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少女達の白百合籠  作者: すもも 遊
1.無垢で愚かな少女は外道な道化に恋をする
7/19

5話 類が友を呼んだ?

無駄に長い



はーいこんにちはー。私だ。

えー、現在絶賛トラブル中。



前門の虎後門の狼。

今の状況を一言で表すとこうなる。いや、ならないのかもしれないけど。

前にいるのは虎と表現してもいいけど、後ろにいるのは……、狼というよりは、兎だな。

なんにせよ、逃げられない事に変わりないけど。


さて、私の目の前にいる虎について改めて説明してやろう。

赤間 真紅あかましんく二年生。私達の先輩だな。赤みがかった茶髪をワックスでそれっぽく――失礼、あちこちを跳ねさせた、なんというか不良っぽい髪型に仕上げていて、制服をこれまた不良っぽい着崩し方をしている。そして肝心の顔は客観的に見ればかなり整っている。が、今はお怒りのようだ。眉間に皺が寄って物凄い形相になっている。



……マジで何したの。これ相当おこだよね。カム着火インフェルノなカンジだよね。何したらこんな形相でリアル鬼ごっこに至るんだよ。

なぁ雪乃さんよぉ!



「…………」

「…………」

「…………」



…………。

誰 か 喋 れ よ 。

何で二人して無関係の私に丸投げしようとしてんだ?喧嘩は当事者同士が解決するのが筋だよな?何度も言うけど私は関係ないよな?何故お前らは間に私を挟んで対峙してんの?もう一回言うけど私関係ねぇっつーの。



「…………」

「…………」

「……り、凛音ちゃぁぁん……」



涙目で私に縋るな。自分で売った喧嘩は自分でどうにかしなさい。無関係な人間を巻き込んではいけません。

そして何か言えや不良もどきが。そもそも何故一年女子と二年男子がリアル鬼ごっこしてんだよ先輩大人気ねーなオイ。


さて、ここまで約十秒。相変わらず地の文ってすげー。

多分これどっちも自分でどうにかする気はないよな。面倒臭いがしょうがねぇ。私が事情聴取してやろう。解決するかは事情次第だけどな。



「……雪乃、何故このような状況に至ったのかをわかりやすく、単純に明快に私に説明してくれないか?」

「ふぇ?えっと、うん。あのね……、さっきね、購買で焼きそばパンを食べようと思って二つ買ったの。そしたら、この人が追い掛けてきたの」

「雪乃……、とてもわかりにくいよ。そんな説明じゃこの状況は半分も理解できやしないよ。それに、この人じゃない。この方は二年生だ。……先輩、ちょっと事情をわかりやすく・・・・・・説明してもらっていいですか?」



わかりやすく、の部分を強調する。後ろで雪乃が「わ、わかりにくくないもん……」とかぶつぶつ言ってるけど無視。

え、だって今の雪乃の説明じゃ何もわからないよな?少なくとも先輩が追い掛けてきた理由が全く説明されていない。そして二つ買った理由も。

先輩は数秒黙っていたが説明してくれた。内容を纏めていたのかな。



「俺も、そいつと同じタイミングで購買の焼きそばパンを買おうとしていたんだ。それは最後の二つだったが購買には他に誰もいなかったから買えると思った。だけどな!?そいつが二つとも買っちまったんだよ!俺も欲しいから譲ってくれっつっても聞きゃしねぇ!一人で二つも食うつもりかこの業突く張りが!金なら返すっつってんだろうが!」



……なるほど。理解した。最後の方は説明というよりは雪乃への文句になってた上に物凄い怒鳴りっぷりだったけど、理解した。大分わかりやすかった、わかりやすかったんだが……。一言だけ言わせてほしい。


幼 稚 園 児 か お 前 ら は !


おやつの取り合いみたいな低レベルな喧嘩してんじゃねぇよ高校生!しかも雪乃は何で二つ買ったのを譲ってやんねぇんだよ!


……失礼、荒ぶりました。

何この下らない喧嘩。解決する気失せたわー。

で、事の当事者はというと……、先程の先輩の言葉を皮切りにこれまた低レベルな言い合いを始めていた。アホかお前ら。いやアホだろお前ら。そして私を間に挟んでいる事を忘れないで欲しい。



「ち、違いますー!これは凛音ちゃんと一緒に食べようと思って二つ買ったんですー!一人で二つなんて食べません!」

「じゃあお前はそのツレに頼まれて買ったのかよ!?」

「それも違うけど、二人で食べるんだってば!」

「あぁ!?意味わかんねーよ!」

「うるさいばーか!」

「んだとゴルァ!」



……うるさっ。帰っていい?ねぇ、帰りたいんだけど。

キャンキャン吠えやがって……うるせぇな……んな下らねぇ事で邪魔しやがって……勝手にやってろ、私を巻き込むなよ……。

…………ああもう本当五月蠅い。



「譲れ!」

「やだ!」

「譲れ!」

「やだ!」

「ゆず」

「うるさいっ!黙れないのかお前たちはッ!」

「!?」

「ひぅっ!」



思わず大声で怒鳴ると、二人ともピタっと動きを止めた。先輩の方は若干顔を引き攣らせているし、雪乃は涙目を通り越して決壊寸前のダムみたいな事になってた。今まで大声なんて出さなかったし、怒る事もなかったから当然か。



「…………私は帰らせて頂く。先輩、道を開けてください」

「おい、待て……っ!?」

「くどい」



横を通り抜けようとしたら肩を掴まれた。やめろ、私は関係ない。

手をとって、投げる。細くて大きな体が綺麗に一回転して、勢いよく地面に叩きつけられる。

……受身を取れるように投げたつもりだったけどな。まぁいい。

雪乃が手に持っていたパンを片方奪って、倒れたまま動く気配を見せない先輩の隣に置く。



「それでは、失礼」

「…………」



立ち尽くす雪乃と動かない先輩を顧みる事なく私は学校を出た。



†   †   †   †



結局、あの後雪乃は付いてきた。

学校を出てしばらくして、息を切らした雪乃が私に追いついてきた。そのまま並んで、無言で歩き続ける。

いつでも無口な私は勿論、普段は五月蠅い程喋り続ける雪乃もずっと黙ったままだった。


別に私は他人といても沈黙が苦にならない、むしろ沈黙している方が落ち着くから構わないけど。雪乃は落ち着かないらしく、時折口をパクパクさせている。……魚のモノマネかよ。


ふと、疑問が湧く。そのまま口に出した。



「ねぇ雪乃……、君は、何故、このような寡黙で下らなくつまらない私の、傍にいようとする?」



こんな時でも無駄な台詞を挟む自分の癖に乾杯。

雪乃は一瞬目を見開いて、柔らかい微笑を浮かべて言った。



「……だって、私、凛音ちゃんの事……大好きだもん」



ああ、やめてくれ。

そんな事を言われれば言われる程…………


私は、君を信じられなくなる。



どうでもいい裏設定

その一 凛音は今まで一切表情を変えてない。

その二 廊下で騒いでも先生が来ないのは、いじめや喧嘩は日常茶飯事だから。


結構重要な事 ここでの「投げ」は「投げる」とい行為じゃなくて、柔道とかで使う「投げ」


誤字脱字、不自然な文章等ありましたらお知らせください。


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