエドの言う通りだ。仮面騎士は、その名の通り、鷹を模した純白の鉄仮面をかぶった騎士なんだけど、目撃証言によれば彼は空から降ってくるというんだ」

「空から?」

「おそらくは、仮面騎士は空を飛ぶスキルか魔法か、テイムされた魔獣かを所持してるんだろう」

「そんなのがあるの?」

「さあ、僕が輪廻神殿に問い合わせたところでは、そのようなスキルや魔法は確認されていないという回答だった。でも、確認されていないスキルってことなら、今僕の目の前にとんでもない例外がいるからね」


 そう言って兄さんが俺を見る。

 俺は頬をかきつつ、


「テイムされた魔獣って?」

「これも半ば伝説のような話なんだけど、太古の昔には鷲獅子(グリフォン)を飼いならして乗用にする技術があったという話がある。そこまで行かなくても、竜騎士団が騎竜を所有しているように、個人で空を飛べる魔物を飼いならしている者がいないとは言い切れない。もっとも、そんなことができるのだったら即刻国が召抱えようとするレベルの才能だけどね」

「じゃあ、仮面の騎士は鷲獅子(グリフォン)だか騎竜だかで空を飛んで新市街を監視してるってことか? それで事件が起きたら急降下して犯人を捕まえる……と」


 何ともご苦労なことだ。


「いったい何が目的でそんなことを?」

「さぁね。名誉欲かもしれないし、純粋に犯罪を減らしたいのかもしれない。神への請願をかけていて、そのために必要な条件を満たすためにやっているという可能性もある。とにかく、切り裂き魔(リッパー)事件が起こるまでは、彼――仮面騎士が新市街の噂の中心だったんだよ。悪を挫き、弱きを助ける正義の味方だってことでね」


 そこまで聞いて、ふと、俺はシエルさんのことを思い出した。

 シエルさんには【空歩】という空中を踏みしめることのできるスキルがある。実力的にも十分以上に仮面騎士が務まるだろう。

 そういえば、「ヒーローは正体を隠すもの」なんて意味深なことも言っていた。

 とはいえ、断定もできないだろう。噂を聞く限りでは、仮面騎士は男性だと思われているようだし。

 しかし、それにしても……


「でも……そいつ、怪しいよね?」

「怪しいね……事件現場に現れるってだけでも、文句なしに怪しい。うがった見方をすれば、犯罪を犯しそうな者を監視して、犯罪を犯すのを待ってから捕まえてるんじゃないかと疑ることもできる。捕まえるべきだって声は以前からあるよ。王都の治安に責任を持つ巡査騎士団への侮辱だって言う人がいてね。国王陛下は『面白いから捨て置け』とのたまったらしいけど」


 あのオッサンなら言いそうだ。


「とにかく、切り裂き魔(リッパー)事件が起こったことで、彼の立場は微妙なものとなってきた。彼が切り裂き魔(リッパー)だった場合はもちろん、もし切り裂き魔(リッパー)ではなかったとしても、その場合仮面騎士は切り裂き魔(リッパー)に対抗できていないということになってしまう」

「仮面騎士が切り裂き魔(リッパー)でなかったとしたら、切り裂き魔(リッパー)は巡査騎士だけじゃなく仮面騎士からも逃げおおせてるってことか。

 逆に、仮面騎士が切り裂き魔(リッパー)だった場合は、所有しているらしい空を飛ぶ手段を使って、新旧両市街を股にかけて切り裂き魔(リッパー)事件を起こしてるってことになるんだね」


 いずれにせよ、庶民の味方だった仮面騎士とやらは、今著しく面目を損なう事態になってるってことだな。

 今頃躍起になって切り裂き魔(リッパー)を捕まえようとしている可能性もある。「仮面騎士VS切り裂き魔(リッパー)」というのもなかなか興味深いカードかもしれないが、俺たちは高みの見物を決め込んでいられる立場じゃない。仮面騎士が切り裂き魔(リッパー)を捕まえるのならばともかく、返り討ちに遭うようなことがあったら大変だしな。


「――僕はまず、仮面騎士を探すことから始めたいと思う」


 デヴィッド兄さんが言った。


「兄さんは、仮面騎士が切り裂き魔(リッパー)だと思っているの?」

「えぇ~っ!? その人は、絶対悪い人じゃないと思います……よ?」


 俺の言葉に、ルーチェさんも声を上げる。


「たしかにルーチェさんの言うように、その可能性は低いでしょうね。今回のように一夜にして両市街を往復するような事件を起こしてしまえば、自分が疑われることは明らかなのですから」


 兄さんはルーチェさんに甘いから、推理も少し甘くなってないか?


