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未来の棋界からはるばると

作者: ゆきの暴威

はあ、また対局に負けた。まったく全然勝てないなあ。これで10連敗か。


僕、野飛乗太(のびのりた)は半年前にプロ棋士になったピチピチの10歳。小学生棋士として世間から騒がれたんだけど、どうも様子がおかしいんだ。プロデビューしてからまだ1局も勝っていないんだ。10連敗なんて今までしたことないよ。始めは天才だなんだって言われたけど、僕が弱いことがわかってから、世間じゃ手の平を返したようにデビュー29連敗を期待されてる。ちぇー。


これは世の中が悪い。僕をプロデビューさせたほうが悪いんだ。そうに決まってる。三段リーグはみんなおかしいくらい弱かったのに、棋士になってから全然勝てない。これははめられたんだ。僕を馬鹿にしようとして。


こんなことなら半年前に戻ってプロにならなきゃよかった。あータイムマシンがほしいなあ。


――いやあ、ろくなことがないね――


――野飛乗太は30年後に首をつる――


野飛「ん、なんか妙な声が聞こえた。一体なんだ」


トントントン。


野飛「ドアのノック。ママかな」


???「僕だけど。気にさわったかしら」


野飛「わっ!」


ドアを開けた先にいたのは少し背の小さい男だった。眼鏡をかけて色白の肌。服装は派手。


野飛「どなたですか。泥棒! 強盗!」


???「違う違う。僕は君を救いにきた未来の大名人さ」


野飛「大名人?」


大名人「君のせいで将棋界は大きく歪んじゃったんだ。だから僕が未来からタイムスリップして歴史を修正させにきたんだよ」


大名人「それと、君自身の恐ろしい運命を変えにきた」


野飛「えっ、まさかその30年後に首つりってやつ?」


大名人「そう。しかも君はその30年間、まったくロクなめに遭わない人生になるのだ」


野飛「えーっ」


大名人「君はこのままずーっと負け続け、前代未聞の0勝126敗で棋士人生を終えるのだ」


野飛「うえーっ1勝もできないの?」


大名人「そう。絶対に勝てそうな引退棋士との特例の対局まで設けられることになるけど、それでも負け続けて手の負えない存在になってしまう」


野飛「ひえーっ」


大名人「15連敗目は相手が体調不良で不戦敗になったにもかかわらず、君も寝坊して両者不戦敗扱いになる」


野飛「僕の馬鹿―」


大名人「かわいそうに思った優しいベテラン棋士がわざと負けようと投了したけど、その後理事会で八百長試合と判定され、そのベテラン棋士は除名処分に。君はなぜか逆に負け扱いになる」


