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5-3

 男は暗闇の中、障害物を避けながら前へ進んでいく。少しでも遠ざかると、闇の中に消えてしまいそうになるので、成実は必死になって後を付いていった。

「もう一人、助けなくちゃならない人がいるんです」

 そうなんだと上の空で聞き流しながら、見失わないよう歩いて行く。

 男が不意に立ち止まり、成実は男の背中にぶつかって止まった。男が右手を前に伸ばしているのがわかった。モーター音がして、突然前方から光を浴びた。

 まぶしくて、一体何が起きたのかわからなかったが、目が慣れてくると、スライドドアが開いて部屋が現れたのだとわかった。部屋の中にはステンレスらしき機械のようなものが並び、スーツ姿の中年男が一人、背を向けて立っていた。横ではへミスがひっくり返り、ガタガタと胴体を左右に揺らしていた。

 中年男が振り返り、目を見開いて成実たちを見た。その目には明らかに恐怖の色が浮かんでいる。

「小田川……」

 成実は改めて隣にいる男の顔を見た。どこかで聞いたことがある気がするけど、思い出せない。

 ガガガガと威嚇音が聞こえてきたと同時に、男が「ヒッ」と悲鳴を上げながら飛びすさった。男に隠れてわからなかったが、もう一台動けるへミスがいて、スタンガンで男を狙っていたのだ。

 何が起きているのかわからなかったが、とにかく危険なことは理解できた。逃げようとしたとき、ドンと背中を押され、つんのめるように部屋へ入った。

「何するのよ」

 成実は睨み付けるが、小田川は穏やかな微笑みを浮かべていた。

「平本さんと成実さんは詳細な記憶データが取れず残念です。しかしお二人とも遺伝子情報はデータベースに収められていますので、心配しないでください。

 小田川は背を向け、部屋から去ろうとした。

「待てよっ」

 平本が駆け出して小田川の襟首を掴み、思い切り引っ張った。

 小田川が後ろから倒れる。

 平本の足へ、へミスがスタンガンを押しつけようとした。

 成実は反射的にアームを蹴った。

 スタンガンの方向がずれ、倒れてきた小田川の腰に接触した。

「あぁっ」

 小田川は悲鳴を上げながらへミスの上に倒れ込んだ。へミスは小田川の体重がかかって動けなくなった。

 平本と呼ばれた男と目が合う。

「逃げるぞ」

 そう言い残し、平本はさっさと闇の中へ消えていった。成実はもう一度小田川を見た。目をカッと見開き、体を痙攣させている。助けないと死んじゃうのかもしれない。でも、この人はあたしを置いてここから立ち去ろうとしたし。この人、いい人なの? それとも悪い人なの?

 小田川の下から、へミスが抜け出そうとしていた。

 ヤバいヤバい。迷いを振り払い、成実も闇の中へ走り出した。


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