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人をいったい何だと思っているんだ。福田は甦った記憶に怒りを覚え、思わずハンドルをギュッと握りしめる。いけないいけない、運転に集中しなければ。こんなところで事故を起こしたら、誰も助けてなんかくれない。深呼吸をして感情を整えた。夕日は既に沈みかけ、なだらかなカーブが続く山道は急速に暗くなり始めていた。プリウスのセンサーが反応して、ヘッドライトが点灯した。
二ヶ月ほど前から、自宅から車で二十分ほど走った場所にあるD市内の会社へ、週三日勤めていた。正直たいした金にはならないが、貯金はなるべく取り崩したくない。働けるときに働いた方がいいと思い、求人に応募した。
勤務先は「サメサメハ」というサメのぬいぐるみを中心とした、ネット通販の会社を運営していた。福田はその物流センターで、発送伝票の作成とチェックをしていた。センター長は早田という四十六歳の男だ。ぬいぐるみと言うより、リアルなサメのように感情の乏しい目をしていた。一日一回以上は部下を怒鳴りつけているおかげで、社員はなかなか定着しなかった。その癖いつも人がいなくて忙しいとぼやいている。
今日はその矛先が福田に向かってきた。きっかけはユーザーからのクレームだった。娘のサプライズプレゼントで「サメサメハ」の特大ぬいぐるみを注文したが、娘がいる夕方に商品が届いてばれてしまったというのだ。伝票を作成したのは福田だった。
「特に時間指定はありませんでしたからねえ」
「そうでしょう。だけどね、誕生日プレゼント用のギフトラッピングなんだから、購入者が一人でいる可能性が高い午前中に指定するべきだったんじゃないですか」
「そんなこと、後から考えればいくらでも言えますよ」
「言い訳するんじゃない」
叱責は十分間続いた。最後になると福田は反論する気力も消え失せ、早田の怒鳴り声を上の空で聞いていた。自分も管理職時代は散々部下を叱ったが、こんな理不尽な理由で怒鳴り倒したことはない。発作のように怒りがぶり返し、もう一度深呼吸をした。
今日はろくなことがなかった。ため息をつきながら、藤が丘シティの中へ入っていった。立ち並ぶ住宅は明かりが灯っておらず、人の気配がない。ゆっくりと道を進んでいく。自宅へ到着し、車を止めて外へ出た。玄関までの歩みがひどく重く感じられた。今日は体力に加えて、精神的にもひどく疲れている。早く風呂へ入って寝てしまおうと思う。玄関前に立ち、ピピッと音がして解錠した。ドアを開けて中に入る。
「徹男さん、お帰りなさいませ。徹男さん宛にお届け物が届いています。郵便ポストをご確認ください」
「なんだ、家へ入る前に言ってくれよ」
福田は吐き捨てるように呟き、脱ぎかけた靴をはき直した。
「申し訳ございません。ですが、外でお伝えすると、第三者に聞かれて荷物の存在を知られることとなり――」
「言い訳するんじゃない」
そう言いながら、早田が自分へ同じ言葉を言い放ったのを思い出し、ひどく嫌な気分になった。鉛でも背負わされたような気分になり、思わずその場へしゃがみ込んだ。
「どうかされましたか?」
返事をする気にもなれなかった。少しだけ体力が戻ってくると、立ち上がって半開きにしたドアから手を伸ばし、ポストを開けた。中には平たい小包が投函されていた。
「何だよこれ」
ここ一ヶ月、福田が通販で物を注文した記憶はない。宅配業者が間違えて配達したのかと思い、宛名を見ると、確かに福田の名前が書いてあった。荷送人は「ツーアンドライフ」と書いてある。ドアを閉め、靴を脱いでリビングへ行った。ソファに座り、改めて宛名を見た。間違いなく自分宛で、住所もこの家だ。中を開けたら、高額の請求書でも入っているんじゃないだろうな。嫌な予感がしたが、開けてみないことにはわからない。疲れた体を引きずりながら、テレビ台の引き出しからカッターを取り出し、箱のテープを切った。中に紙が一枚入っていたので、手に取って文章を読む。