「そこまで考えてない可能性は? 仮面騎士が自己顕示欲から独自の治安維持活動を行っていたのだとしたら、それだけでは飽き足りなくなって自ら切り裂き魔(リッパー)事件を起こすようになったのかもしれない」

「否定はできないところだね。ただ、僕は仮面騎士は切り裂き魔(リッパー)ではないと推理しているよ。というより、仮面騎士の正体については既に大まかには絞ることができている」

「へっ!?」


 俺は思わず間の抜けた声を上げてしまった。

 いったい、どんな思考過程を経れば、これだけの情報から仮面騎士の正体が推理できるんだ?

 そして、切り裂き魔(リッパー)じゃないと思っているなら、どうして仮面騎士にこだわるのか?


「そんなわけだから、明日の夜は張り込みをするよ、エド。君には例の能力があるから、見張りとして仮面騎士を見つけてくれることを大いに期待している」


 ルーチェさんの手前伏せたようだが、【不易不労】とさまざまなクラスの能力があれば、新市街の上空で網を張っているらしい仮面騎士を見つけ出すのは難しいことではないだろう。

 頷く俺を見て、兄さんは今度はルーチェさんへと視線を向けた。


「ところで、ルーチェさんは、夜の帰り道は大丈夫ですか?

 もしよろしければ……そ、その、僕があなたを――」


 おお、兄さんがルーチェさんを誘っている!

 図書館司書というと戦闘力的には低そうなイメージがあるが、前にも述べた通り現在のデヴィッド兄さんは宮廷魔術師を凌駕するレベルの魔法使いである。たとえ切り裂き魔(リッパー)に襲われても不覚を取ることはないだろうと思う。


「えっ!? い、いえ……大丈夫、です……よ?」


 ルーチェさんがわたわたと手を振って、兄さんの誘いを断ろうとする。


「し、しかし、あなたのような可憐な女性が夜に出歩くというのは……」

「か、可憐だなんて、そんな……っ! そうじゃなくて、わたしもそれなりに魔法が使えますから、変な人に絡まれても大丈夫なんですっ」


 そう言ってルーチェさんが腕に力こぶを作る動作をする。

 ……うん、ちっとも膨らまないね。

 兄さんはルーチェさんの真っ白い二の腕を食い入るように見つめている。むっつりスケベめ。


「兄さん、兄さん」

「な、なんだい、エド」

「女の人の二の腕のやわらかさってさ……アレのやわらかさと同じなんだってよ?」

「あ、アレ……」


 俺はちらりとルーチェさんの胸元に視線を送る。

 兄さんはそれだけでわかったらしい。顔を真っ赤に染め、湯気を吹き出しそうな様子になった。

 そんな兄さんに代わって俺が言う。


「魔法の腕があるのはわかりましたけど、実際危ないですよ? うちの兄も魔法なら相当なものなんで、万全を期す意味でも送らせてはもらえませんか?」


 なんで俺が代わりに頼んでるのかと思わなくもなかったが、ルーチェさんにそう頼んでみた。


「えっ……いえ、そのぅ……」


 ルーチェさんがバツの悪そうな顔をする。

 ひょっとしたら、本名を明かさないあたりの事情と関わっているのかもしれないな。

 しかしそれにしたって、旧市街にも切り裂き魔(リッパー)が出ている現状、身の危険を覚えてもよさそうなものなんだけど。

 ……ひょっとすると、ルーチェさんは言葉以上に強いのかもしれないな。

 こうして閲覧室で話していても、驚くほどに豊富な知識の持ち主だ。魔法についても宮廷魔術師並みの腕前を持っていたとしても不思議じゃない。あるいはそれこそ、お忍びでやってきている宮廷魔術師だったという可能性まである。

 あまり人のステータスを覗くのは趣味が悪いと思ってこれまで控えていたのだが、ここはルーチェさんの身の安全と、兄さんの心の平穏のためにちょっと見させてもらおうか。

 俺は【真理の魔眼】を可能な限り気づかれないように気をつけながら使ってみる。

 ……って、これは?


