表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界チョコたび百合風味。~女神様にもらった無限チョコと全属性魔法で、可愛い仲間と甘々気ままな異世界ライフを満喫します~  作者: かわちょう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/26

第1話

はじめまして、かわちょうです。

今日から異世界転生ファンタジー百合もの(12/28時点で11万文字程度執筆済み)を投稿していきます。

のんびりしたいけど、やっぱり魔法で無双もしちゃう。

主人公ハルナと可愛い仲間たちの冒険を、どうぞ楽しんでいってください!

 放課後の教室って、どうしてこう独特の空気が流れているんだろう。


 傾き始めた夕日が、窓から差し込んでくる。

 私の机が、眩しいくらいのオレンジ色に染まっていた。


「あー……お腹すいた」


 遠くから聞こえる運動部の掛け声。

 ありふれた一日の終わり。

 私は鞄を肩にかけると、ふぅ、と小さく息を吐いた。


「今日の晩御飯、何かなぁ」


 そんな、どうでもいいことを考えながら校門を抜ける。

 私の名前は喜瀬春奈キセ ハルナ

 どこにでもいる、ごく普通の高校一年生だ。


 強いて特徴を挙げるなら、甘いもの――特にチョコレートには目がないってことくらい。

 でもそれだって、女子高生なら珍しくもないよね。


 いつもの通学路。

 見慣れた景色。


 それが、私の人生で最後に見る「日本の風景」になるなんて。

 この時の私は、夢にも思っていなかった。


          ◇


 信号が青に変わり歩き出した、その瞬間だった。


 カッ!


 視界が真っ白な光に塗りつぶされた。

 耳を劈くような轟音?