野飛「そんなー」


大名人「温情ができないと知ったほかの棋士は徹底的に君をつぶしにくる」


野飛「うわー」


大名人「100連敗が掛かった対局は全国の地上波で生中継され、全国のお茶の間に一斉に馬鹿にされる」


野飛「ひどーい」


大名人「104連敗目は対戦相手の棋士が午後にインターネットテレビで解説の仕事を入れていたけど、午前で終わったから無事に放送に間に合ってしまう」


野飛「対局の日にほかの仕事は入れちゃいけないんだぞー」


大名人「120連敗目はついに将棋連合の会長さんから強制引退勧告をされる」


野飛「もういやだー」


大名人「絶対に負けないと握手までして誓ったのに36手で負けてしまう」


野飛「瞬殺されてるー」


大名人「君の最後の対局は奇跡的に勝ちまであと一歩のところまで追い詰めたのに、興奮しすぎて二手指しの反則をしてしまう」


野飛「久しぶりの感覚がそんなに嬉しかったのかー」


大名人「最後の対局を反則で終えるという伝説を残し、君は強制引退になった」


野飛「末代までの恥だー」


大名人「その後も全人類から馬鹿にされ続け、投資詐欺に引っかかり多額の借金を抱えて自暴自棄になり犯罪にまで手を染めてしまう。そして君は首をつってこの世を去る」


野飛「……」


大名人「君はこの先一生不幸な人生を歩み続けるのだ」


野飛「ぼ、僕は、僕はもう生きてるのが嫌になっちゃった」


大名人「そんなに気を落とすなよ。そうならないように僕が運命を変えにきたんだ」


野飛「ほんと? うーんでもおかしいぞ。僕が勝てるようになったら歴史がいろいろ変わっちゃうんじゃないかな。それに、君の姿は例のロボットみたいな見た目じゃなくて、普通のおじさんじゃないか。僕をだましにきたとしか思えないね」


大名人「これが証明さ」


野飛「なにこれ」


大名人「2112年のアームウオッチさ。ここを押すと」


野飛「うわっ」


大名人「ほら、こんな感じに空間に地図が出る。操作は指一本でできるんだ」


野飛「うわーなにこれ。すごいね。未来の製品みたい」


大名人「実際そうなの。僕は2112年の将棋の名人さ。君なんか赤子の手をひねるようなものだよ」


野飛「なにーっ。そこまでいうなら勝負だ」


大名人「いいだろう」



――5分後。



野飛「はあはあ、なんじゃこりゃ。まるでソフトと対戦しているみたいだ」


大名人「ねっ。君なんか相手にならない」


野飛「この僕が40手で負けるなんて」


大名人「もっとも君はプロとして弱すぎだよ」


野飛「うるさーい。僕が勝つまで勝負だ」


――1時間後。


野飛「すみませんでした」


大名人「わかればよろしい」


野飛「藤木七冠より強い気がするぞ。この僕が10連敗するなんて。しかも1回も王手できなかった」


大名人「だから君はプロとして弱すぎなんだって」


野飛「それに見たことのない作戦をやられた。……もしかして本当に未来の棋界からやってきたの?」


大名人「そう」


野飛「あなたの名前は?」


大名人「銅羅ネオ(どうらねお)


野飛「ようし、信じてやる」


銅羅「よかったよかった。ちなみに僕は君以外にもちょくちょく歴史を修正させにきてるんだよ」


野飛「なんだ、僕以外にも来てるんだ」


銅羅「いちばん古かったのは200年くらい前かな。明治時代だとか大正時代だとか忘れちゃったけど」


野飛「へえーそんな昔に」


銅羅「その頃は将棋のレベルが低すぎてね、僕がいろいろ教えてあげたんだ」


野飛「へえ。例えば?」


銅羅「うーん、4八金・2九飛の組み合わせとかかな」


野飛「ああ、聞いたことがある。いまじゃ常識の好形だけど、大昔にすでに指されていたんだってね」


銅羅「そうさ」


野飛「土居矢倉とかも再評価されてるし」


銅羅「土居矢倉? ああ、金を左に上げるやつね。あれも僕が教えたんだもん。2112年の将棋の常識を教えたら『馬鹿にするな』って怒鳴られてさ。だからその100年くらい前に流行った将棋を教えたんだ」


野飛「なるほどそういうことだったのか」


銅羅「僕が将棋のレベルを引き上げにきてやっているんだよ」


野飛「へー信じられないけど。じゃあ、未来の将棋の常識を教えてよ。2112年ってどうなっているのさ」


銅羅「まあもうコンピューターによって将棋は解析されているよ」


野飛「えーっ! だって将棋の可能性は天文学的だって前に見たよ」


銅羅「未来の世界をなめてもらっちゃ困るなあ。コンピューターは飛躍的に進歩を遂げたんだよ」


野飛「そんなわけないよ」


銅羅「じゃあ1900年代の世界を想像してごらんよ。そもそもコンピューターってものがあったかわからないけど」


野飛「ああ、確かに。ケータイやファミコンすらもない」


銅羅「当時の将棋は完全に解析されちゃったから。ちょっとルールが変わってるんだよ」


野飛「えーっ」


銅羅「君のいまやっている将棋とはちょっと違うよ」


野飛「どう違うの」


銅羅「入玉が変わったんだよ。えーとどれどれ。当時の史料は……っと。ひえーまだ全然規定ができてないんだね。将棋連合らしいや。あっはっは。24点で持将棋なんだ。そりゃ引き分けだらけだよ。みんな入玉目指しているでしょ」