「……? どうかなさいましたか?」


 不思議そうに首を傾げてくるルーチェさんに、俺は慌てて首を振る。


 今――【真理の魔眼】が、ルーチェさんを素通りした(・・・・・)


 もちろんステータスも見られない。


 アスラの時は、バグってはいたものの、なんとかステータスが表示されてはいた。

 シエルさんはステータスの一部が《善神の加護》で隠されていたが、それ以外の部分は普通に見ることができていた。


 しかし、今回はそもそも、ステータス自体が見られない。

 【真理の魔眼】が手応えなしに素通りした、ということは、【真理の魔眼】によって打ち出された情報探知用の目に見えない極細の魔力の針がルーチェさんの身体を素通りしたということだ。


 俺は今一度、ルーチェさんの顔をじっと見る。


「ど、どうしました……? 顔に何かついてます?」


 ルーチェさんの様子はいつもどおりに見えた。

 つまり、ルーチェさんが何らかのスキルで【真理の魔眼】による探知をかわしたというわけでもなさそうだ。


「いえ、何でも」


 俺が首を振るのを、デヴィッド兄さんがじっと観察していたが、兄さんはこの場では何かを言うことはなかった。代わりに、


「無理にとは言えませんからね。でも、もし必要なら、僕でもエドでも、声をかけていただければ家までお送りするくらいはしますから」

「あ、ありがとうございます……。でも、大丈夫ですからっ」

「そ、そうですか……あの、これもよろしければ、なのですが……一度、僕の実家で、し、食事でも……」


 兄さんがめげずにルーチェさんを誘おうとする。

 しかしそこに、


『――エド?』

「……メルヴィ?」


 メルヴィからの【念話】が入った。

 デヴィッド兄さんとルーチェさんが揃って俺を見た。


『まだ図書館にいるの? わたしもちょっと調べたいことがあるから、そっちに行ってもいい?』

「メルヴィが? 珍しいな。場所はわかる?」

『【念話】をたどればなんとなくわかるわ』

「メルヴィならあの番人は突破できるか。わかった、待ってるよ」


 メルヴィも王に許可を出してもらって図書館迷宮のビブリオキーを手に入れている。また、《電磁バリア》の時に協力してもらったから、俺とデヴィッド兄さんが突破したあの番人の試問にも引っかからないだろう。

 メルヴィとの会話を終えた俺に、兄さんが聞いてくる。


「メルヴィが来るのかい?」

「うん、調べたいことがあるってさ。ルーチェさん、俺の友人が――って、あれ、いない?」

「ルーチェさんなら、用事を思い出したって言って、あわてて出て行ったよ」


 俺は〈仙術師〉で周囲の気配を探ってみるが、ルーチェさんの気配はもうなかった。

 本当に急いでたみたいだな。兄さんともども引き止めてしまって悪いことをしてしまったか? いや、ひょっとしたら兄さんのアプローチを切り抜けるために俺を利用したのかもしれない。だとすると、ルーチェさんにとって兄さんは脈なし……?

 それに、さっきの素通りの件だ。直接追求するのもはばかられるが、いったいどう考えたらいいのか……。


「……そっか。まぁ、メルヴィのことを説明するのも大変だし、助かったかな?」

「ルーチェさんになら、紹介してもいいと思うけどね。何となく、メルヴィとは気が合いそうな気がするよ」

「そうだね。ま、次の機会にでも紹介しよう」


 そんな話をしているうちにメルヴィがやってきた。

 さっきの【真理の魔眼】素通りの話を2人にもしてみたけど、メルヴィは「わからない」と言うし、兄さんも「いくつか可能性はあるが……」と言って黙りこんでしまった。

 が、そうしていてもしかたがないので、俺とデヴィッド兄さんでメルヴィの調べ物を手伝ってから、俺たちは夕ごはんに間に合うように図書館迷宮を出た。

ルーチェについて「なぜ【鑑定】しない!」というつっこみをいただいていたのですが、ここで【鑑定】するためでした。

他にも【鑑定】していない人物はいますが(イーレンス、イルバラなど)あまりステータスばかりでもうっとうしいと思いますので、進行上必要ないものに関してはなるべく省略してます。


次話、一週間後くらいになると思います。

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