お守りの秘密 【月夜譚No.392】
掲載日:2026/03/08
幼い頃から持っているキーホルダーがお守りになっている。布で出来た小さな人形のそれはのっぺらぼうで、ころんとして可愛らしい。最初は白かったのだろう肌の色が少し黒ずんで、着物に似た衣装は所々が擦り切れて年月を思わせる。
嬉しい時も悲しい時も、そのお守りは彼女と共にあった。それが傍にあるだけで、なんとなく安心できた。
しかし、それを何処で手に入れたのか、全く覚えていない。誰かから貰ったのか、拾ったのか、小遣いで買ったのか――気がついたらいつもそこにあるのが当たり前になっていた。
「ああ、今日まで大事にしてくれて、ありがとう。お陰で、君を見つけられた」
聞き覚えがあるような、少しだけ高い声。
腰まである長髪を風に靡かせて青白く煌めかせる彼の瞳は、上空に浮かぶ満月と同じように見えた。
しなやかに、彼が手を差し出す。
「さあ、おいで。私と共に行こう」
神々しい彼の姿に、彼女はそっとお守りを握り締める。
彼の手を取るか否か――その判断は、彼女にとって今後の命運を左右する決断となった。