野飛「そうでもないよ」


銅羅「へー入玉すれば少なくとも負けないのに」


野飛「なんでそんなに入玉を推すのさ」


銅羅「従来の将棋の結論は『相入玉で引き分け』なんだ。入玉周りのルールが欠陥だったんだよ。そもそも駒を点数化させるなんておかしな話さ。大駒が5点ってのも適当だなあ。令和らしいアバウトな時代だね」


野飛「へーなんか馬鹿にされててムカつくけど。入玉のルールが整備されたあとはどういう結論になったの」


銅羅「今度は千日手で引き分けになったんだ。だから千日手も変わろうといま改革中だよ。ちなみに令和後期の時代にも事件が起こっててね。確かタイトル戦で千日手が3回連続で起きたんだ。で、後日指し直しになったんだけど、そこでもまた千日手になってね。お互い譲らなくてまた3回連続千日手になったんだ」


野飛「えーつまり6回連続で」


銅羅「千日手好きな棋士がいたみたいだね。それで社会問題になったんだ。ソフト指しだとか談合だとか」


野飛「ああ」


銅羅「もし千日手がこの世からなくなったら後手必勝だね。千日手の打開権を振り駒で決めておくってのが一案だけど、まだ調整中だよ」


野飛「じゃあ具体的に教えてくれ。未来の将棋はどうなっているのさ。定跡は」


銅羅「まあ普通にやると後手が勝っちゃうからね。序盤の早い段階で手待ちするんだ。そういえば僕も調べていて驚いたよ。大昔に初手から▲6八金△8四歩▲7八金という手法をやった棋士がいたんだね。その感覚がいまの将棋さ」


野飛「そんな棋譜あるんだ。知らなかった」


銅羅「令和どころか平成にその感覚を持っているだなんて天才だよ。誰か忘れちゃったなあ」


野飛「それはどういう意味なの」


銅羅「飛車先の歩を突かせたことが大きいんだよ。歩ってのは後ろに戻れない駒だからね。それがポイント。つまり形を決めさせたんだ」


野飛「えー別に損してるようには思えないけど」


銅羅「飛車先の歩交換ってのもただの手損だからね。昔は歩交換してから本格的に攻めるのが多かったみたいだけど、ずいぶん悠長なんだ。あと▲7六歩って角道を開けるのも危険だよ。その歩って取られやすいでしょ。すぐに狙われて不利になっちゃう」


