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少女達の白百合籠  作者: すもも 遊
1.無垢で愚かな少女は外道な道化に恋をする
9/19

閑話 彼女と私―2

まだまだ続いてしまいます。



えっと、何処まで話したんだっけ。そうそう、入学式の話が終わったんだっけな。



次の日に私は凛音ちゃんに一方的な挨拶をして、その日から一週間、ずーっと付き纏った。

自分でもそれにはびっくりした。今まであんなに他人と一緒にいたいなんて思わなかったから。

でも、凛音ちゃんと一緒にいるのは居心地がいいんだよ?いっつも沈黙だから、喋らなくても気まずくないし、もともとお喋りな性格の私は黙って聞いてくれる凛音ちゃんと相性がいいのかも。……聞いてないだけかもって?いいの。聞いてるように見えるんだから。

それに、見てるだけでもいいんだし。えーっと、眼福、っていうのかな。目の保養ともいうよね。

もうとにかく何でもいいから一緒に居たい。一緒に居られればそれでよかった。


けど……。お昼休みはいつもいつでも、見つからない。どこでご飯食べてるんだろう。予鈴の1、2分前になると、ふらふらーっと戻ってくるし。私は一緒に食べたいのになー。

うん、ほんとに、いっつもどこに行っちゃうんだろう。探せる限り探したけど全然見つからないし、そもそも昼休みはそんなに移動する時間もないんだよねー。かれこれ一週間、どこにそんな隠れ家みたいな場所があるんだろう。

今日は一人で凛音ちゃんの机を眺めながらお弁当を食べてる。昨日は、えーっと、なんかよくわかんない人が一緒に居たかな。私はずっと凛音ちゃんの机を見てたけど。

じーっと眺めてると、ある物が目に付いた。椅子に無造作に引っ掛けられている、制服のブレザーだ。

うん、今日はあったかいもんねー。私もブレザーは着てないし。

……。…………。…………あ、そうだ!

いいこと思いついちゃった。

これはちょっとした自慢なんだけど、私の鼻は犬並みによく利く。特徴的な匂いや人が多くない場所なら、匂いだけでその人がどこにいるかわかる。えっへん、すごいでしょ?

そーっと凛音ちゃんのブレザーを手に取る。……うん、誰も見てないよね。よし!

深呼吸の要領で、思いっきり匂いを吸い込んだ。


おおっ!他の女子生徒と違う化粧臭くなくて、香水や何かの甘ったるい匂いもしなくて、これは匂いというより香りだ!

なんだろう、花の匂いでもないし……、柑橘系の匂いかな?鼻に残らない、すっと抜けるような、それでいて印象深い香り……。


……あの、ごめんなさい。変態みたいなこと言って本当にごめんなさい。でも、鼻が利くせいで匂いフェチなんですよ!いい匂いがしたら興奮しちゃうじゃないですか!……え、しない?……そうですか、ごめんなさい。


そんな事より、これで凛音ちゃんを見つけられる。

匂いって結構場所に残るんですよ?ほんの少しですけど。

うんうん、なんかこの辺いい匂いするなーって思ったら凛音ちゃんの匂いだったんだね。やっぱりね。

れっつ、凛音ちゃん探し!


学校が綺麗ってやっぱいいよね。校舎の匂いはしないし、臭くないし。

うん、これくらいなら嗅ぎ分けられる。ふむふむ。こっちか。

匂いを辿って行き着いたのは……、……トイレ?

……うーん、確かにこっちだったしなぁ。間違えてるはずはない、と思うし……。

うん、とりあえず入ってみよう。見つからなかったら、また探そう。


入ってみると、驚くほどに掃除が行き渡っていて、無臭。全国のトイレはここを目標に頑張って欲しいってくらい。

……あ、凛音ちゃんの匂いだ!やっぱりここで間違いはなかったみたい。それにしても無臭のトイレありがとう。清掃員さんもありがとう。貴方達のおかげで凛音ちゃんが見つかりました。

どんどんと戸を叩いてみたけど、反応ナシ。いいもんね、授業始まるまで居てやるもんね。

しばらく待ってると、中から溜め息のような声が聞こえてきた。

もっと待ってると、またもや溜め息を吐きながら出てきてくれた。

嬉しくて、思わず抱きついてしまう。なんだか私に心を開いてくれたような気がしたから。

凛音ちゃんは意外と背が高くて、思ったよりもっと華奢だった。うわ、腰ほそっ!何でこんなに細いの、死んじゃうよ!



「凛音ちゃん、明日はお昼ご飯一緒に食べようね!」

「…………はぁ」



相変わらず無表情に、溜め息と共に頷いてくれた凛音ちゃんは、なんだかんだ言ってとっても優しい人だと思うな。



それからはいい事尽くめだった。

凛音ちゃんは次の日からお昼ご飯を一緒に食べてくれるようになったし、話し掛けたら答えてくれるようにもなった。それにね、呼び捨てにしてもらえるようにもなったよ!最初は「桜野」って呼ばれてたけど、頼み込んだら「雪乃」って呼んでくれるようになった。やっぱり優しいね。

そうそう、凛音ちゃんの声はすっごく耳に心地いい声なんだ!女の子にしては珍しい、落ち着いた低い声で話すの。喋り方もちょっと変わってるけど、そこも含めて凛音ちゃんの声は最高だと思う。



「ねぇねぇ、凛音ちゃん!」

「なんだい、雪乃?」

「その焼きそばパンっておいしいの?」



凛音ちゃんのお昼ご飯はいつも焼きそばパン一つだけ。とってもおいしそうだけど、一つしか食べないからそんなに細いんじゃないかな。凛音ちゃんはもっと太ったほうが健康にもいいと思う。

凛音ちゃんは私に焼きそばパンのおいしさを語ってくれた。……無表情で。こればっかりはまだ慣れないけど、しょうがないかな。

凛音ちゃんは、無口だけど一度喋りだすと長く喋ってくれる。いい声がいっぱい聞けるから嬉しいけどね!



「一口ちょうだい!」

「……どうぞ」



一つしかないお昼ご飯をもらうのはダメかなーって思ったけど、食べたくなってしまった。聞いてみるとあっさりくれる。うぅ、ごめんね、少ないのに。

あっ、ほんとだ、おいしい!それに、凛音ちゃんと間接キスだね、なんか恥ずかしいな。本人は全然気にしてな……、……いや、焼きそばパンの残量が減ったのは結構気にしてるっぽかった。ごめんね!



……でも、私、調子に乗りすぎたのかもしれない。凛音ちゃんが私に心を開いてくれたって勘違いしていた。凛音ちゃんは言葉にはしなかったけど、私は人間嫌いだ、って態度で示してくれてたのに。



雪乃ちゃんが勝手に動くせいで無駄に長くなってしまいます。多分、次でこの子の視点は終わります。


それにしても凛音ちゃん凛音ちゃんと五月蠅い子ですね。依存体質なのかもしれません。


誤字脱字、不自然な文章等ありましたらお知らせ下さい。


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