「コイオス」頒布再開のお知らせ
諸事情により、長らく頒布を停止しておりました「コイオス」の頒布が再開する運びとなりました。契約者の皆様方には頒布の遅れについて、多大なるご迷惑をおかけしたこと、深くお詫び申し上げます。なお、頒布につきましては契約分のみとなり、新規契約については承りませんのでご了承願います。
フィーチャー製薬株式会社
あまりに唐突すぎる嫌いはあったものの、一応納得できる内容だった。
「コイオス」というのはフィーチャー製薬が発売した健康ドリンクだった。細胞を活性化させ、体を健やかに保つという、いかにも薬機法を回避するための表現だったのを覚えている。最初は胡散臭くて注文していなかったが、朝比奈が自宅を訪問して勧めたのをきっかけに一年契約で注文した。藤が丘シティはAIを中心に、衣食住トータルの生活水準向上をコンセプトにデザインされた街だった。朝比奈の話によると「コイオス」もコンセプトの一つで、これを飲むことにより、より藤が丘シティの効果が発揮されるという。このため、「コイオス」の販売は藤が丘シティ住民限定だった。
ところが、あの事件の後、ウイステリアの調子が悪いという理由で「コイオス」の配達が停止してしまっていた。返金を申し出た人も多数いたが、フィーチャー製薬側は調整中という理由で応じてくれなかった。数千円の問題で裁判を起こす者もなく、結局そのまま放置されていた。それが今になって突然復活したのだろう。返金してくれればよかったのにと思う。今更こんなもの飲むかと思ったが、このまま捨てるのももったいない。それに、今日はひどく疲れていた。確かカフェインも入っていなかったし、こいつを飲んで寝れば疲れがとれるんじゃないか。
ポリウレタンの梱包シートを取り去ると、親指ほどの大きさをした小瓶が入っていた。福田は小瓶のキャップを開けて一気に飲んだ。甘ったるさの中に、若干苦みがある味が口へ広がった。しばらくすると体がほてり始め、アルコールでも飲んだような心地よさを感じた。少し元気が出てきたので、夕飯の支度を始めた。朝炊いたご飯と、スーパーで買ってきた半額シールが付いたサバの塩焼き、インスタント味噌汁。それと冷蔵庫に残っていた半ば干からびた漬物。いつもなら食べるのにもわびしさを感じるのだが、ドリンクを飲んだせいなのか、今日はそんな感情が湧いてこない。今日の嫌な出来事も落ち着いて考えられる。飲んでよかったなと思った。
福田は少しパサついたご飯を咀嚼しながら、ドリンクを売り込んできた朝比奈の姿を思い出していた。白いポロシャツにグレーのスラックスを穿き、度のきつい金属フレームの眼鏡をかけていた。四十過ぎだったが、大学生のような爽やかな笑顔を浮かべていたのが印象的だった。澤村はエリアが違っていたので直接話したことはなかったが、集会で見たことはある。二人とも朝比奈と同じくスマートな印象だった。あいつらが大量殺人をしたなんて、今でも信じられない。いったい、何があったんだろうと思う。
小関恵輔は中古で買った五年落ちのアルファードから降りた。昼間より少し冷えた夜風が、草木の青臭い匂いを運んできた。それを思い切り吸い込んで吐くと、一緒に疲れも抜けていく気がして心地よかった。鍵を取り出そうとポケットへ手を突っ込んだが、顔認証で開くのを思い出し、一旦掴んだ鍵を離す。ピピッと音が鳴り、ドアが開いた。三和土に入ると、――恵輔様、お帰りなさいませ――という女性の合成音が聞こえてきた。以前はただいまと返していたが、成実から「機械に向かってバカじゃないの」と言われて止めていた。リビングへ行くと、泣いている子供が目に入ってきた。声を上げて盛大に泣いているのは弟の澄海だ。姉の桃音も声は出していないものの、目を赤く腫らして涙を流している。その横で、エプロン姿の成実が腕を組んで二人を睨み付けていた。