 あれ? なんだっけ……。


 何も思い出せない。

 ただ、ふわっと体が浮き上がるような浮遊感があって。


 次の瞬間には、私は「そこ」にいた。


「え……?」


 上下も左右も、奥行きさえもわからない。

 ただただ、どこまでも続く白の世界。


「何、ここ。夢?」


 自分の声が、反響もせずに吸い込まれていく。

 着慣れたセーラー服を確認する。鞄もしっかり持っている。

 足元には地面がないのに、しっかり立っているような不思議な感覚だ。


「夢ではありませんよ、ハルナさん」


 鈴を転がしたような、透き通った声が響いた。

 振り返ると――そこに、彼女が立っていた。


 長い、桜の花びらのようなピンク色の髪。

 慈愛に満ちた深い藍色の瞳。

 背中には透き通る羽のようなものがうっすらと見え、彼女自身が淡い光を放っているようだった。


 綺麗。

 そんな言葉じゃ足りないくらい、神々しい。


「……女神様、ですか?」


 我ながら直球すぎる質問だと思う。

 けれど、そうとしか表現できないオーラが、彼女にはあった。


 彼女は困ったように、でも優しく微笑んで頷いた。


「はい。この世界の方々が呼ぶ名を使えば、そうなります」


 女神様は、ふわりと私の近くへ降り立った。


「……突然のことで驚かせてしまいましたね。あなたは、あなたのいた世界での生を終え、新しい世界へと旅立つことになりました」


「……死んじゃった、ってことですか?」


 意外にも、私の心は穏やかだった。

 悲しみや恐怖よりも、目の前の女神様のあまりの美しさに、不謹慎にも見惚れてしまっていたからかもしれない。


「悲しいことですが、そうなります。ですが、あなたはとても徳の高い魂の持ち主でした」


 女神様が、慈しむように私を見つめる。


「ですから、次の世界ではあなたの望むままに生きてほしいのです。そのための助力を、私からさせていただきますね」


 女神様が、そっと指先を私の額に向けた。

 じわっと、温かい何かが流れ込んでくる。


 それは体の隅々まで行き渡り、今まで感じたことのないような、満ち足りた感覚となって私を包み込んだ。


「今、あなたに『魔法』の力を授けました。火、水、風、地、雷、光、闇……。その世界の理を司るすべての属性を、あなたは自在に操ることができます」


「えっ、全部ですか?」


「はい。全属性です」


 全属性魔法。

 そんなのアニメやラノベの世界だけだと思っていたけれど、どうやら私は、とんでもないものを貰ってしまったらしい。


 でも正直なところ、魔法をバリバリ使って冒険したい! というよりは、新しい世界でのんびり暮らしたいな、なんて考えてしまうのが、私の私たるところだ。


「ありがとうございます。……でも、そんなにすごい力、私に使いこなせるかな」


「ふふ、大丈夫ですよ。あなたの魂は、その力を受け止めるに相応しいものです」


 女神様はニッコリと笑うと、もう片方の手を差し出した。


「……それともう一つ。これが、私からあなたへのもう一つの贈り物です」


 女神様の掌の上に、柔らかな質感の小さなポーチが現れた。

 上品な刺繍が施された、可愛らしいデザイン。

 私のセーラー服のベルト通しにぴったり合いそうなサイズだ。


「これは?」

「中を見てみてください」


 受け取ると、手にしっとりと馴染むような心地よい重みがある。

 中を開けてみる。

 そこには、銀紙に包まれた一口サイズの四角いものが、ぎっしりと詰まっていた。


 ……この香り、まさか。


「……チョコ?」


「はい。あなたが一番好きだったもの。それは、魔法でいくらでも補充される、特別なチョコレートです」


 女神様が悪戯っぽくウィンクする。


「食べれば不思議と力が湧き、心も体も癒やしてくれるでしょう。辛いとき、寂しいとき、あるいは誰かと喜びを分かち合いたいときに、食べてくださいね」


 鼻をくすぐる芳醇なカカオの香り。

 異世界に大好きなチョコレートを持っていける。

 しかも無限に!?


 その事実だけで、不安だった気持ちが、みるみるうちに明るい色に塗り替えられていくのがわかった。


「女神様、ありがとうございます! これさえあれば、どこでだってやっていけそうな気がします!」


 私が満面の笑みで答えると、女神様は少しだけ寂しそうに、でも誇らしそうに微笑んだ。


「それでは行きなさい、ハルナ。あなたの新しい旅が、甘く素晴らしいものになることを祈っています」


 女神様の姿が、眩い光の中に溶けていく。

 同時に、強烈な睡魔が私を襲った。


 手に持ったチョコのポーチをぎゅっと握りしめて、私は意識を手放した。


          ◇


 次に目を覚ましたとき、そこは――。


 鼻を突く、濃厚な草木の匂い。

 瞼の裏を刺激する、木漏れ日の眩しさ。

 そして遠くから聞こえる、聞いたこともないような鳥の鳴き声。


 私は土の感触を背中に感じながら、ゆっくりと上体を起こした。


「……ここが、異世界」


 あたりを見回す。

 そこは、以前何かの番組で見たことがあるアマゾンのような、深い森の中だった。

 見上げれば、木々の間から見える青々とした空。

 けれど、どことなく日本のそれとは空気が違う気がする。


 服装を確認すると、まだセーラー服のままだ。

 そして腰には、先ほど女神様からもらった、あの刺繍入りのポーチが揺れている。


「……夢じゃ、ないんだ」


 私は震える手でポーチから一つ、チョコレートを取り出した。

 銀紙を剥き、口に放り込む。


 ――甘い。


 とろけるような甘さと、カカオのほろ苦さが口いっぱいに広がる。

 強張っていた心と体が、内側からじんわりと解けていくようだ。

 それは間違いなく私が知っている、そしてそれ以上に美味しいチョコレートだった。


 ふと見ると、食べ終わった銀紙が光の粒子になって消滅した。

 ゴミが出ないなんて、エコすぎる!

 (便利過ぎだよ女神様!)


「……よし」


 頬に残る甘い余韻を噛み締めながら、私は立ち上がった。

 ここがどこなのか、これから何をすべきなのか。

 わからないことだらけだけど、まずはこの森を抜けて人がいる場所を探さなきゃ。


 私はスカートの土を払い、一歩を踏み出した。

お読みいただきありがとうございます!

第2話では簡単に魔法の試運転をして、第3話の一人目のヒロ…じゃない!仲間回にバトンを渡します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