野飛「ちょっとちょっと、意味がわからないよ。別に▲7六歩も▲2六歩も普通じゃないか」


銅羅「まあでも形を決めちゃうからね」


野飛「▲7六歩が否定されるなんて思いもしなかった」


銅羅「▲7六歩と突いたってすぐに角が使えるわけじゃないだろう。まさか▲3三角成って飛び込むのかい?」


野飛「うっそれは」


銅羅「7六の歩は浮き駒になりやすいし、それをうまく支えるのにもけっこう繊細な手順が求められるんだ。まあこれは説明しても難しいだろうね」


野飛「うーん一理あるようなないような」


銅羅「今の主流は初手▲5八玉や▲6八金が多いかな。君の感覚から見れば初手からシビアな時代って感じなのかもね」


野飛「あ、そういえばさらっと流しちゃったけど、将棋って後手が勝つようになっちゃうの?」


銅羅「そうさ。相手の手に対応していけば勝つゲームだよ」


野飛「えー先手のほうが1手多く指しているわけだし、先手有利だと思っちゃうけどなあ。ソフトも先手の勝率が高いらしいし」


銅羅「それはレベルの低い間での話だね。相手が例えば3三銀型にしているとか、適当に飛車を振っているとか、よっぽどひどい形にしていれば成立するけれど」


野飛「3三銀型って矢倉でよく見られるやつか」


銅羅「なんで桂の通り道に駒を配置するかなあ。つくづく令和はレベルが低い」


野飛「いやそう言われても。ちょっと怖いこと質問するけど振り飛車は?」


銅羅「うーん令和に指されたやつの中では死滅したものも多いね。一応、千日手に持ち込めるものもあるから完全になくなってないよ」


野飛「ほっ、よかった。でも意外だなあ」


銅羅「令和の時代にはもう振り飛車を否定する声もあった」


野飛「まあ評価値が悪くなるからね。でもまあまあ指されてるよ」


銅羅「そうか、なるほどなるほど」


野飛「そうだ、千日手に持ち込めるってやつ教えてよ。後手番でしょ。それ使ってみたいなあ」


銅羅「無駄だよ。相手が定跡通りに指してくれないからねきっと。どうせまだこの時代は穴熊に組んでるんだろ」


野飛「うん。穴熊よく指されているよ」


銅羅「ぬるいなあ。組む方も組まれる方も。君は違和感を持たないのかい? 令和にはもうバランス重視の感覚が出てきているだろ」


野飛「まあ別に。それはそれだよ」


銅羅「玉の守り駒がない分、盤上がずいぶん薄く見えちゃうね。隅っこに隠居させちゃってさ」


野飛「うーんでも詰まされにくいし勝ちやすいよ」


銅羅「穴熊に組む前に振り飛車なんてやっつけられるし、穴熊に組まれたら反対側で制圧すれば振り飛車勝ちだよ。あれだけ偏っているんだから」


野飛「そうか、いざとなれば端攻めもあるしね。それは僕も薄々思ってたんだ」


銅羅「端攻めするまでもないよ。もうあと何十年かすれば主流になるけど、穴熊に組まれたら玉側じゃないほうで金銀を繰り出して押さえ込んでいけばいいんだ。金銀3枚の穴熊相手ならそれで勝てるよ。あ、でも美濃囲いとかいう化石囲いは使わないでね。ちゃんとバランス保ってね」


野飛「うえーん、美濃囲いまで否定されたー僕の魂なのに」


銅羅「よくあんな薄い囲いで戦っているよね。そりゃ穴熊側が有利になるはずさ。自らハンデ背負って戦っているみたい。お付き合いみたいで……」


野飛「うるさーい! 美濃囲いを馬鹿にすると許さんぞー」


銅羅「あの囲い全方向に弱いんだよ。端攻め、コビン攻め、玉頭。横からも。特に8二に玉がいるのが条件として最悪だね。角筋に狙われやすいし、桂にも当たりやすいし、玉頭攻めきついし。端にも近い」


野飛「横からの攻めには強いじゃないか」


銅羅「うーんまあ令和目線だとそうなのかもね」


野飛「まったく偉そうに大名人は……。それにしても将棋ってそんな簡単に解明されちゃうんだ。ちょっぴり虚しくなったなあ」


銅羅「アメリカの大きな会社が本気で開発したゲーミングプログラムができたんだ。チェスとかのアナログゲームはすべて解明されているよ」


野飛「困るなあ。そんなことしなくてもいいのに」


銅羅「もうこっちの世界じゃアナログゲームなんて誰もやってないよ。だから終わらせたんだ。いまはデジアドとかマジスタとかシューガンが主流だね。まあなんのことかわからんだろうけど」