「いい加減にしてちょうだい、ママもお夕飯を作ってるところで忙しいんだからね」
「どうしたんだ」
成実が口を尖らせて恵輔を見た。
「澄海が桃音の髪の毛を引っ張ったらしいのよ。それで桃音が頭にきて澄海を蹴り倒したってわけ」
「あははは」
恵輔が声を上げて笑うと、桃音が父親を睨み付けた。「だって最初に手を出してきたのは澄海なのよ」
「そうか。桃音もママに似て気が強いからな」
「何よその言い草」今度は成実が恵輔を睨み付けた。「ま、否定はしないけどさ」
「でもな、桃音はお姉ちゃんなんだし、力も強いんだから、もう少し手加減してやんないとな。澄海もお姉ちゃんが好きだからちょっかいを出してくるんだろ」
澄海がべそをかきながら頷いた。
恵輔は床に座ってあぐらをかき、両手を広げた。「ほら、二人ともこっちへ来なさい。仲直りだ」
桃音と澄海が恵輔の胸の中へ飛び込んでくる。
「おっと、お前らも大きくなってきたな」
恵輔は後ろに倒れそうになりながらも二人を受け止めて抱きしめた。子供たちの少し汗臭い匂いと体温が愛おしく、腕に力を込める。
「ほら、ママも来なよ」
成実はまだむっとした顔をしながらも、まんざらではない様子でしゃがみ込み、桃音と澄海を背中から抱きしめた。
「よし、これで仲直り。いいな」
腕からから離れた桃音と澄海は、まだべそをかいたままだが頷いた。恵輔はポンと二人の頭を軽く叩いて立ち上がった。
つけっぱなしのテレビではニュースが放送されている。テーブルの上にあるリモコンを手に取り、チャンネルを変えていく。
「ん?」
二流タレントが出演している旅番組にチャンネルが変わったところで、恵輔はテーブルの上に載っている平たい小包が自分宛だと気づいた。
「これって、お前が頼んだのか?」
恵輔が小包を持って立ちあがり、料理の盛り付けをしている成実へ声をかけた。
「あたしだったらあたしの名前に決まってるじゃん。恵輔が頼んだんでしょ」
「でも、俺はこんなもん頼んだ覚えはないぞ」
発送人欄には「ツーアンドライフ」と表示されている。記憶にない名前だ。
「怪しいな」
「開けて中を見てみれば?」
「そうだな」
恵輔はテープを外して蓋を開いた。ポリウレタンの梱包シートに包まれて、小さな瓶が出てきた。「コイオス」と書いてある。細かい字で化学物質の名前が書いてある下に、製造者「フィーチャー製薬株式会社」と表示されている。
「フィーチャーなんちゃらっていうと、ここを作ったフィーチャーライフの関連なのかな」
包装紙だと思っていた紙を何気なく手に取ると、文章が書いてあるのに気づいた。
藤が丘シティ新規居住者の皆様方へ
ようこそ藤が丘シティへおいでいただきました。弊社グループは、既に藤が丘シティの保守運営から撤退しておりますが、リサーチ業務は継続させていただいております。今回そのご挨拶と共に、ささやかではありますが、弊社グループが開発した「コイオス」を無料で頒布させていただきます。
「コイオス」は藤が丘シティをデザインした小田川翔吾のアドバイスにより、誕生した全く新しい健康ドリンクです。藤が丘シティに集う人にふさわしいドリンクをコンセプトに開発された限定商品となります。
今後とも、お引き立ての程、よろしくお願いいたします。
フィーチャー製薬株式会社
「ふーん」
恵輔はもう一度ドリンクをしげしげと眺めると、キャップを捻って開け、一息に飲み干した。甘さの中に、少し苦みが残る味だった。
