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6 「受け入れてもらえて、何だかすごく嬉しくなってます…」

「な、なりません!ハル様!」


 わたしのプロポーズ劇を唖然として見ていたおじいさんが、意識を取り戻してわなわなと震え始めた。


「このような者たちを夫にするなど!」

「何か問題でも?神殿長殿」

「問題しかないわ!神子様をこのような辺境に置くとでも!?」

「その神子様がこちらが良いと仰っているのですよ。それに我々の実力は王都にも届いているのでは?神子を守るに充分であると自負していますが」

「王都に届いているのはそなたらの野蛮な闘い様よ!隣国の者への容赦のない攻めように、魔物を屠る様は悪鬼のごとく語られておるわ!そのような者たちに神子様を託すなどありえん話だ!」


 大丈夫かな。

 心臓発作でも起こしかねない興奮ぶりだ。


「ハル様、どうか、どうか我らと王都に参られませ。悪いようにはいたしません。神殿の荘厳な佇まいと王都の華々しい街並みをご覧になれば、きっと気に入ること間違いございません!ハル様に相応しい夫を必ず私めが見つけてまいります!さぁ、どうか一緒に王都に参りましょう!」


 身を乗り出して目をかっ開き、是が非でもわたしを連れて行こうとするおじさまたち。

 どうしてここがそんなに悪いところだと思うのだろう。


「わたし、人生で初めて求婚したんです」

「…は?」

「受け入れてもらえたんです」

「いやですがそれは…」

「ここに来る前の世界では、家族には良い思い出がなくて…」

「……」

「だから夫なんてって思ってたんだけど…自分でも調子いいと思うけど…」

「ハル?」

「受け入れてもらえて、何だかすごく嬉しくなってます…」


 だんだん恥ずかしくなってきて、顔も熱いし絶対真っ赤になってるので、とりあえず下を向いて言う。


「そ、それは…ハル様がお幸せなのが何よりなのですが…」

「じゃあ、行かなくてもいいですよね?ここにいていいですよね?」


 とうとうおじいさんは何も言えなくなって、覚えとけ、なんて捨て台詞は吐かなかったけど、何かあればいつでも離婚できることとそのときは迎えに来ると言い残して帰っていった。

 ちなみに何故かクラウドさんが持っていた婚姻届に四人分サインをしておじいさんに預けた。

 役所とか行かなくてよくて、本当に結婚したのかなと実感が湧かないけど、わたしは四人の人妻となったらしい。

 四人の人妻ってなんだ。


 ひとまずこの世界で保護者を得ることになったわたしは、これ以上結婚を迫られることのないことに心から安堵した。

 安堵してたらあっという間に地獄に落とされた。


「言っとくが、四人じゃ足りないぞ」

「へ?」

「五十ってのはなかなかだけど、せめてニ十はほしいところだよね。警備的に」

「常に私たち全員が揃っていれば問題はないのですが…そういうわけにもいきませんしね」

「障壁はれる人必要」


ニ十って…二十って…


「必要ですか?そんなに!?」

「まぁ俺たちの本音としてはあまり増やしたくないんだが…」

「もどかしいところですね」

「ハルの安全と独占したい気持ちで揺らぐよね」

「増やしたくはない」


 えぇっと、独占云々は置いといて。いやそもそも四人いる時点で独占不可ですが。

 じゃあやめようよ。何とかこの五人で平和に暮らす方法を考えようよ。


「ま、それはさておき。まずは新居への引越しだな」

「え、本当に引っ越すんですか?」

「神殿長も仰っていたでしょう。騎士団の寮はあなたの安全を守るには人が多すぎるんです」

「団員にこれ以上ハルを見せるのも業腹だしな」

「あわよくばと狙っている団員が腐るほどいますしね」

「いくら夫の数を増やさなきゃっていってもあいつらはなしだね」

「おこがましい」


 え、シドさんが一番辛辣じゃない?


「それにさ、ハルのあんな顔、他のやつらに見せたくないもんね」

「え?」


 あんな顔?


「嬉しくなったってやつ。顔真っ赤にして言ってて、もう堪らなかったなぁ」

「うなじまで真っ赤で、可愛らしかったですね」

「目の前で見たのがあのおっさんっていうのが腹立たしいけどな」

「かわいかった」


 いやちょっと待て!


「何で?クラウドさんならまだしもリアドさんたちは見えなかったでしょ!?」

「見えたよ。のぞきこんだもん」

「どんどん首筋が赤くなっていくので、どんな表情をしているのかと」

「かわいかった」

「~~~~っ!!!」


 恥ずか死ぬ!

 自分でどんな顔してたかもわからないから余計に恥ずかしい!!

 シドさんはかわいかったの連呼だし!

 男の人にそんなこと言われたことないよ!免疫ないんだからやめて!


「忘れてください!」

「「「「むり」」」」


 仲いいな!!!





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