野飛「そんなあ。でも君はその世界で将棋の名人なんでしょ」


銅羅「ほとんどなんの意味もないけどね。そっちは普及がメインだよ。こんな文化も残ってるんだよみたいな。普段は大学の研究施設で考古学を調べているよ」


野飛「えー寂しいなあ。名人が副業だなんて」


銅羅「もう副業が当たり前の時代さ。君らはまだ棋士だけで生活できているんだね。こっちの世界の人に伝えたらみんなびっくりするだろうなあ」


野飛「スポンサーとか離れちゃったの?」


銅羅「まあ日本全体が貧しくなっちゃってる感じかな。アナログゲームなんかに国もお金かけてられないからね」


野飛「へー寂しい」


銅羅「だけど今は国際戦があるよ。まあでも日本の代表になれば実質世界一みたいなものだけどね」


野飛「中国とか韓国とか強そうだよね?」


銅羅「ん? 中国……韓国……。ああ、昔はそう呼んでたんだ。今は日本の次にシンガポールが強いよ」


野飛「へー意外」


銅羅「なんでもすごく将棋の強かった日本人の資産家が昔そこで大規模な将棋教室を開いていたらしいんだ。だから急成長したらしいね。ちなみに伝説上の存在だけど、瞬間的に1位になったのはドイツ人だけどね」


野飛「なんかもういいや。ねえそんなことより必勝法教えてよ」


銅羅「ほんと幼稚だなあ君は。結論だけ知ろうとしても強くなれないのはわかるでしょ」


野飛「でもなんかあるでしょ特定のいい知識」


銅羅「なんか教える気なくすなあ。そのまま首つってもらおうかな」


野飛「やだよー」


銅羅「しょうがないなあ。じゃあひとつね。どんな戦型でも左右の桂を使えるようにしておくこと」


野飛「もうひとつ!」


銅羅「浮き駒を作らないこと」


野飛「もうひとつ!」


銅羅「キリがないなあ」


野飛「だってそのくらい今とあんまり変わらないんだもん。それにアバウトだよ」


銅羅「えーその時代の将棋並べたけどみんなあんまりできてないよ。そんだけ競技人口が多いのに」


野飛「いいから具体的なのちょうだい」


銅羅「じゃあ、序盤から積極的に4七銀・4八金・2九飛型に組むんだね。飛車先の歩交換は余計だからやめること。せっかく大昔にこの常識教えたのに、時代が進んで曲解されちゃったっぽいんだよね」


野飛「わかった。けど僕振り飛車党なんだよ」


銅羅「振り飛車なんかやめればいいじゃん。君は居飛車が向いてる。そういう変なこだわりを持っている人ほど伸びないよ。いいものは積極的に取り入れよう。好奇心旺盛になろう。君は頭がいい。勉強だけしていれば東大は楽勝だ。現に棋士にだってなれてるんだし」


野飛「僕頭いいのかな」


銅羅「棋士になっていなければ楽勝で一流大学に入れたね。でも棋士になった以上、盤上の中だけでもいろいろ取り入れるべきだ。ふふふ、なんかいまいい感じのこと言った。ここらが引き際かな。振り飛車やめさせるだけでも未来変わるでしょ。じゃ、君が次世代のリーダーになるんだから将棋界を引っ張っておくれよ。頼んだよ」


そう言って彼は突然姿を消した。何の前触れもなく。僕は夢を見ていたのだろうか。


いいものは積極的に取り入れよう。好奇心旺盛になろう。


これが僕にとって人生最大最良のアドバイスだった。僕は型にはまった将棋を捨て、誰も見たことがない形や定跡を指すことにした。


???「本来、君は天才少年だったはずなんだ。でもこれで将棋界の歴史は元に戻ったね」



聞き手「さて、本日は野飛乗太六段と源静男(みなもとしずお)四段の新人王戦の対局を中継いたします。

デビュー以来10連敗と苦しんでいた野飛乗太ですが、プロの水に慣れたのでしょう、その後は破竹の勢いで勝ちまくって現在49連勝中。次の対局に勝てば前人未到の50連勝を達成します」

解説「前人未到という言葉をもう何度使ったかわかりませんね。ははは」

聞き手「さあ今日もあの初手が出るんでしょうか、野飛六段」


記録係「それでは野飛六段の先手でお願いします」


いよいよ対局が始まる。僕の初手は――

玉をつまみ、高々と天を舞った。




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