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第12話「こちらでお清めください」

 司祭の祈り、《エリア清潔魔法》は、周辺の土中の微生物まで消滅させてしまう。

 農家にとってはまさに“死の祝福デス・ブレス”。これでは畑が保たない。


 そこで俺は考えた。今後は二次被害を防ぐために、祈りを捧げる場所をあらかじめ指定しておこう。

 その名も――《デス・ブレス・プレイス》。もちろん俺の中だけの呼び方だ。


 この提案には、ユウナも母さんも賛成してくれた。

 畑を耕しているときに出てくる石の処理に困っていたから、ちょうどよかったらしい。


「お祈りを畑でやられたら、本当に困るもんね」

 ユウナが苦笑しながら言う。


 さっそく手押し車で石を運ぶ。両手持ちと二刀流、両方のスキルを習得したおかげで、操作はスムーズだ。

 石のごつごつとした重みが腕に響くが、それすらも今はやる気に変わっている。

 そういえば現実世界では、一輪車で作物をぶちまけてしまったことがあったっけ。売り物にならなくなった芋を見て、親父は笑ってこう言った。


「家で食べるからいいよ」


 ……あれからしばらく芋三昧の日々が続いたな。


 さて、ともかく、まずはデス・ブレス・プレイスの整備だ。


 《エリア清潔魔法》の範囲はだいたい把握している。それを基準に円形に石を並べていく。

 コンパスの要領で、中心に棒を立てて、ユウナに持ってもらい、ロープで距離を固定して円を描く。

 きれいめな石を選んで、丁寧に敷き詰めていく。


「こういう作業、ちょっと楽しいかも」

 ユウナは時折石を見比べながら、真剣な顔で手を動かしている。


 次は、司祭の来る方向に向けて、進入路――名付けて《司祭ロード》を整備する。

 左右に石を等間隔で並べ、ロープで幅と距離を確認しながら慎重に。


(……これで次に来たときは、まっすぐプレイスへご案内できるはず。思わず通っちゃうよね。)


(ん?これって……なんか作業が妙に楽しいな。あ、これ巨大地上絵だ。「異世界で暇すぎて地上絵つくってたら宇宙人に出会いました」みたいな展開?  やばい、7章で宇宙編突入か……)


 畑に土足でずかずか踏み入れられることも、これで防げる。


(ふふ、これぞ農家の意地。豊穣の祈り、大歓迎――ただし、立ち入りは「指定エリアのみ」でお願いします!)


 こうして、俺たちは黙々と石を運び、敷き、並べていった。


(……でも、国中でこんな“祈り”が行われてるとしたら……国中の畑が壊滅してない?)


 そんなことを考えていたら、ユウナの母が昼ごはんを呼びにきた。

 ご飯のあとは、いよいよ豆まきだ。

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