3話 厄介が面倒に昇華した
御機嫌よう皆様。本日は晴天なり。
入学式から一週間が経ち、新しい生活にも慣れ平和な日々を過ごしてい、
るわけねーだろ。
どうも、改めまして私です。
只今昼休み。私の現在位置、女子トイレ。ボッチの特権、便所飯なうだ。ツイッターで呟いておこうかなー。
それにしても、焼きそばパンうめぇ。学園の購買部で売ってる高級焼きそばパンだ。……B級グルメが高級品ってどういう事だ。焼きそばパンは高級品にはないチープな味がいいんだろ。いや、美味しいけどさ、高級品。
……便所飯を全く惨めに思わないどころかエンジョイしまっくているのは、私が逞しすぎるのかそれともこのトイレがそうとは思えないほど綺麗だからか。
ここトイレじゃないよ。レストルームだよ。その名の通り、休憩所だよここ。
床も鏡も窓も輝いてる。キラッキラに磨き上げられている!
臭いもないから、食事も騒がしい教室で食べるよか格段に快適だ。
トイレじゃなくて最早隠れ家と化している。
さて、私がこの隠れ家的トイレを発見する事が出来たのにはあの鋼のハートを持った美少女――桜野 雪乃――が大いに貢献している。
なーんて、そんなに大した話ではないんだけど。
入学式の次の日、ヤツは「私、桜野 雪乃っていうの!よろしくね、凛音ちゃん!」とのたまり、ずっと、それはもう幽霊も真っ青なくらいずっと私に付き纏っている。
休み時間はニコニコしながらじーっと飽きもせずにこっちを見ているし、席を立てば「どこ行くのー?」と何処にでも付いて来る。そして昼休みは必ず私を追いかけてくる。
……お前は鳥か。私は親鳥でも何でもないしインプリンティングをやった覚えもない。
休み時間は本を読み続けるからいいが、昼休みは本を読むわけにもいかないのでどうにもできない。無視はできるけど、ヤツといるとこっちの精神がガリガリ削られる事になるからとにかく一緒に居たくない。
一度、ダッシュで校舎を一周してヤツを撒いてみようかとも思ったが、そんな事をして変に目立つのも嫌なので却下。
そこで思いついたのがボッチの究極奥義、便所飯だ。
そのお陰で私はゆっくり食事を楽しめるし、気分良く過ごせるので万々歳だ。
幸いここは一度も見つかっていない。もうずっと便所飯でもいいや。
……おっと、もう昼休みも終わるな。そろそろ教室に戻ろ
どんどんどんどん!
「凛音ちゃん!ここにいるのはわかっている!無駄な抵抗はやめて大人しく出てきなさーい!」
うかなーって思ったけど出たくない。
人の憩いの時間を邪魔しやがってこんちくしょー、いやそもそも何でここにいるってバレてんの誰も知らない筈だぞ。トイレにいる事はバレそうだが何故個室まで特定されたんだ。というかさっきからずっとドアを叩き続けてるんだけど五月蝿い上に手もドアも両方痛むからやめた方がいいんじゃないの。てか怖いよ。
「凛音ちゃーん!授業始まっちゃうよ!出ておいで!」
「………………」
出てこない原因はお前だよ。
ていうか私ってば完全に退路塞がれちゃったじゃねーか。やっぱり出口が一つしかない場所に篭るんじゃなかった。ホラー映画だったら私死んでるぜ。
いや今現在私ストレスで死にそうだけども。
……あ、音止んだ。諦めてくれたか?
「凛音ちゃーん?お腹痛いの?大丈夫?」
「…………はぁ…………」
諦めてなかった……マジで待つつもりだコイツ……。
現在、昼休み終了1分前。
仕方ない。私は盛大に溜め息を吐きながら外に出た。そうするしかないよな。
「凛音ちゃん!」
「…………」
「明日はお昼ご飯一緒に食べようね!」
「…………はぁ」
私に抱き着く美少女、身長おそらく154cm、バスト推定Dカップ。
厄介、いや、面倒なヤツに懐かれたもんだ……。
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