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第30話「種を守る国、捨てた国」

「年間気候予報?天気じゃなくて」


「ああ、子どもでも知っている話だが、まさか、知らないのか」


「ああ……どういうことなんだ」


 信次郎は、つい背筋を伸ばして、リナの顔をまじまじと見た。


(いま、リナを見つめているのは、お天気の話に興味深々だからだよ?)


「簡単に説明してやろう。この国には、中心星――つまりお日様の活動を観測してる専門家がいる。各地の大木の年輪の研究などによって、お日様の光は一定という仮説はずいぶん昔に覆された。活動の強さは何百年単位で強まったり弱まったりしてるんだ。さらに、数十年の長期周期と、数年単位の短期周期があって、それらが重なって、場合によっては急激な寒冷化を引き起こす。さらに、もっと細かく言えば……波長と強度と……磁気の……いや、これは……複雑で……つまり……」


(ほぼわかりませんが、簡単に説明しているのはお日様だけなんですが!)


「というわけで、来年はやや気温が下がる。夏は涼しくなるが――」


 一拍、間があいた。


「……冬は、少し厳しくなるだろう。」


(たしかに、太陽活動が弱まれば気温は下がる……逆に強まれば……でも、俺の世界では温暖化って……)


 背筋に、ぞくりとした寒気が走った。


(だめだ、それは考えちゃいけない。二酸化炭素が原因だ。そう決まっている。そう、教えられたんだ。)


「まぁ、あまり心配することはない。この国には、植物の種を守る法律と制度がある。来年冷えるとわかれば、寒さに強い品種の種を、国が安く、時には無償で提供してくれる。雨の年には雨に強い米などの品種も提供してくれる。」


(え、この世界にも米あるの?米めっちゃ育てたいんですが。)


(親父が、なんか言ってたな。この国は、もう種を守らなくなったって。これからは、外国から買うか、自分たちで保存していくしかないって……)

(……親父は、そのために農家になったのか?)


(種を、守る国か……。なんで俺の世界は、それをやめちまったんだ?)

(もし、中心星の活動が低下したら……)


 今度は、頭痛がする。


(いやいや、そんなことはあり得ない。気温は上がり続ける。二酸化炭素を止めない限り……!)


 そう思った瞬間――、不思議と、痛みはすうっと消えた。


 数秒の静けさのあと、リナが口を開く。


「秋植えの作物は、寒さにつよい品種を選んだほうがいい。」


ユウナが、小さくつぶやくように言った。

「冬野菜用の種はあるけど、小麦は寒さに強いものはないね。」


リナがさらりとまとめるように言った。


「では、近いうちに、町に買いに行くか」


(お姉さま頼もしい!)

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