1話 無情なり入学式
まだ脈略が帰ってきてくれない。どうしよう。
そしてもうお気に入り登録が!ありがとうございます。
突然だが、今日は入学式だ。
え?唐突過ぎてついて行けない?
それは失敬。
もう少し詳しく言えば、高校の入学式だ。
そう、私は今日から晴れて高校生、花の女子高生である。
まぁ私は特に花と思ってはないがな。
さて、これまた唐突だが、少し私の話を聞いてくれ。
私には前世の記憶がある、
……おい、やめろ、病院をおすすめするな。私は至って正常だ。
正しくはそれらしき物が頭にあるだけだからな。
よくある別世界に転生した、なんて訳じゃない。そんな事あってたまるか。
別人の記憶でもない。あれはきっと私だ。
細部まではっきり覚えてる訳でもなし。なんとなく朧げな光景が頭に残ってるのみだ。
まぁ人間の記憶なんてそんなもんだしな。
しかし、これを認識した当時は大変だった。
確か11歳頃だったか?
夢のような感じで、過去の記憶が次々とフラッシュバックして、それが自分だと感覚的に認識した。
その次の日は悲惨だった。
自分の生きた年数より多い、よくわからない記憶だ。
知恵熱も出たし、勿論混乱した。そりゃもう発狂もんだったが、なんとかそこは当時の私は上手く整理したらしい。
我ながらあっぱれだ。
その後は、劇的に人格が変わるでもなく普通に今まで生きてきた。
別の人間の人格が入ってきた訳ではなく、自分に似た人間の生を追体験しただけだったし。
私はもともと人に興味がない、我が道を行きたいタイプだし。変わった事といえば人嫌いと何事にも無関心な性格が悪化したくらいだ。
それはそれで問題?
さてね、私にはそう大した問題には思えないからいいんだ。
さてさて話を戻して。
今となっては曖昧な記憶によると、私は高校1年生の時に死んだっぽい。いつ頃かは忘れたが。
まぁだからといって特に生きる為に足掻くような事もしないけど。そこまで生に執着してない現状に、自分の事ながら心配だよ。
それでも、せっかく前世の記憶とかいう便利な物があるんだからな。有効活用させてもらった。
これもまた曖昧にしかわからないが、前世の私はどうやら友人に殺されてしまったらしい。詳しい事は忘れたが、大方嫉妬か痴情のもつれだろう。学生で金銭絡みの殺人はない……筈だし。
という事を考慮して、どうすべきか検討した結果、私は圧倒的な力を身に付ける事にした。
人間、中途半端に力を持つものには嫉妬するが、圧倒的な差を見せられるとそんな気も起きなくなるのは今までの経験から把握済だ。
幸い、私には権力と財力が備わっていた。実家が金持ちってのは素晴らしく人を優位に立たせてくれる。
あとは、知力や武力なんかの自分の努力でどうにでもなる物と、容姿の良し悪しだ。
余談だが、私の一家は周囲からは美形一家とか呼ばれてる。
ここからも察せられる通り、容姿は問題ない。
その他の力も、どうやら天才肌らしい私自身のスペックで問題ない。
武力については、幼少の頃より剣道、柔道、空手に合気道、その他諸々の武道を一通り修めてきた。
努力の甲斐あってか、殆どを最低でも師範代を任される程に上達した。まぁそれは丁寧に辞退したが。
このように、スペックだけで見たら最強人間の完成である。
あとは性格だが、そこはまぁ察して欲しい。
歪んで捻れてはいるが、そこそこ人望はあるからな?
