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異世界チョコたび百合風味。~女神様にもらった無限チョコと全属性魔法で、可愛い仲間と甘々気ままな異世界ライフを満喫します~  作者: かわちょう


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第2話

 森の空気は、驚くほど澄んでいた。


 日本でハイキングに行った時の、あのちょっと湿った土と緑の匂い。

 それを、もっと濃厚で芳醇にした感じだ。

 深呼吸をすると、肺の隅々まで洗われるような清涼感が広がる。


「……さてと。まずは現状把握、かな」


 私は座っていた倒木から立ち上がり、制服のスカートに付いた枯れ葉をパンパンと払った。


 セーラー服に、足元はローファー。

 紺色のソックスもそのままだ。


 この格好で異世界の森を歩くのは、どう考えても場違いだ。

 コスプレ撮影会だとしても、ロケーションが本気すぎる。

 でも、今はこれしか着るものがないから仕方ない。


 女神様からもらった魔法。

 そして、この腰にある『無限チョコポーチ』。

 これらが私の命綱になるはずだ。


「魔法、か……。使い方は心次第、って言ってたよね」


 ふと、小説で読んだ定番の展開を思い出す。

 こういう時って、念じれば「ステータス」とか見えるものなんじゃ……?


 半信半疑で、頭の中で強く唱えてみる。


(……ステータス、オープン!)


 シュンッ。

 軽い音と共に、目の前に半透明の板のようなものが浮かび上がった。


「うわっ、本当に出た……!」


 そこには私の名前や年齢と一緒に、ずらりと項目が並んでいた。


【名前】キセ・ハルナ 16歳

【職業】転生者

【属性】火・水・風・地・雷・光・闇(全属性)

【スキル】無詠唱、魔力自動回復(極)、全言語理解、無限チョコポーチ、他……


 ……えっと。


 全属性は聞いていたけど、スキルの「無詠唱」とか「魔力自動回復(極)」って。

 これ、いわゆるチートっていうやつだよね?


 しかも、それぞれの属性の後に小さなプラスマークのようなものがあって、それを意識するとさらに詳細が表示された。


 火属性:ファイアーボール、フレイムバースト……。

 水属性:ウォーターバレット、アイスジャベリン……。


「……なんだか、すごいことになってる気がする」


 実感はまだないけれど、とにかく私は「なんでもできる」らしい。

 なら試してみない手はない。


「まずは基本中の基本……火!」


 掌を前へ突き出し、小さな火の玉をイメージする。

 熱いエネルギーが腕を伝わり、手のひらに集まっていく感覚。


 ボォッ!


 次の瞬間、バレーボール大の真っ赤な火球が出現した。


「わわわっ!?」


 思ったより大きいし、何より熱い!

 私は慌ててイメージを霧散させると、火球はシュンと音を立てて消えてしまった。


「……あぶな。これ、森でむやみに撃ったら山火事になっちゃう」


 火の扱いは慎重にしなきゃ。

 次は水だ。

 ちょうど喉が渇いていたので、飲み水が出せれば最高だ。


 手のひらの上に、今度は清らかな水が湧き出すイメージを持つ。


「ウォーターバレッ……じゃなくて、普通にお水。出て」


 すると、手のひらの上にぷかぷかと、これまたバレーボール大の水の球が浮かんだ。

 恐る恐る口を寄せてみる。


「……ん、美味しい」


 冷たくて雑味のない、すごく純粋なお水の味だ。

 喉を潤すと、次は風と土を試してみる。


 風は自分を包むように穏やかな気流を起こし、扇風機代わりに。

 土は地面を少し盛り上げて、座り心地の良さそうな「土の椅子」を作ってみた。


「すごい……本当に思い通りになるんだ」


 火、水、風、地、雷。それから光や闇まで。

 いくつか簡単な魔法を試してみたけれど、不思議と疲れは感じない。

 これが「魔力自動回復(極)」の恩恵なんだろうか。


 ひと通り試して満足したところで。


 ぐぅぅぅ……。


 お腹が可愛くない音を立てた。

 そういえば、学校帰りにそのままここへ来たんだっけ。


「……おやつタイムにしようかな」


 私は「土の椅子」に座り直し、腰のポーチに手を伸ばす。

 中には一口サイズのチョコがぎっしり。

 一つ取り出して銀紙を剥く。

 中から現れたのは、表面に繊細な模様が刻まれたミルクチョコレートだった。


 口に入れると、体温で滑らかに溶けていく。


「ん……甘ぁい……」


 甘さが脳に染み渡り、不安や緊張で固まっていた心が、ふんわりと解けていくような感覚。


『食べれば不思議と力が湧き、心も体も癒やしてくれるでしょう』


 女神様の言葉を思い出す。

 確かに、ただのチョコ以上のパワーがある気がする。

 元気が出てきた。


 魔法を試した後の高揚感が落ち着いて、冷静な思考が戻ってくる。


「よし、サバイバル準備だ」


 この森にどんな「怖い生き物」がいるかわからないけれど、魔法があれば身を守ることはできるはず。

 寝床の確保はまだ昼間だからいいとして、まずはここがどこなのか、どっちに行けば人がいるのかを知りたい。


 私は立ち上がり、「風」の力を借りてみることにした。


「えいっ!」


 足裏に風のクッションを感じながら、垂直に跳躍する。

 身体が羽のように軽くなり、ぐんぐんと上昇していく。

 木々の梢を抜け、視界が一気に開けた。


「……うわああ、すごい……!」


 眼下に広がるのは、見渡す限りの深い緑。

 遠くの方には切り立った山脈や、太陽の光を反射してキラキラと輝く大きな湖が見える。


 そして更によく目を凝らしてみると、細い煙がうっすらと上がっている場所を見つけた。


「あそこ……村、かな?」


 文明の気配。

 それを確認できただけで、心強さが全然違う。


 重力に引かれてゆっくりと地上に降り立つ。

 着地も風の魔法でふわりと完璧だ。


「目標決定。あの煙が上がってた方向に進もう」


 ポーチの位置を確認し、スカートの裾をもう一度整える。

 セーラー服で異世界の森を歩く女子高生。

 客観的に見たらかなりシュールな光景だけど、今の私には全属性魔法と、無限のチョコがある。


 なんとかなる気がする。


「よし、行こう!」


 私は一歩、煙のたなびく方角へと足を踏み出した。

第3話はミリア登場です!

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