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少女達の白百合籠  作者: すもも 遊
1.無垢で愚かな少女は外道な道化に恋をする
10/19

閑話 彼女と私―3

長くなってしまった上、意味不明です。この話で雪乃視点は終わりです。



んーっと、次は何だっけ?……あっ、そうそう、その日の放課後ね……。



昼休みのお詫びに焼きそばパンを凛音ちゃんにプレゼント?しよう!と思って、HRが終わって凛音ちゃんの方を向こうとした瞬間、誰かが私の腕をガッチリ掴んでビックリする私を半ば引きずるみたいにどっかに連れて行かれた。

凛音ちゃぁぁぁぁん!たっすけてぇぇぇ!!

……私を尻目に本を読み始めた凛音ちゃん。やっぱり一人の方がいいのかなぁ。

あ、ちなみに、叫んでないよ?……多分。


私を連れて行ったのは、いっつも私に話しかけてくる女の子二人。顔は知ってるけど名前は知らない。

どうやら部活見学とやらに引っ張り出されたみたい。二人でやればいいのに。部活興味ないし。

うん、何故私が部活に入らないかというと、凛音ちゃんが部活は無所属っぽい――強いて言うなら帰宅部所属かな?――から、私も入らないって決めたのだ。そして毎日二人で帰るのだ。

というわけで、私は今とっても帰りたいんだけど……あ、もちろん凛音ちゃんも一緒にね?

二人は腕を掴んだまま離してくれない。

……話の内容からするに、この学校の部活を全部見て回るつもりらしい……。


この学校にどんだけ部活あるか知ってるのかなこの二人……。


ここは、お金持ちの学校だけあっていろいろと多い。そして例に違わず部活も多い。

サッカー部、野球部、美術部、文芸部……と、一般的な部活はもちろん、天文学部や茶道部、紅茶部とかいうわけわかんない、趣味としか思えない部活がいっぱいある。総数は、えーっと……、30個くらい?……うん、知らないけど。

とにかく多いのだ。それを全部見て回るらしい。

そんなことしたら、凛音ちゃんが帰っちゃうかもしれないし、焼きそばパンが売り切れちゃうかもしれない!

どうしよう、凛音ちゃんなら先に帰るなんて余裕でやってのけちゃうだろうし、焼きそばパンがどれくらい人気あるかもわかんないし……。

これは今すぐ逃げ出すしかない!



えーと、結果。

無理でした。逃げられませんでした。

隙あらば凛音ちゃんの傍に行こうとしてるのを知ってるからかな。両脇をガッチリ固められて、逃走不可能だったよ。……うぅ。泣いちゃダメだ……。

こうなったら、自分を無にしてやり過ごしてやる!凛音ちゃんと焼きそばパンが残っていると信じて!


すうじかんご


……燃え尽きたぜ……。

あちこち引っ張りまわされてくたくただよぉ……。もうイケメンとかどうでもいいからさっさと移動して欲しかった……。

……うん、ここでへばってても仕方ないよね。教室に凛音ちゃんはいるのかな?


教室までの道のりがいちいち長いんだよー……。

さてさて、凛音ちゃんは…………。

いた!まだ教室で本読んでる!

よぉし、焼きそばパンまだあるかなー♪


さてさて、ただいま購買部なう!

ちょっと迷ったけど、無事到着致しましたー!

焼きそばパンは、残り二個だったので、両方買った!

……あれ?



「おい」

「……」

「おい。お前だ」

「な、ななな何ですかっ!?」



いきなり怖い人に絡まれた!顔はかっこいいのに雰囲気が超怖い!



「……焼きそばパン」

「はいっ!?何でしょう!?」

「金はちゃんと返すから、焼きそばパン片方譲れ」

「へ!?や、や、やだ!」



そして命令形で頼み事された!思わず断っちゃった!だってだって、二つ買ったのは凛音ちゃんと自分の分だからね!

…………。あれ?なんか空気凍ってない?いや、凍ってる!私は空気読める子だからね。わかるよ!

……じゃなくて。やばっ、何故か怖い人がマジギレ寸前の顔になってる!どうしよう!えーとえーと、こーゆー時は……

にげるっ!!


くるっと踵を返してダッシュ!ふふん、こう見えて足には自信がある……って、あの人も追いかけてきたー!

どうしよう、誰か助けて!欲を出すなら凛音ちゃん助けて!

超怖い!自分の何が悪かったのかわかんないし!

ていうか何あの人足速い!

……やばい、追いつかれる……!

……って、あっ!神様ありがとう!



「凛音ちゃぁぁぁぁぁん!!!」



ブレない無表情がとっても頼もしい!


だだだっと凛音ちゃんに近寄って、さっと背中に隠れる。ああ、この細いけど高さのある背中、落ち着く……!