まぁこんな感じに、おそらく今世ではよっぽどの事がない限り学生生活の中で死ぬ事は殆ど有り得ない程まで能力を高めてみた。階段から落ちても受け身とれるし、刃物とか素手で折れる自信ある。
お陰で人生がイージーモードを通り越して鬼畜仕様なのだが、それは今は置いといて。
さて、自分語りが長くなってしまって些か申し訳ないが、私はこんな感じの人間である。
生きている限りは私らしく生を謳歌してやろう。
そろそろ入学式会場に到着である。
といっても、中学から同じ学校に通っているから特に感慨はないが。
自宅から学校まで、およそ徒歩二十分程。
車で送迎してもらう事もできるが、歩くのは好きだからな。
こうやって風に吹かれつつ歩くのはなかなか気分がいい。
夏場と真冬はキツイから車を使うが。
ああ、見えてきた。
私が通う、ブルジョア層の子供が通う、所謂金持ち学校。
見た目から既に立派で、知らない人から見たら城か何かと勘違いしそうな佇まいである。
校門前で少し立ち止まって、学校を眺めてみる。
いつ見ても、その外観は見蕩れるほどに美しいな。
ここで三年、これから三年。私はまたこの箱庭の中で日々を消費するのか。
と、学校生活の折り返し地点に辿り着いた事を実感し、少し感傷的な気分になっていた時。ふと感じたのはぞわりとまとわりつく視線。
何だ?何なんだ、これ……。
視線巡らせてみると、じっと私を見つめる美少女がいた。
他に私を見ている人間もいない。この視線は彼女のものであることは間違いないだろう。
あんな可愛い子が、どうやったらこんなに気分の悪い視線で私を見るんだか。
美少女は、しばらくじっと私を見た後に講堂の方へ向かって行く。
ちらりと名残惜しそうに私の方を振り返りながら。
……はぁ、どうやら厄介なのに目をつけられたみたいだ。
† † † †
「えー、本日は――」
その後は何事も無く無事に体育館に到着。
現在入学式の最中。校長先生のありがたくもないくせに無駄に長いお話が始まった。
真面目に聞く気もないから、ここで私が通う、星蓮学園の説明でもしてあげよう。
星蓮学園とは、この近辺では一番の名門校だ。
明治の頃にその原点を置く無駄に長い歴史とバカみたいに金が掛かった施設を持つ、超の付く名門校。大事な事だから二回言いましたよ。
通っているのは当然、代々続く名家の子とか大企業の重役や社長の子やらの金持ちばかりだが、金持ちなら誰でも入れるわけでもなく家柄、能力が揃った人間しか入れない。
まぁ私はその中でもトップレベルらしいが……、そんな話はどうでもい。
中高一貫だが能力と体面を保つために、決して生温くはない内部受験を乗り越えなければ中等部から高等部に進学できない。一説によると内部受験の方が難しいとかなんとか。
うん、実際難易度はかなり高かったけどな。それは外部も同じだろうな。
一学年はAからEまでの五つのクラスに分けられていて、一クラス20人くらい。
成績で分けるわけでもない、差別を生まない良心的なクラス分け。多分。知らない。
生徒数が多いからか教室以外の施設がやたら多いからかは知らんが、校舎は教室棟と特別棟に分かれている。
教室棟は文字通り教室と、保健室がある。教室棟の中からまた中等部と高等部で建物が違い、学年毎に階がわかれている。生徒間の暗黙のルールで、中等部と高等部、更に細かく上級生の階には行き来できない。教室移動等の例外はあるが、基本的には先輩の許可がいる。
別棟は各部の部室と音楽室、理科室、保健室etcと、サロンや温室とかいう勉学には一切関係ない施設が多数存在する。よーやるわ。
教室棟は中高等部共に六階建て、特別棟は四階建てで両方とも屋上は解放されている。
「――続いては、新入生代表の挨拶です」
おっと、忘れていた。スピーチ任されてたんだったな。
前に出る前に、新入生代表の仕組みも説明しておこう。
星蓮学園では、中等部に入学するにしても受験があるが、新入生代表は一人。中高合わせて一番点数が高かった生徒が選ばれる。
実は中等部の時も新入生代表だったんだよ。d
「本日は――」
それにしても、何で先生方は式典とかのスピーチの喋り出しがなんで「本日は」なんだろう。さっきも聞いたよコレ。
プロットも何もない見切り発車です。
誤字脱字等がありましたらお知らせください。