「ご飯が出来たよ」と声がしたので立ち上がり、キッチンへ行ってテーブルに座る。今日は野菜炒めに冷や奴、インスタント味噌汁。テーブルの中央にはプラ容器に入った真っ赤なキムチが置いてある。みんなで手を合わせ、「いただきます」といって食べ始める。桃音と澄海も、さっきまで泣いていたのが嘘のように、夢中でご飯を食べていた。食事の後、リビングのソファに戻り、リモコンでテレビのチャンネルを変えたが、ろくな番組をやっていないので、スマホを出してSNSを見ていた。
「あらやだ。これ、飲んじゃったの?」
不意に、頭上から成実の声が聞こえてきた。顔を上げると、空の瓶と紙を持って、あきれ顔で見下ろしていた。
「そうだけど、なんか悪いのか」
「怪しい薬だったらどうすんのよ」
「怪しくねえよ。作ってるところはフィーチャーライフの関連会社だろ」
「本当にここが作ってるかわかんないじゃん」
「そんなこと言ったらきりがねえよ。この通りピンピンだし」
恵輔は右の拳を繰り返し突き上げた。
「それに」恵輔は言いながら、初めて自分の変化に気づいた。「なんだか風呂に入った後みたいに、ぽかぽかする。いい感じだぜ」
「へえ」
それでも成実は疑い深げに見つめてくる。
「箱の中に四つ入っているんだ。お前も飲んだらどうだ、人数分あるぞ」
「桃音も飲みたいっ」
「僕も」
桃音が目を輝かせて恵輔の座っているソファへ座り込んだ。遅れて澄海もわずかな隙間へ体を押し込んでくる。
「あんたたちはだめ」
桃音が箱へ手を伸ばしたが、先に成実が取り上げた。
「えっー、パパばっかりずるい」
桃音と澄海が口を尖らせて抗議したが、成実は無視して箱をキッチンへ持って行き、子供たちの手が届かないキッチンボードの一番上の棚へしまった。恵輔が「食い物墓場」と呼んでいる棚だ。買いすぎてしまった食材や、あまりおいしそうでないもらい物を置いておく棚だった。一旦しまったら最後、再び棚から出てくることはほとんどない。きっと半分近くが賞味期限切れなはずだ。
携帯電話は午後十一時五十五分と表示されている。成実は半身を起こし、携帯電話の画面でわずかに照らされている寝室で、桃音と澄海がお互いの頭をくっつけるようにして眠っているのを見ていた。足元までずれている毛布を手に取り、二人の肩まで引っ張り上げた。あどけない寝顔がほんとうにかわいいと思いながら、そっと二人の髪の毛を撫でた。更にその奥で眠っている恵輔を見る。いびきをかき、口を半開きにして間抜けな顔で寝入っていた。
十年前は憧れの先輩だった。高校三年の時、三番レフトで夏の甲子園へ出場した。二回戦で敗退したが、プロ野球のスカウトも練習を度々見に来たという。結局ドラフトでは選ばれなかったが、高校卒業は社会人野球で有名な大手メーカーへ就職した。成実が就職したのはメーカー系列の業務サポート会社だった。同じフロアにいた恵輔と成実は付き合うようになり、一年後、桃音の妊娠が発覚した。慌てて籍を入れ、お腹が目立たないうちに盛大な結婚式を挙げた。恵輔二十二歳、成実が二十歳だった。二年後に澄海も生まれ、順風満帆な生活を送っていた。
転機が起きたのは五年前だった。走塁中に肉離れを起こし、長期の離脱を余儀なくされた。その間に代役で入ったレフトが予想外の活躍を見せ、恵輔は復帰したものの、試合に出る回数が極端に減っていった。ストレスを抱えていた恵輔は、ある日些細なことで上司と喧嘩をし、会社を辞めてしまった。新たに就職した会社は飲料品のOEMをメインに行っているメーカーだったが、給与は大幅に下がってしまった。子供の教育費や日々の生活費を考えると、一軒家など夢物語だった。そんなとき、友人の彩菜から藤が丘シティの話を聞いた。
「いわゆる事故物件って奴。当初から半値まで下がっているんだってさ。気にしなければ、相当なお買い得よ」
事件の話は当時大々的に取り上げられていたので、ほとんどニュースを見ない成実も知っていた。三十五人の死者を出した、日本の犯罪史上希に見る大量殺人事件だ。それでも犯人はもう死んでいるのだから、再び事件が起きることなんてあり得ない。成実は恵輔に相談した。
