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1 筋骨隆々な男たちの中心にいた

 川に落ちた。

 そう気付いたときにはすでにその身は深く冷たい闇の中にあって、咄嗟に息を止めて必死にもがいても一向に身体が浮上することはない。

 ああ死ぬんだな、と何故か達観した気持ちになった。

 不思議と苦しくはない。

 苦しくないから辛くもない。

 こんな死に方なら悪くはないかなと考えて、でもそういえば川に落ちるに至った経緯って…と思い返して苦い気持ちになる。


 高梨春。十八歳。

 幸せな人生だったかと聞かれたら素直には頷けない。そんな人生でした。

 願わくば来世は、小さな幸せを感じつつ寿命を全うしたい。


 諦観の境地であの世への思いを馳せつつ、瞼が落ちた。











 カキンッ!

 金属同士がぶつかる音に意識が浮上する。

 あの世でも意識という概念はあるものなのかと不思議に感じた。

 ぴくりと指を動かしてみる。

 身体も動くみたいだ。

 どうやらうつ伏せに寝転がってるらしい。

 土のような感触が頬に冷気を伝えてくる。

 川の水の方がよっぽど冷たかったはずなのに、これっぽちを冷たいと思うなんておかしなことだ。

 そう思いながら目を開いた。

 うん、やっぱり土で間違いない。感触も土。

 あの世にも土ってあるんだ。

 三途の川には土じゃなくて小石じゃない?

 そう思いながら上体を起こしーーー絶句した。

開いた目を一度つぶって手の甲でこすり、また開く。

 何度見ても変わらなかった。

 どっと冷や汗が噴き出、起こした身体をなるべく小さく縮こませる。

 天国か地獄か問われれば、地獄と言わざるを得ない。


 川にダイブしてお陀仏になったわたしは、掛け声とともに剣を擦り合わせる、筋骨隆々な男たちの中心にいたのである。



初投稿です。

温かいお心で読んでいただけると幸いです。

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