ふーっと息を吐いて、呼吸を整えて……。凛音ちゃんも怖い人も、さっきから全く動かない。微動だにしない。でもきっと凛音ちゃんは早く帰りたいからこの人どいてーとか思ってるんだろうなー。

いや、でも、怖いよ!さっきからずっと睨まれてるし!



「……り、凛音ちゃぁぁん……」



振り向いた凛音ちゃんに助けてー、と涙目で縋ったら、ぷいっと前を向いてしまった。

どうしようどうしようって思ってたら、凛音ちゃんが私にこうなるまでの経緯を聞いてきた。

私がわかる範囲で答えると、とてもわかりにくいって言われてしまった。……そんなことないもん。


次は怖い人に説明を要求する凛音ちゃん。

……そんなにわかりやすく、を強調されると傷つくよ……。ていうか、先輩だったんだこの人……。

そして先輩が答えた。要するに、焼きそばパンが欲しかったんだね。なるほど、わかった。あげないけど。

それに一人で二つなんて意地汚い真似しない。二人で一つずつ食べるのだ。



「ち、違いますー!これは凛音ちゃんと一緒に食べようと思って二つ買ったんですー!一人で二つなんて食べません!」

「じゃあお前はそのツレに頼まれて買ったのかよ!?」

「それも違うけど、二人で食べるんだってば!」

「あぁ!?意味わかんねーよ!」

「うるさいばーか!」

「んだとゴルァ!」



もう、何なのこの人!諦めて帰ったらいいのに!邪魔すんな、ばーかばーか!

俗に言う売り言葉に買い言葉ってやつで、馬鹿らしい言い合いが続く。



「譲れ!」

「やだ!」

「譲れ!」

「やだ!」

「ゆず」

「うるさいっ!黙れないのかお前たちはッ!」

「!?」

「ひぅっ!」



ずっと間に挟まれていた凛音ちゃんが、大声を上げて、怒鳴った。

でも、ちらりと見えた横顔は、相変わらず無表情。ぶわっと涙が溢れる。


嫌われた?もう話し掛けても答えてくれない?嫌い?やだ、やだ、やだ、やだ。

泣いたらダメだ。泣いても縋っても凛音ちゃんは振り向いてくれないから。


目の前で先輩が綺麗に投げ技を極められてる。ああ本当に凛音ちゃんはかっこいい。

凛音ちゃんはこっちを振り向くと、パンを片方奪って先輩の傍に置いてそのまま帰ってしまった。

どうしよう。どうしよう。もしかしたら今すぐに謝ったら許してもらえるだろうか。もしも許してくれなかったらどうしよう。


どうしよう。チャイムが鳴る。下校時間だ。帰ろう。追いかけよう。追い縋ろう。そうしよう。



急いで走っていくと、凛音ちゃんは案外遠くまで行ってなかった。考えてみれば凛音ちゃんは歩く速度が早くないんだった。

駆け寄った私を少しだけ振り返って、凛音ちゃんは歩き続ける。私はそれに一歩遅れて並ぶ。

沈黙。口を開く気にはなれなくて、黙ったまま歩く。


……そういえば、どうして私は凛音ちゃんが好きなんだろう。

……んー、一目惚れんかなぁ。入学式で見たときから、気になって仕方なかったし。

なら私は、そういう風に凛音ちゃんを好きなんだろう。


敬愛?

ううん。そんなに尊いものじゃないし、そんな大層なものじゃない。

親愛?

違う。私はもっと近付きたい。

友愛?

そうじゃない。友達なんかよりもっと大切で重要な存在でありたい。


凛音ちゃんといると、ふわふわするような、ちょっと不思議な気分になる。声を聞けば嬉しくなる。傍にいられれば幸せ。そのくせ、どきどきしたり、変な気分。

全部委ねてしまいたくて、全部委ねて欲しい、この気持ちは。

恋愛。

今まで誰かを好きになったことなんて、家族以外は一度もないけど。これはきっと、恋なんだ。


わからないけど、わからないまま、納得。

突然、凛音ちゃんが振り返って、珍しく言葉を発した。

……珍しくっていうか、多分始めてじゃないかな、自分から話すの。



「ねぇ雪乃……、君は、何故、このような寡黙で下らなくつまらない私の、傍にいようとする?」



思わず、口元に笑みが浮かぶ。

そんなの、決まってるよ。



「……だって、私、凛音ちゃんの事……大好きだもん」



世界で一番貴女が好きです。

愚かで無垢な少女は外道な道化に恋をする。


ここまでの話を章で分けるならタイトルはコレですかね。

雪乃ちゃんは考えてることを無意識に声にだしちゃうタイプです。


次回からはまたギャグな感じに戻ります。そして遂に逆ハー編に突入……しないかもしれないけど。基本は百合です。


誤字脱字、不自然な文章等ありましたらお知らせください。

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