「でもさ、そういうところって、死んだ人の霊が留まってさ、変な空気が流れてるとかよく言うじゃん」
恵輔は意外に神経質なことを言うなと思いながらも、いっぺん見学に行ってみようということになり、休みの日に彩菜と連れだって見学に行った。家は家族四人が暮らすのに十分な広さだし、デザインもモダンだ。太陽光パネルと地下の蓄電設備で電気代は格安だし、AIが風呂の給湯から照明の管理までしてくれる。恵輔の職場からも充分通える距離だ。
「雰囲気も悪くないねえ」
恵輔も乗り気になり、三十年の住宅ローンを組んで購入することになった。
成実は喉が渇いてきたので立ち上がり、子供と恵輔をまたいで寝室を出た。キッチンへ行き、冷蔵庫からスポーツドリンクのペットボトルを取り出してコップに注いだ。一息に飲んで息を吐く。康孝と会った日は気持ちが高ぶって寝付きが悪い。
康孝が唇と舌で愛撫する肌の記憶。そして何より彼が中へ入ってくるときの感覚がよみがえり、体の芯が熱くなってくる。恵輔、それに康孝の妻であり、成実の親友でもある彩菜には後ろめたい気持ちがある。しかしそんな感情すらも、暗い興奮を呼び覚ましてしまう。
恵輔とは一年以上何もしていない。転職してたまに草野球しかしなくなってから、急速に体の贅肉がつき始め、昔の面影はない。ただのぶよぶよした肉の塊で、魅力はなくなっていた。前に車のコンソールにあったレシートをなにげに見ると、「銀次ビデオ 月ヶ峰店」と書いてあった。何だろうとネットで調べると、個室ビデオだった。こんなところへ行ってやがるのかと思い、更に気持ちが萎えていった。
今日は一日ちび達に振り回されて体は疲れているはずなのに、頭の中は冴え冴えとしてバランスが悪い。どうにかならないかと思っていると、ふと棚に目が行った。さっき恵輔がコイオスを飲んでいたのを思い出す。踏み台を引っ張り出して床に置き、棚を開けて中をのぞき込む。
いつしまったのか記憶のないものがごちゃごちゃと入っている中、さっき放り込んだ包みを取り出した。白い包装シートから一瓶取り出し、包みを戻す。リビングへ行き、ソファへ座って瓶の表示を見たが、成分についてどんな効果があるか全く理解できなかった。瓶を置き、スマホで「コイオス フィーチャーライフ」で検索した。メーカーサイトは出てこなかったが、古いブログに紹介があった。
藤が丘シティを作り上げた天才小田川翔吾がプロデュースした「コイオス」。
メディアで取り上げられているのでご存じの方もいるかと思います。これはどんな飲み物なんでしょうか。皆さんは興味ありませんか。
今回、藤が丘シティに住んでいる友人宅にお邪魔して現物を見せてもらいました。
透明の小瓶で、シンプルなラベルが貼ってありますね。
住民専用のサイトに書いてあったんですけど、これって、なんと無人の工場で製造から梱包までされているんですって。凄いと思いませんか。
肝心のお味何ですが、契約で住民以外の人は飲めないんです(涙)。
お友達の話によると、甘みの中にちょっと舌にピリピリするような苦みがあるそうですよ。飲むとなんだかぽかぽかして、温泉に入ったような気分になるんですって。
早く一般の人にも販売されるといいですね。
他のサイトやSNSを見てみたが、特に体調が悪いといった書き込みはなかった。あいつもぽかぽかするって言ってたし、飲んでも大丈夫なのかな。成実はキャップを開けた。いかにも栄養ドリンクといった甘ったるい匂いがする。口を付けて全部飲む。しばらくすると恵輔の言ったとおり、体全体が暖かく感じてきた。高ぶった感情が落ち着き、リラックスした気分になってくる。
これ、ちょっといいんじゃないの。成実は寝室へ戻り、子供たちの横で眠りについた。朝まで目覚めることはなかった。




